2000年11月2日
世界選手権第16戦 オーストラリア・フィリップアイランドGP
決勝結果 2000年10月29日

●125ccクラスは「日本人が表彰台」を独占。
  
東選手が今季初優勝を果たした。
●250ccクラスは「オリビエ・ジャック」が初のチャンピオン獲得。
  
ゴールラインのおよそ数メートル手前での逆転優勝でチャンピオン争いに終止符。
●500ccクラスは「イタリア人が表彰台」を独占。
  
混戦を制したのはビアッジ。混戦で勝つビアッジを見たのはめずらしい。

●125クラス決勝結果
優勝 東 雅雄
2位 宇井 陽一
3位 上田 昇

スタートでポールポジションから飛びだしたロカテッリ・宇井・チェッキネッロ・東・サンナ・バンサンと続く。上田はスタートに失敗。
レース序盤に最終コーナーで、前回の茂木GPで初のチャンピオンを獲得したロカテッリが転倒。
これにより9周目のトップグループのオーダーは、サンナ・宇井・チェッキネッロ・東、その後方にはバンサンと続く。10周目、第1コーナーの進入で宇井がサンナを抜いてトップへ出るが、続く第2コーナーでは、サンナとチェッキネッロが宇井を抜いて順位を入れ変え、第4コーナーとなるヘアピンのブレーキングで東が宇井をパス。この頃にはバンサンもトップグループに追いつき、サンナ・チェッキネッロ・東・宇井・バンサンの5台となる。
レース中盤の12周目、メインストレートでチェッキネッロがサンナを交わしてトップへ浮上。ヘアピンではバンサンが宇井を抜いて4番手。続く13周目のメインストレートでは、バンサンが前を行く3台を一気に交わしてトップへ浮上する。そして第4コーナーのヘアピンでは、サンナがバンサンを交わしてトップを奪い返す。14周目の第1コーナーの進入ではバンサンがサンナを交わしてトップへ、宇井は東を交わして4番手へ。15周目、第1コーナーで東が宇井を交わして4番手、第2コーナーではサンナがバンサンを交わしてトップへ、高速の第3コーナーでバンサンがサンナのイン側に入りトップへ返り咲き、第4コーナーのヘアピンでは東がチェッキネッロを交わして3番手となりトップグループは、バンサン・サンナ・東・チェッキネッロ・宇井。各コーナーで目まぐるしく順位を激しく入れ変えてくトップグループ。
大きく流れが変ったのは16周目だった。4番手を走っていたチェッキネッロが、第1コーナーの進入で東とサンナを一気にパス。しかしこのコーナーのクリッピングで大きくリアを滑らせて転倒。それに巻き込まれる形でサンナがコースアウトして順位を下げる。これでトップグループは、バンサン・宇井・東となる。
レースも終盤にさしかかった18周目、第8コーナーで宇井・東がバンサンを交わす。バンサンはマシントラブルのためこのままピットに戻る。これで優勝争いは宇井・東に絞られた。ラスト2周となる22周目、第1コーナー進入で東が宇井を抜き、このレースではじめてのトップとなる。
迎えたラストラップ、第4コーナー・ヘアピンのブレーキングで宇井が東をパスするが、惜しくもオーバーランして再び東がトップになり宇井の追撃を振り切り、このまま東が今シーズンの初勝利を手にする。宇井は惜しくも2位となった。3位にはアルサモラ・ポッジャーリとの競り合いに勝った上田が入り、久しぶりで日本人の表彰台独占となった。

●250クラス 決勝結果
優勝 オリビエ・ジャック
2位 中野 真矢
3位 加藤 大治郎

唯一、タイトルの決まっていないこの250クラス。ジャックと中野のポイント差は2ポイント。どちらかが前でチェッカーを受けたものがチャンピオンに決定する。僅かな可能性を残している加藤だが、優勝しても中野かジャックが3位でゴールしてしまうとチャンピオンにはなれない状況。
決勝レースがスタート、ポールポジションからスタートの中野・加藤・ジャックが好スタートを決め、メランドリー・宇川・ワールドマンと続く。第9コーナーではジャックが加藤を抜いて2番手に浮上、中野の追撃態勢に入る。1周目のオープニングラップは中野が制した。ジャックはピタリと中野の背後につけチャンスを伺う。
レース序盤の5周目、トップグループは中野・ジャック・加藤・メランドリーとなり、その後方でワールドマン・宇川のオーダー。
8周目頃になると中野とジャックが、ハイペースで後続を引き離してトップグループを形成。早くも一騎打ちとなり、淡々と周回を重ねる。しかしそれは、一瞬たりとも気を緩めることの出来ない息詰まる攻防戦となる。ラップタイムの上がらない加藤は後退して単独の3番手走行、メランドリーはタイムを下げてワールドマンにも抜かれてしまう。
メインストレートから第1コーナーの進入手前のストレートエンドでは、中野のマシンがスルスルと加速する感じでジャックを引き離す。対してジャックは、6周目と10周目の最終コーナーからゴールラインまでの距離を計りながら、中野のスリップから出てスーッと加速して中野のマシン半分ほどに並ぶと後方に下がるといった行動を数回みせる。しかし、その時点では、ジャックは中野を抜くには至らなかった。
レース終盤になってもジャックは中野を1度も抜かないまま周回を重ねる。しかし、相変わらずジャックは、中野の背後にピタリとつけプレッシャーを与えながら機を伺う。果たして、いつ抜きにかかるのか…。
ジャックの勝負所は第4コーナー・1つ目のヘアピンコーナー進入のブレーキングに的は絞られていたかのように見えた。もしくは、高速の第9コーナー進入か第10コーナーのブレーキングだが、かなり転倒のリスクがある。
迎えた最終ラップ、中野は第1コーナー・第2コーナーと完璧な走りでクリアー。1つ目のヘアピンでも完璧なブロックラインでジャックの進入を押さえる。この時、ジャックはラインをアウトに振ったが、ややオーバーペースでヘアピンに進入し、やや膨らむようなラインとなった。しかしジャックはこれをうまくリカバリーして、立ち上がりでは再び中野の背後にピタリとつける。問題の第9・10コーナーを中野はピタリと押さえた。
残されたコーナーは最終コーナーとなる。進入ラインを少しイン側にとった中野、対して立ち上がり重視でコーナーに進入するジャック。最終コーナーを立ち上がった瞬間に、誰もが中野のチャンピオン決定を確信したに違いないだろう。しかし、運命のいたずらか、女神はジャックに微笑んだのだった。ゴールラインのおよそ数メートル手前で、中野のスリップからうまく抜け出したジャックは、そのままの勢いで中野のマシンに並びかけた。ゴールラインのおよそ数メートル手前では、ジャックが完璧に中野の前に出る事に成功し、マシン半分差でチェッカーとなった。1位はジャック、2位は中野、トップから15秒ほど後の3位には加藤が入った。
最終コーナーで、ブロックラインを通り過ぎたため中野のマシンの加速が鈍った。そこでジャックはアウトラインからコーナーに進入し立ち上がり重視のラインを取った。ジャックは、アクセル開度を調整しながら、スリップストリームをうまく使って前に出たのはまさに絶妙だった。中野にとって残念な結果だったが、来期の500クラスでの期待は大きい。

