自分にとって、大切な人達。
出来れば、誰も傷付いてなんて欲しくはない。
その為なら、例え、自分が傷付く事になってもいいから……。
だから、誰も、傷付かないで……。
GATE 12
「漸く、熱も下がったようですね」
少しだけほっとしたように言われた言葉に、太一は小さく息を吐き出した。
「薬が体質に合っていたようで、良かったです」
にっこりと笑顔を向けられて、思わず笑顔を返す。
「ですが、今日と明日は、大人しくしていてもらいますよ。また熱を出したくはないでしょう?」
だが、次の瞬間、笑顔のままで言われた言葉に、ただ大きく頷いて返してしまうのは、逆らえない何かを感じるから……。
「では、そのままそこで大人しくしていて下さい。食事をして、もう少し薬を飲んだ方がいいですしね」
体温計を片付けながら、光子郎が部屋を出て行こうと振り返す。
「あっ!光子郎!!」
自分から離れていこうとする相手を、太一は慌ててその服を掴んで引き止める。
「何か?」
突然の行動に、光子郎は振り返って太一を見た。
「……心配掛けちまってごめん……それから、サンキュー」
少しだけはにかんだような笑みと共に、謝罪の言葉とお礼の言葉を乗せて、言われた事に、光子郎は驚いて、瞳を見開くとただ相手を凝視する。
「……ちゃんと言ってなかったよな?だから、サンキュー…その俺の事、信じてくれて……」
必死で伝えられる言葉は、とっても簡単なものなのに、どうしてこんなに心に残るのだろうか?
そして、その笑顔が、心を温かくしてくれる。
「……お礼を言うのは、僕の方ですよ……」
「えっ?」
ボソッと言われたその言葉が聞こえなくって、聞き返すように太一が光子郎を見つめるが、その相手は、そのまま何も言わずに部屋を出て行ってしまった。
残された太一は、訳が分からずに首を傾げる。
「……何、言ったんだろう??」
意味が分からないそれに、もう一度首を傾げて、体を横にした瞬間、光子郎と入れ替わるように自分のパートナーが、部屋に入ってきた。
「ねぇ、タイチ」
「どうしたんだ、アグモン?」
ニコニコと嬉しそうな笑顔を見せているアグモンを前に、太一は訳が分からないと言うように問い掛ける。
「ボクね、気が付いたんだ」
「何を?」
「皆、覚えてないのに、誰もボク達を否定しないって事に!」
「……アグモン…」
「だって、ジョウもコウシロウも、タケルだって、ボク達の姿を見ても、否定しないんだよ!それって、凄い事だと思わない?」
楽しそうに言われた事に、太一は一瞬言葉を失う。確かに、言われてみれば、誰も自分達を否定しなかった。
それは、何処かで、自分達を認めてくれているという事なのだろうか?
「……そうだな、アグモン……確かに、すごい事なんだよな……」
丈は、何も聞かずにゴマモンを引き取ってくれた。
そして、光子郎も同じようにテントモンを認めてくれたし、何よりも、自分達をこうして受け入れてくれている。
そして、タケルも同じように、自分の事を心配して、また様子を見に来てくれると言っていた。
それは、自分と言う存在を、認めてくれている証拠。
ただ、自分達と言う存在の記憶がないだけで、彼等は、何かを確かに感じ取っているのだ。
それは、やはり自分と言う存在を思い出しかけていると言っていた、ゲンナイの言葉は、正しいのかもしれない。
「うんvvだから、ヒカリやヤマトやソラだって、きっと、ボク達の事、分かってくれると思うんだ」
自分を励ましてくれるその言葉に、太一はただ笑顔を返す。
「……そうだな……」
多分、自分は、この3人に会う事を恐れている。
それは、彼等が、自分に一番近い所に居たから……。
幼馴染である、空。
そして、自分と喧嘩ばかりしていたのに、何時の間にか一番大切な親友と言う存在になっていた、ヤマト。
ヒカリは、実の妹と言う相手。
だからこそ、会うのが、怖い。
肉親に、自分と言う存在を忘れられてしまうのは、きっと一番辛い事だから……。
「そうだと、いいな……」
「タイチ……」
ぐっと、手に力が入る。
もしも、本当に自分の存在を拒否されたとしたら、自分はどうなるのだろうか?
今でさえ、中途半端な状態なのに、もしも否定されてしまったら、自分と言う存在は、この世界から消える……。
。

きゃ〜っ、またしても短いですねぇ。<苦笑>
はい、そんな訳で、またしても『裏・GATE』ございます!
今度は、アグモン視点になっておりますので、興味のある方は、探してみてくださいねvv
そして、何気にタケルくん復活すると書いていたにも関わらず、出てきませんでした。<苦笑>
しかし、『裏・GATE』には、出てきております。(多分……xx)
さぁ、5人目の選ばれし子供は、何時出てくるのでしょうか??
次の出番を待ってるのは、一体誰か?!
|