願っていたのは、一つだけ。
   仲間の処に、戻りたい。そして、誰よりも、一番に、の傍に……。

   自分が願って、この場所に来た。
   だけど、何かが、引っ掛かっているのだ。
   そう、まるで、操られているかのように………。


 
                                         GATE 23


 呼び止められて、振り返る。
 まさか、自分の事を引き止めるとは思っていなかったので、太一は瞳を見開いて相手を見た。

 そして、振り返った先には、混乱していると分かる相手の表情。

「……本当に、分かり易いよなぁ……」

 そんな表情を見せている相手に、太一は苦笑を零して、小さく呟く。

「俺に、何が聞きたいんだ?」

 そして、はっきりとした口調で、相手に問い掛ける。
 きっと、本人にも分かっていないだろう。

 どうして自分を呼び止めたのか……。

「………お前は、勝手な奴だ……」
「…そうだな……俺は、勝手だよ……俺は、お前達に災いしか運んで来れないのに……それでも、会いたかったんだ」

 自分の質問に、表情を険しいものに変えて、睨んでくるその瞳を受けながら、太一は小さく笑みを浮かべた。
 それは、何かを諦めているような、そんな笑み。

「『お前達』?どう言う意味だ?!」
「……丈や光子郎、ミミちゃんにタケル。空や、お前……そして、自分の妹までをも、危険な目に合わせる事になる……俺が望んでいる事じゃなくたって、運命は、見逃しちゃくれない」

 寂しそうな笑顔を浮かべた瞬間、授業の終了を告げるチャイムの音が鳴り響く。

「……授業、終ったな。……ヤマトが、その運命に流されたいなら、俺に付いて来てくれないか?」

 一瞬校舎を見詰めてから、少しだけ考えるような素振りを見せる。
 そして、その視線を相手に戻し、紡がれたその言葉に、ヤマトは、ただ太一を見詰めた。
 突然の質問。まるで、自分の心をすべて見透かしているかのような……。

「ヤマトに、どうしても会わせたい奴がいるんだ」

 そっと微笑むその笑みは、先ほどの諦めたような笑みとは違い、人の心を安心させる何かを感じる。

「どうして、あなたが、此処にいらっしゃるんですか?!」

 しかし、その言葉に、返事を返す前に、全く別の人物の声によって、遮られてしまった。

「光子郎……」

 驚いたように聞えてきたその声に、この場所が、コンピュータ室の真ん前である事に気が付いて、太一は小さくため息をつく。

「それに、石田、先輩ですよね?貴方にも、彼が見えるんですか?」

 そして、校舎に背を向けるような形で座っているヤマトに、少しだけ冷たいとも取れる声が掛けられる。
 その声に、ヤマトも振り返って、相手を見た。

「……確か、泉だったな……見えるさオレンジ色の生き物も、な……お前は、こいつ等の事を、知ってるのか?」
「…知っていても、貴方に教えるつもりはありませんよ」
「………」

 無言でにらみ合いを始める目の前の二人に、太一は意味が分からずに、思わず首を傾げてしまう。

「ねぇ、タイチ、何で、コウシロウとヤマトは、睨み合ってるの?」
「さぁ、俺にも分かんねぇ……まぁ、でも都合よく、光子郎が来てくれてよかったよな!やっぱり、家主の許可は必要だしvv」

 嬉々として言われた言葉に、アグモンは、複雑な表情を見せた。

「……本当に、良かったのかなぁ……」

 ポツリと呟かれたその言葉は、誰の耳にも聞える事が無かったのは、救いだったのかもしれない。

「光子郎!」
「……なんですか?」

 睨み合いをしている、二人のウチ、片方の名前を呼べば、不機嫌そうな表情でも返事が返される。

「お前の家に、空が行ってるんだ。これからヤマト連れてって、こいつのパートナーを渡してやりたい」
「……では、彼も、デジモンのパートナーが……」

 複雑な表情を見せる光子郎に、太一は、頷いて返す。
 しかし、目の前で訳の分からない会話をされて、ヤマトは不機嫌そうな表情を見せた。

「分かりました。では、僕も一緒に行きます。宜しいですか?」
「えっ?でも、光子郎は、授業が……」
「僕にとっては下らない講師の言葉よりも、今は目の前で起こっている事の方が重大な事ですから……」

 心配する太一の言葉を、ニッコリと優しい笑みで遮ってから、光子郎は、そのまま窓を飛び越える。

「では、行きましょうか」

 そして、再度ニッコリと笑顔で言われた言葉に、太一は複雑な表情を見せた。
 校舎から出てきた彼は、勿論上履きで、靴にさえ履き替えていない状態なのだ。
 しかし、相手はそんな事を気にする様子も見せない。

「石田先輩は、どうするんですか?このままここに……」

 そして、今だに座り込んでいるヤマトに視線を向けて、問い掛けた。
 だが、その言葉は、最後まで続かずに、ヤマトの返事によって遮られてしまう。

「行くさ!!」

 はっきりと言われたその言葉に、太一は嬉しそうに微笑んだ。


                                                 



   み、短いです。
   でも、書き上げた時間は、かなり掛かってます。(駄目過ぎ)
   そして、この話し、シリアスなはずなのに、一部ギャグ??
   しかも、光子郎vsヤマト→太一になってますし。いや、書いてて、この辺は楽しかったんですけどね。
   
   なので、この話しには、2つの『裏・GATE』UP予定であります。
   まだ、無いですよ。
   UPは、TOPの更新情報で、お知らせいたします。
   ただ、かなり時間かかると思いますけど……。