●500クラス 決勝結果
優勝 マックス・ビアッジ
2位  ロリス・カピロッシ
3位  バレンティーノ・ロッシ

ポールポジションを獲得したのは、2気筒マシンに乗るアプリリアのマックウイリアムス。レースは500ccとは思えない大混戦の最終戦となった。
好スタートを切って第1コーナーに飛び込んだのは、3番手からスタートのラコーにだった。以下、チェカ・カピロッシ・阿部・ロバーツ・バロス・マッコイ・ビアッジ・ロッシ・岡田となった。
第4コーナーのヘアピンでチェカがトップに浮上。しかし、第10コーナーのブレーキングで転倒してしまう。2周目にはカピロッシがトップに浮上。しかし、第4コーナーのヘアピンでラコーニがトップに浮上。4周目のオーダーは、ラコーニ・カピロッシ・バロス、そしてロッシは確実に順位を上げて4番手につける。以下、阿部・ロバーツ・ビアッジ・マッコイ・青木・岡田となる。
レース序盤は、ラコーニ・カピロッシ・バロスが激しく順位を入れ変え、トップグループは12台程にも及んだ。8周目にはロッシが3番手に上がったが、9周目にはラコーニが抜き返す。
レース中盤にさしかかるとマッコイもこの争いに加わり、バロス・マッコイ・ラコーニ・カピロッシがサイドバイサイドのレース展開となる。この頃、予選12番手スタートのビアッジは、5番手程に付けていたが、16周目にはトップに躍り出てラップタイムを上げる。集団はやや縦長になったが、ビアッジ・カピロッシ・ラコーニ・マッコイ・ロッシ・阿部・マックウイリアムス・岡田・バロス・ロバーツ・青木・ジュベルナウの12台がトップグループを形成。19周目の第4コーナー・ヘアピンのブレーキングで、ラコーニがカピロッシと接触してコースアウトして順位を下げてしまった。
レース終盤の20周目以降はビアッジ・カピロッシ・ロッシの3人のイタリアンが主導権を握り、ビアッジとカピロッシは毎周にわたって順位を入れ変える激しい争い。4番手にはマックウイリアムスが上がってきた。以下、マッコイ・阿部・ロバーツ・岡田と続く。
ラスト2周目からトップに立ったビアッジが、最終ラップもトップを守りきりトップでチェッカーを受け今季2勝目となった。
終始激しいレース展開となったこのクラス、1位はビアッジ、2位はカピロッシ、3位はロッシが入り、久しぶりにイタリア人の表彰台独占となった。
気になるトップグループのそれ以外の順位は、4位バロス・5位マッコイ・6位阿部、以下、ロバーツ・マックウイリアムス・岡田となった。

●ポイントランキング
125クラス

1. ロベルト・ロカテッリ 230
2. 宇井 陽一 217
3. エミリオ・アルサモラ 203
4. 東 雅雄 174
5. 上田 昇 152
6. シモーネ・サンナ 132
7. アルノー・バンサン 131
8. ミルコ・ジャンサンティー 129

250クラス
1. オリビエ・ジャック 279
2. 中野 真矢 272
3. 加藤 大治郎 259
4. 宇川 徹 239
5. マルコ・メランドリー 159
6. アンソニー・ウエスト 146
7. ラルフ・ワルドマン 143
8. フランコ・バッタイーニ 96

500クラス
1. ケニー・ロバーツ 258
2. バレンティーノ・ロッシ 209
3. マックス・ビアッジ 170
4. アレックス・バロス 163
5. ギャリー・マッコイ 161
6. カルロス・チェカ 155
7. ロリス・カピロッシ 154
8. 阿部 典史 147