リーダーと呼ぶに相応しい表情を太一と呼ばれた少年が、見せた瞬間、ライオンのような鬣を持ったデジモンが、頷く。

「デジヴァイスは、サーバ大陸の、―――――城後で見つかった」

 太一と呼ばれた少年に促されて、そのデジモンが言った言葉に、思わず首を傾げてしまう。
 ああ、そう言えば、僕達には、彼等の名前は聞こえないんだったね……。

「―――――の城?そんな所にあるのか?」

 その事が少しだけ寂しくって、思わず腕に抱いていた自分のパートナーを、ぎゅっと抱き締めてしまう。
 それに、ボクのパートナーが、少し驚いてボクを見上げてくるのに、ただ困ったように笑みを返した。

「なんだ、何の城なんだ?」

 ボクと同じように聞こえなかったのだろう、金色の髪をした中学校の制服を着た彼が不思議そうに聞き返す。

「……そっか、そんな所に……」

 だけど、その疑問を聞きながらも、彼は返事を返さずに、ただ考えるように腕を組んだ。

「本当は、私が持ってこちらに来るのが良かったのだが、まるで何かを守るような守護の力が働き、触れる事も出来なかったのだ。役に立たず、すまない」

 考え込む彼に、ライオンのようなデジモンが申し訳なさそうに謝罪する。

「いや、その情報だけでも助かった。これからの、行動が決まったんだからな」
「一体、どう言う事なのですか?」

 ボク達の存在なんて、完全に無視した状態で、話しが進められる中、泉くんがその中に割り込むように質問を投げ掛けた。
 みんなも、同じように気になっていたんだろう、その視線が、彼へと向けられる。

「俺は、一度デジタルワールドに戻る」
「お、お兄ちゃん!!」

 皆の視線を一身に受けて、彼がハッキリとした口調で言葉を述べた。
 突然言われたその言葉に、彼の妹だと言うヒカリちゃんが、驚きの声を上げる。

「どうしてもお前達に返さなきゃいけないモノが、デジタルワールドにあるって分かったから、取りに行ってくる」
「それは、デジヴァイスと言うモノですか?」

 非難するような彼女の視線を受け止めながら、それでも全く揺るぐ事のない強い瞳が、ボク達に説明するように、告げたそれに、泉くんが、直ぐに質問した。
 今までの会話を考えれば、『デジヴァイス』と言うものが、自分達のモノだと言う事は分るのだけれど、その名前を聞いても、ボクには、それがどんなモノなのか、思い出す事が出来ない。

「ああ、それは、お前等が持っていなきゃいけないものだからな。だから、取りに行ってくる」

 ニッコリと、サラリといわれた言葉に、何も言い返す言葉が思い付かない。 
 泉くんも、困ったような表情を浮かべた。

「それって、危険なんじゃないの?」

 そんな泉くんに気が付いて、中学校の制服を着た女の子が、心配そうに問い掛ける。

「大丈夫だって、お前達にはパートナーが居るんだぜ、何の心配もしてねぇよ」

 心配そうに問い掛けられたその質問に、彼はニッコリと笑顔を見せて、キッパリト言葉を返した。
 でもそれは、彼女の質問に答えていない。

 だて、彼女が心配しているのは……。

「そんな事を言ってるんじゃないだろう!お前が、危ないんじゃないのか?」

 彼が、間違っていると言う事を口に出そうとした瞬間、金色の髪の中学生が、少しだけ怒ったように質問を投げ掛ける。
 そう、彼女が心配していたのは、デジモン世界へ戻ると言う彼自身の事。

「俺には、――――が居る。だから、大丈夫だ」
「うん、ボクが、タイチを守るよ」

 だが、その質問に、彼は自分のパートナーを指して、返事を返した。
 彼のパートナーも胸を張って、力強く頷く。
 そんな彼を前に、ボクは、ある事を考えた。
 彼が、取りに行くと言うモノは、ボク達のモノ。

「……ボクからも、質問してもいいかな?」

 だったら、ボク達は、彼と一緒に行っても良いんじゃないのかな?
 自分の考えた事を伝える為に、思わず小さく手を上げて、問い掛ける。

「俺に、答えられる事なら、何でも良いぜ」

 突然質問を投げ掛けたボクに、少しだけ驚いたような表情を見せたけど、その瞳が少しだけ笑みを創って、それから返事が返された。
 否定されなかった事に、ホッとしながら、安心して口を開く。

「えっと、そのデジタルワールドって言うのは、僕達が3年前に旅をした場所なんだよね?」

 確認するように伝えた言葉は、ヒカリちゃんが説明していた事。

「ああ、ヒカリが言っていたように、俺達8人は、デジタルワールドを旅していた。その世界を救う為にな」

 ボクの確認に、彼が頷いて、簡単に説明してくれる。
 それに、小さく頷いて、ボクは再度口を開いた。

「なら、僕達も、その世界に行くって言うのは、どうだろう」

 一度、行った事のある場所。
 そして、その世界を自分達が救ったと言うのなら、ボクは、その場所に行ってみたいと思った。
 忘れてしまっている、出来事。
 それを思い出すためにも、その場所に行って確かめたいと思ったのだ。

「私も、それに賛成!」

 ボクの言葉に、直ぐ傍に居た少女が、大きく手を上げて同意の言葉を返してくれる。

「それは、駄目だ!」

 だが、そんなボク達の言葉を、太一くんが少し声を荒げて否定した。
 否定されるとは思っていなかっただけに、その声に思わず驚いてしまう。

「どうしてですか、理由を教えて下さい」

 多分、泉くんもボクの意見に賛成だったのだろう、否定された事に、その理由を尋ねる。

「デジヴァイスを持たないお前達を連れて行く事は出来ない」

 それに、太一くんが、あっさりと返事を返す。

「そのデジヴァイスを取りに行くんだろう?それは、俺達のじゃないのか?」

 金髪の髪の少年が、少し怒ったような口調で、問い掛けた言葉に、ボクも思わず頷いてしまった。
 確かに、ボク達のモノだと言うのなら、その当事者であるボク達が取りに行くのが、正当だと思う。
 だけど、その言葉に、太一くんが頭を振った。

「……俺の我侭だと思ってくれていい……でも、お前達を連れて行く事は出来ないんだ……」

 頑なにボク達がその世界に行く事を拒むその姿に、何も言う事が出来ない。
 なぜ、彼がここまで拒むのか、その訳は、後から知る事となるのだった。



                                             



   はい、『裏・GATE』です。
   丈先輩視点で頑張ってみましたが、いかがでしょうか?
   って、聞いてどうする!
   スランプ後なので、書いてて違和感がありますけど、何とか書き上げられました。
   多分、スランプ脱出出来たと思います。
   クリスマス前に直って良かったvv