2000年11月1日
全日本選手権第10戦・TIサーキット英田
…「行ってきました」現地レポートです。
開催日 2000年10月20・21・22日

R2-1第10戦・TI大会では、2クラス同時チャンピオン決定の可能性が大きくあった。20日はあいにくの雨となり転倒者が続出。しかし、予選・決勝の21・22日は天候に恵まれた。
 125クラスは、菊池選手が今までとは違う予選時間の使い方をし、いい感じで決勝にコマを進められそうだった。ランキングトップの小山選手は、彼自身初のサーキットだが順調にタイムを詰めていった。
 250クラスは、前回の菅生で中富選手がチャンピオンに決定しているので、消化レースになってしまうのか、それとも新しい勝者が生まれるのかが気になった。
 スーパーバイククラスは、事前テスト・予選と好調だったのが、玉田・芹沢選手。芹沢選手初優勝の期待がかかる。そして、予選5番手までがコースレコードを記録し今年のスーパーバイクのレベルの高さを物語っていた。それ以外では、個人的に注目だったのは、何と言っても伊藤選手だった。ミシュランタイヤからダンロップタイヤへ変更してTI大会に望んだ。鈴鹿8時間耐久でもそうだったが、VTRとミシュランタイヤのマッチングは今一つと言った感じのようだから。岡田・エドワーズ・ロッシと言ったミシュランユーザーは全員転倒、しかもなんの前兆もなくフロントタイヤから足をすくわれたように。対して加藤・宇川のコンビはダンロップユザー、その彼らは8耐を制してしまった。などが、裏付けられる。何よりも、伊藤選手本人の不安な気持ちを取り除くだけで、それ以上の効果が期待できる。しかし、それが(それ以上の効果)長く続くかは別問題だが。

全日本選手権第10戦・TIサーキット英田
予選結果 2000年10月21日

●125クラス
1位 菊池 寛幸…事前テストから絶好調。今季初優勝を狙える位置につける。今大会では安定度1番。
2位 井手 敏男…今シーズン、決勝では目立った結果が残っていないので果たしてどうなるか。
3位 小山 知良…17歳とは思えない安定した走り。あくまでチャンピオン獲得を見据えた走り。
4位 高橋 裕紀…筑波の2位から自信がついたのか、ここのところ確実に上位に食い込んできている。

●250クラス
1位 大崎 誠之…ここのところ転倒もなくなり安定した速さがある。目指すは優勝のみ。
2位 畠山 泰昌…シーズン中盤までの安定した走りが陰を潜めている。
3位 稲垣 誠 …トップ争いはしているが、表彰台がない。やはり問題は転倒をなくす事かな。
4位 興ろぎ義則…彼もトップ争いは経験しているが、表彰台がない。

●スーパーバイククラス
1位 玉田 誠 …R3美祢以来のポールポジション獲得。事前テストから好調を維持。
2位 芹沢太麻樹…0.1秒差で3度目の2番手スタートとなった。もちろん初優勝を狙って走る。
3位 井筒 仁康…今シーズンの安定感はすばらしい。果たしてポイントを積み重ねるのか、一発勝負か?
4位 吉川和多留…予選最終ラップに転倒してしまい、マシンと人間の状態が心配。

全日本選手権第10戦
TIサーキット英田
決勝結果 2000年10月22日

●125クラス
優勝 菊池 寛幸…今季初優勝。27ポイント差ではあるが、チャンピオンの可能性は消えてない。
2位 仲城 英幸…昨年のチャンピオン、やっとランキング6位まで上がった。どうしたジョーヤン。
3位 小山 知良…このクラスで唯一の全戦ポイント獲得者。チャンピオンをしっかり捕らえている。この我慢もあと1レース、1ポイント取ればチャンピオンだ。
*決勝レース

スタートよく飛び出したのは、小山・仲城・菊池。オープニングラップを制したのは菊池。1周目のオーダーは菊池・仲城・小山・高橋・藤岡・上江洲となる。4周目に菊池がトップに立つとペースが上がり、3番手走行の小山との差が徐々に広がる。それに釣られるように小山も若干ペースが上がり、4番手以降との距離が広がる。
 レース中盤になると、優勝争いは菊池と仲城に絞られる。4〜8周目は菊池がコントロールラインをトップで通過。9〜12周目は仲城がコントロールラインをトップで通過。3番手以降は縦長になり、125のレースとしては珍しい展開。上位陣では大きな順位の変動がないまま終盤戦へ突入。
 ラスト3周となった13周目、菊池がトップを奪い返して逃げ切りを計るためラストスパート。その差は確実に開いていき、トップの菊池がゴールしてから2.7秒後に仲城が入った。1位には菊池、今季念願の初優勝で、危なげのない走りだった。ランキングトップの小山とのポイント差は27ポイントとし、チャンピオンの可能性が残った。2位は仲城でR7鈴鹿以来の今季2度目の表彰台。3位には確実に走りきった小山が入った。小山は最終戦で1ポイントを獲得すればチャンピオンとなる。

●250クラス
優勝 青山 博一…今季3勝目。中盤戦以降、彼の成長はすばらしい。何と言っても決勝レースには強い。
2位 大崎 誠 …初優勝まで後一歩だったが、マシンのトップスピードが欲しいところ。
3位 畠山 泰昌…最終ラップにトップを走っていたが青山・大崎に交わされ無念の3位。彼も2位はあるが、優勝がない一人である。

