もしも、自分の存在を否定されたら、どうなるのだろう。
自分と言う存在は、この世に必要とされなくなった、データ?
だったら、自分の存在は、やはり、ただのデータの残骸となるのだろうか?
GATE 13
子供達の騒ぐ声に、意識が浮上する。
どうやら自分が眠っていたのだと気が付いて、太一は小さく息を吐き出した。
「…夕方?」
部屋の中は、すでに薄暗くなっていて、窓の外から、入り込んで来るその光は、何処か寂しい色を宿している。
何時、自分が寝てしまったのか、記憶にない。
それほど、疲れていたのかと考えて、苦笑を零す。
ずっと、気を張っていたのは、自分でも分かっていた。
だからこそ、こんなにゆっくりと眠ったのは、本当に久し振りなのである。
「……こんな、時なのに、な……」
皆、自分以上に疲れていることを知っているからこそ、自分一人がこんなにゆっくりとして、申し訳なく思ってしまう。
ゆっくりと体を起こして、再度ため息をつく。
「……皆は、どうしてるんだ?」
直ぐ近くに人の気配を感じない為、思わず疑問に思う。
「確か、タケルが来るって……」
そして、思い出した事に、太一はそのままベッドを降りると、部屋を出る為に扉に近付く。
ドアを開こうと伸ばした手に、唯一透けないそれが目に入って、太一は苦笑を零した。
「……服も、ベッドも借りちまって、光子郎には、迷惑掛けちまったよなぁ……」
相手にとって自分は、初めて会ったと言っても過言ではない人物なのだ。
なのに、自分の面倒を見てくれた光子郎に、心から感謝している。
「よし!今日も、頑張って、飯作ってやるか!!」
自分の出来る事で、少しでも恩返しがしたい。
そう思うから、太一は部屋を出るとリビングへと足を向けた。
「やっぱり、嫌だよ!」
リビングのドアを開こうとドアノブに手を伸ばした瞬間、中から聞こえて来たアグモンの声に、その手が止まる。
「隠し事をするよりも、本当の事を言う方が、彼にはいいんです」
『本当の事?』
慰めるような口調の光子郎の言葉に、疑問を感じて、太一は悪いと思いながらも気配を殺してその話に耳を傾けた。
「僕も、そう思うよ……後から知った方が、余計に傷つける事もあるからね」
「だけど……」
「アグモン、コウシロウやタケルの意見も間違いじゃない。タイチは、きっと自然とオレ達が隠し事してる事に気付くと思うよ」
何かを言おうとしたアグモンの言葉をガブモンが慰める。
自分の事で、彼等が何かを話していると言うのは分かるのだが、その内容が分からない。
「だが、タイチにどうやって説明するんだ?」
「それは……本当の事を言うしかありまへん……わてらの名前が、光子郎はん達には、聞こえないんやって事を……」
『光子郎達に、俺達の名前が聞こえない?』
テイルモンの言葉に続いてテントモンが口にしたその内容に、太一は驚いて瞳を見開いた。
信じられないその言葉に、その場から後退りする。
考えなかった、訳ではない。
いや、実際には、考えるのを拒否していたと言っても過言ではないだろう。
自分達の姿が、選ばれし子供達に見えると分かって、安心していたのだ。
だから、それ以上の事を考えないように、していたのである。
「………そうか…………やっぱり、俺達は、この世界では、存在しちゃいけないだな………」
ポツリと呟いたその言葉は、苦笑交じりに呟かれた。
そう、諦めの気持ちと一緒に……。
そのままリビングには入れずに、太一はまた光子郎の部屋へと静かに戻った。
自分の為に、皆が話をしてくれていると言う嬉しさと、そして、その内容があまりにも、自分自身に衝撃を与えている事に何も考えられなくなる。
「……やっぱり、迷惑しか、掛けられねぇか……」
自分が居る事で、今回の問題が起こったと言ってもいい。
もしも、自分と言う存在が、初めから居なければ、こんなに皆に迷惑を掛ける事もなかっただろうか?
そして、子供達の命を危険に曝す事も……。
「……どうして、こんな事になっちまったんだろう……」
自分が、望んだ事ではない。
3年前のあの時から、何かが狂い始めている事は感じていた。
それを、今、改めて思い知らされただけ……。
「……だったら、俺は何で、存在するんだろうな……」
取り残されたあの時から、狂い始めている歯車。
不完全に回りだした時間の乱れが、今確かに存在している。
「……それでも、俺には、皆に……生きて欲しいから……」
それが、たった一つの自分の願い。
そして、ここに今存在している、理由。
「……頼むから、それまで、俺と言う存在を、消さないでくれ……」

はい、『GATE 13』になります。
またしても、短いですね。<苦笑>
その内、隠しがUPされるかもです。
今は、これでお許しください。(今のところは、予定無し…(でも、パタ視点で書きたい気が…))
いや、ただ単に、これ以上続かなかったと言うのが、全ての理由。
暗過ぎです、太一さん……。
本当は、太一さんを泣かせようと考えていたのに、泣いてくれませんでした。
けど、心は、泣いているんでしょうね……。(誰が、泣かせてるんだ!)
『GATE』の太一さんは、泣かせるのが難しいです。
人一倍、弱みを見せてくれない人に出来上がっているようなので……。
ああ、この話で、太一さんを泣かすのが目標だったのに、何時になったら泣いてくれるのか……。(おいおい)
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