2000年10月4日
全日本選手権第9戦・菅生サーキット
…「行ってきました」現地レポートです。
開催日 2000年9月29・30日、10月1日
R2-1第9戦・菅生大会では、絶好のコンディションとなり、予選では125・250クラス共にコースレコードが出た。スーパーバイククラスも好タイムが続出した。しかし、各クラス通して、転倒者が目立った予選でもあった。125クラスは、ティーンエイジャーの活躍が目立った。250クラスは、早ければ今回で中富選手のチャンピオンが決定する。
スーパーバイククラスは、前回の筑波で優勝した井筒選手が、予選終了10分前にシケインで転倒した。また、予選終了直前には、コース上にオイルが出て、オイルに乗ってしまい伊藤・芹沢選手などが転倒した。梁選手は6戦連続のポールポジション獲得にはならなかったが、昨年の菅生大会を合わせると、3連勝中なので、大本命に違いはない。
それ意外ではヤマハ勢の吉川・辻村選手が2人揃ってのフロントローにつけた。ディフェンディングチャンピオンの吉川選手は5年ぶりのポールポジション獲得となり、第8戦・筑波で2位になった辻村選手と共にここのところ赤丸急上昇。後半戦に強い、加賀山選手も見逃せない。
全日本選手権第9戦・菅生サーキット
予選結果 2000年9月30日
●125クラス
1位 高橋 裕紀…筑波に次いで2度目の、ポールポジション獲得。恐るべし16歳。
2位 小山 知良…ランキングトップの小山。17歳とは思えない計算高さ、チャンピオンの素質大。
3位 仲城 英幸…今年は転倒が目立つ仲城。完走すれば結果はついてくるはずなのに。
4位 上江洲克次…予選の速さが決勝に結びつかないのは、マシン的問題もあるかも。
●250クラス
1位 大崎 誠之…市販マシンで、昨年の加藤選手(NSR)のタイムを上回る、コースレコード。評価大。
2位 中富 伸一…安定した走りで4勝を含む7戦連続表彰台獲得で、ランキングトップ。
3位 宮崎 敦 …今年は特に転倒が多い。ベテランだけに頑張ってもらいたい。
4位 関口 太郎…第8戦・筑波では中富選手と激しい戦いの末、2位。その雪辱をはらしたいところ。
●スーパーバイククラス
1位 吉川和多留…5年ぶりのポールポジション獲得。第7戦・鈴鹿では2位。今季、初優勝なるか?。
2位 梁 明 …ランキングトップの井筒を追う梁選手。意地でも井筒選手より前でゴールしたい所。
3位 加賀山就臣…250クラス参戦以来のフロントロー獲得。
4位 辻村 猛 …第8戦・筑波では2位。本人曰く「トップを走りたい。」との事。
全日本選手権第9戦
菅生サーキット
決勝結果 2000年10月1日 |
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●125クラス
優勝 高橋 裕紀…中盤以降、後続を引き離した粘りの走り、これは本物です。
2位 小山 知良…確実にポイントを取るあたりが、偉い!。チャンピオンをしっかり捕らえている。
3位 菊池 寛幸…小山選手の前でゴールしたかったが、マシンのトップスピードに悩まされていた。
*決勝レース
心配された雨は朝までに上がり、決勝レースがスタートするころには路面も完全に乾いていた。最高のスタートダッシュを見せたのは予選2番手の小山だが、3コーナーでこれをかわした仲城が先頭でオープニングラップを終了。小山・高橋・山本・上江洲・菊池・加藤・柚木・小野と続く。
その後、小山は何度か先頭に立つが、シケインからの上りでは仲城が先行してコントロールラインを通過する時点では5周目までゼッケン1がタイミングモニターの最上段に記されていた。そのころ、先頭集団は仲城、小山、高橋の3人に絞られていた。しかし菊池が4位グループのトップに出て、高橋が仲城をリードしたまま1コーナーに飛び込んだ6周目から、レースは再び動きはじめた。菊池にひっぱられた4位以下のライダーが前を行く3人に追いつき、先頭集団は9台にふくれあがったのだ。
2度目の変化が起こったのは、高橋が仲城との競り合いを優位に進め、首位をキープすることができるようになった4周後のことだ。9目には1位と2位の間にはっきりとした差ができ、次にコントロールラインを通過したとき、高橋のリードは1秒を超えていた。この周、2位グループの緊密な隊形も、レインボー・コーナーで起こった小野の転倒によって崩れてしまう。終盤の焦点は、2位グループから抜け出した仲城が、ふたたび高橋を追いつめるかどうかに絞られた。
しかし、最大2秒あった高橋のリードを0.8秒まで削り取った仲城が、ゴールまで2周を切った17周目の3コーナーで転倒。これで高橋の勝利は確定的となった。高橋は2秒あまりの差をつけて嬉しい初優勝のチェッカーフラッグを受けた。その後方では、小山と菊池が最後まで激しい2位争いを展開する。大詰めでやや車速が伸びなくなった菊池を抑え、2番手でゴールに飛び込んだのは小山だ。しかし、予選ではあまり元気のなかった柚木も4位となり、タイトル争いは接戦のまま最後の2戦に持ち越された。
●250クラス
優勝 中富 伸一…5勝を含む8戦連続表彰台獲得で、見事にチャンピオンに輝いた。文句なしの走り。