*決勝レース
絶好のスタートを決めたのは、予選7番手の酒井と3番手の稲垣と4番手の興ろぎだった。P.P.の大崎はスタートに失敗した。2周目に稲垣がトップに上がり集団を引っ張る。その後、4番手走行の大崎はベストラップを出して、6周目には2番手まで順位を挽回。トップは稲垣・大崎・酒井・青山・畠山・亀谷・嘉陽・中富のオーダー。混戦模様かに思えたが、7周目には稲垣が転倒を喫してしまう。そして大崎はトップに浮上した。トップグループは大崎・畠山・青山となり、以下酒井・興ろぎ・亀谷・中富と続く。
レース終盤、3台のトップグループは激しく順位を入れ変えながら周回を重ねる。11周目までトップを走っていた大崎だが、12周目には青山がこのレースで始めてのトップに立つ。青山は18周目までトップを守っていたが、ラスト2周となる19周目には、畠山が青山を抜いてトップへ。後方では亀谷・中富・嘉陽の3台で4位争いが繰り広げられていた。そしてトップグループは畠山・青山・大崎のオーダーで最終ラップに突入した。バックストレートエンドのヘアピンコーナーの進入で畠山がイン側をしっかりブロック、青山はラインを変えてアウトから畠山を抜きにかかった。この時、畠山のフロントタイヤに青山が接触し、加速の鈍った畠山を抜き青山はトップに出た。加速の鈍った畠山は、直後を走っていた大崎にも抜かれて3番手に後退。結局、残り半周は青山がトップを守ってチェッカー。1位は青山、2位は大崎、3位は畠山となる。中富を抜いた嘉陽が4位に入り、5位に中富、6位に亀谷となった。

●スーパーバイククラス
優勝 伊藤 真一…今期初の勝利を手にする事となった。なんと1999年のR5茂木以来の勝利。
2位 芹沢太麻樹…またもや悔しい2位となった。今季3度目の表彰台獲得。
3位 玉田 誠 …R3筑波以来の表彰台。その顔は、かなり悔しい表情を浮かべていた。

*決勝レース
決勝レース、シグナルがグリーン。井筒はフロントタイヤを大きく浮かしてしまいスタートに失敗。伊藤・吉川も集団に埋もれる。対して好スタートを切ったのは、芹沢・梁・加賀山だった。オープニングラップは、芹沢・梁・加賀山・玉田・辻村・井筒・吉川といったオーダー。1周目から混戦模様。2周目のバックストレートエンドのヘアピン進入で玉田が加賀山を交わして3番手。4周目には井筒が加賀山を交わして4番手に浮上。5周目のバックストレートエンドのヘアピン進入で梁が芹沢を交わしてトップへ。5周目の時点で、トップグループは梁・芹沢・玉田・井筒・加賀山・辻村の6台。7周目には玉田が2台を交わしてトップへ浮上して、玉田・梁・芹沢・井筒・加賀山・辻村となる。序盤から激しい順位の入れ変え。この頃、トップ集団から遅れた吉川の背後に伊藤が猛然と迫る。9周目には井筒が芹沢と梁の2台を交わして2番手へ。激しいトップ争いも10周目になる頃には玉田・梁・井筒の3台に絞られる。トップ集団の後方ではあるが、伊藤はこの周に吉川の背後にピタリとつけると10周目には吉川をパスして8番手へとトップへ追いつく勢い。迎えた12周目、7周目でトップに立ちタイムを上げ11周目までトップ集団を引っ張っていた玉田を交わして井筒がついにトップへ躍り出た。この頃から玉田はフロントタイヤの消耗によりコーナー進入でマシンを止める事が出来なくなってきていた。12周目から19周目とトップを守っていた井筒だったが、20周目の第1コーナーで玉田が最後の力を振り絞って井筒を抜きトップへ浮上。翌21周目には梁がトップへ、しかし井筒も23周目には再度トップへ、激しいトップ争いもいよいよ終盤のクライマックスへ突入。しかし注目は伊藤だった。10周目に7番手、11周目に6番手、13周目には5番手と順位を上げていった。前を行くのは芹沢、しかし彼もペースを上げて伊藤の先行を簡単には許さない。そして22周目には芹沢と伊藤が、トップグループへ追いついた。トップグループは井筒・梁・玉田・芹沢・伊藤の5台に膨れ上がった。勢いの止まらない伊藤は、23周目に入ると3番手へ上がりトップを狙う。
ドラマは24周目に起こった。トップの座を梁に奪われた井筒は、リボルバーコーナー進入で梁を抜きにかかる、しかし井筒はそのまま転倒してしまう。梁も押し出される形でコースアウトし、順位を大きく下げて5番手でコースへ戻る。これに変ってトップとなった伊藤は、25周目のラストラップをトップのまま走りきり伊藤は今期初の勝利を手にする事となった。なんと1999年のR5茂木以来の勝利。2位は芹沢、3位の玉田はR3筑波以来の表彰台。4位に加賀山、5位に梁、6位に北川、以下は吉川・山口・辻村となった。