2 夜には飲食店が賑わうS駅西口前の繁華街も、早朝は妙に寂しい。駅に向かうサラリーマンが時折通るだけだ。裏路に入ると生ゴミの匂いがする。男は早足でどんどんと進んでいく。ビルの間に小さな駐車場がある。この辺りには、一時の地上げで、虫食いのように空き地ができた。今では駐車場としてしか使いようもない。 和恵はその駐車場に停めてある一台のバンに押し込まれた。不思議なことに恐怖心はなかった。見知らぬ男は、扉を閉めると和恵を膝に乗せスカートを捲り上げた。 「こんな格好をして電車に乗るなんて、触ってくれって言ってるようなもんだよな」 そう言いながら、指を股布の辺りに滑り込ませる。歩いてくる間も和恵の性感は強まるばかりで、下着は秘孔から溢れた粘液でぬるぬるになっている。 「ほらほら、こんなに欲しがってるぜ」 悔しさに和恵は唇を噛んだ。縛られたり脅されたりしているわけでもないのに、逃げることができない。くちゅくちゅ、と音を立てながら指で愛撫されると焦れたように尻を突き出してしまう。乱暴な言葉とは裏腹な繊細な指の動きに、自分の指でこね回したい衝動に突き動かされる。気の遠くなるほど焦らしてから、男はパンティを抜き取った。 男は自分も下半身裸になると、ゆっくりと剛直を挿しいれてくる。経験の少ない和恵にはよく分からないのだが、さほど大きいものではない。武史のものよりずっと細いように思われる。それなのに、ぬるりと入り込んできた途端に、目眩がするほどの快感が襲ってくる。 「あわ、わああ」 「いいのか」 和恵は無言で激しく肯いていた。それを合図に今度は激しい抜き挿しが始まる。和恵の頭ががくがくと揺すぶられ髪が踊った。ひっきりなしに鳴咽が溢れ汗が吹き出す。ぐんとひときわ深く衝かれると、背筋を恐ろしい速さで快感が駆け上がった。 「ああ、すごい、来るぅ、来ちゃうぅ」 和恵は叫ぶと、自ら激しく腰をしゃくりながら何度も痙攣した。膣肉が間歇的に収縮して絶頂を訴える。背が弓なりにしなると、がっくりと安手のビニールシートに突っ伏した。私、どうしちゃったの。こんなに凄いなんて。気持ちの良い疲労感に包まれながら和恵は自問した。 「まだだ」 男はまだ終っていない。和恵の腰を引き上げると、さらにストロークを始める。再び、官能の火が燻りはじめる。そしてみるみるうちに激しく体を熱くする。一度絶頂を見せてしまったことで、和恵は貪欲に快感を貪りはじめていた。どうにも止まらなくなってしまう。互いに腰を叩き付ける。男のものがひときわ膨らむ。射精が近い。和恵はそれを止めるように締め上げたが、それが発射の引き金になった。 「くそっ、くそっ、おおぅ」 かくんと腰を震わすと、男は和恵の背中にのしかかるようにして抱き着いた。激しい奔流が膣奥に叩き付けられる。ぱちぱちと快感の粒が脳の中で弾ける。どろりとした精液が隙間から溢れた。奥底で新たな性感が目覚める。 「あんた、凄いな。よかったぜ」 「まだよ。もっとよ」 萎えた男の物を喰い締めたままで、和恵は身体をくるりと回して上になった。後ろ手に身体を支えながら胸を反らして責めたてる。 「おい、まだだめだ、止めろ」 そんな声を聞き流して、和恵は自分の快感の壷を突いた。男のものも徐々に硬くなってくる。短いのか子宮口までは届かない。じれったさに、さらに激しく身体を揺する。いくら快楽を貪っても止まらない。バンがぎしぎしと振動している。この姿勢だと、外の様子が見える。もちろん外からも見える筈だ。スーツは着たままだが、誰が見ても何をしているのか分かるだろう。誰かが通らないかしら。こっちを見て。そうそっと呟くと、自ら胸を揉み上げる。乳首の先から起こる微かな電流が、全身を這い回る。 「おおぅ」 男が叫ぶと、激しく突き上げてきた。一瞬奥まで届く。 「わたし、また来るぅぅ」 二人は、互いに身体を反らし自らの絶頂を迎えた。 |