2位 青山 博一…中富選手に食い下がったが、今一歩及ばず。
3位 大崎 誠 …筑波に次いで連続表彰台を獲得。一発の速さがあるだけに今後は更なる期待あり。
*決勝レース
レースは4番目のグリッドからめざましいスタートダッシュを見せた関口太郎のリードではじまった。これを酒井・稲垣・宮崎・亀谷が追い、中冨はやや出遅れている。しかし、オープニングラップを5番手で消化した中冨は順調にポジションを上げ、5周目には関口から首位の座を奪っていた。それ以前には2周目のシケインを立ち上がったところで宮崎が転倒を演じる波乱もあった。
中冨はその後も順調に首位を快走する。そのまま逃げきれば、文句なく全日本チャンピオンの栄冠が手に入る。これにストップをかける可能性を秘めていた唯一のライバル、青山はさらに後方からの追い上げを強いられる展開だった。中冨がトップに浮上した5周目、青山は4番手まで順位を挽回していた。そして2周後、酒井、関口をいっきにかわした青山は中冨の真後ろに迫ってゆく。しかしその直後、バックストレートエンドでオーバーランし、再び関口の先行を許したのだ。続く8周目には後方に埋もれていた畠山が転倒。そして青山は中冨、関口から1秒の遅れをとることとなった。
練習走行中に全身打撲という傷を追いながら健闘する関口は、ストレートのスピードでも中冨にハンディキャップを追っており、ジリジリと離されはじめる。逆に後方からペースを上げた青山が、13周目にこれをかわし2番手。もういちど中冨を追撃する態勢に入った。
シケインを巧みなライン取りで抜けた青山は、初めてトップに立って15周目を終了。同じ場面が続く16周目にも繰り返された。しかしその後は中冨が再び主導権を握り、青山の反撃を退けてシーズン5勝目のチェッカーフラッグを受けた。この瞬間、2000年の全日本チャンピオン第1号となったわけだ。稲垣と大崎の激しい3位争いは、1000分の1秒という僅差で大崎に軍配が上がった。
圧倒的な優位に立って菅生入りした中冨伸一が、シーズン5勝目を挙げる最高の形で250ccクラスのタイトル争いに決着をつけた。開幕から一度も崩れることなく戦い続けた中冨が、終盤2レースを残して王座を確定したのは、ほぼ順当な結果というべきだろう。
●スーパーバイククラス
優勝 梁 明…今季3勝目。井筒選手のチャンピオンに待ったをかけた。残り2戦、奇跡は起こるか?
2位 吉川和多留…ランキングは3位に浮上した。更なる上をめざす、ディフェンディグチャンピオン。
3位 北川 圭一…加賀山選手に競り勝ったが、本人は不満。残りのレースに期待。
*決勝レース
カワサキの井筒仁康がここ菅生でタイトル争いに決着をつけるには、最終戦MFJ-GPのボーナスポイント3点を計算に入れた場合、梁との差をさらに11ポイント広げる必要があった。両者が完走した場合、これは相当に困難な課題であり、予選でもペースが上がらなかった井筒は「ここではなく、次のTIで決めたい」と冷静に状況を分析していた。
スーパーバイク・クラスのスタートを前に、スポーツランドSUGOの上空は午前中と一転して秋らしい快晴となっている。そしてレースは、2番目のグリッドから好スタートを切った梁、2列目から飛び出した芹沢が先手を取る形で幕を開けた。しかし1コーナーを抜けたところではポールシッターの吉川が、すかさず2番手に浮上し、ヤマハR7の国内における今シーズン初優勝に手が届くポジションを確保した。ワークスマシンからなる上位グループは、梁を先頭に、これを追う吉川・芹沢・加賀山・辻村・井筒・北川・山口・伊藤・玉田といったオーダーでオープニングラップを消化した。武田雄一のVTR・SP-1を挟んで、2001年型GSX-R750を駆る渡辺はやや出遅れ、この時点でのポジションは12番手となっていた。
梁、吉川のそのまま最後まで、レースの主導権をゆずらなかった。好スタートを切った芹沢は、逆に少しずつ後退してゆく。4周目には加賀山、5周目に井筒、続いて7周目には北川、辻村がこれをかわすこととなった。これがきっかけとなって、すべてのワークスマシンが加わっていた大集団が2つに別れた。トップグループを引っぱるのは6周目に順位を入れ換えていた梁と吉川。これに3番手に浮上した井筒、加賀山、北川、最速ラップをマークしてその後方に迫っていった辻村を加えた6人が、なおも優勝圏内に踏みとどまっている。7番手以下の第2集団を形成しているのが、伊藤・玉田・山口・渡辺の4人だ。このうち山口は11周目のハイポイントコーナーで惜しくも転倒を演じてしまう。このとき、武田以下の後続グループは、すでにワークス勢から14秒の遅れをとっている。
まだ路面に濡れたカ所が残っていた朝のウォームアップ走行でただひとり1分29秒台のタイムをマークし、余裕をもって先頭集団を追っているように見えた辻村猛が不運に見舞われたのは、梁が再びトップに立ち、ペースが上がりはじめて4ラップが経過した18周目のことだ。ドライブチェーンの脱落という思いがけないトラブルに見舞われた辻村は、馬の背コーナーを抜けたところで突然スローダウン。そのままマシンを止めてしまった。
これと前後して、タイトル争いに影響を及ぼす変化が、上位グループでも起ころうとしていた。3番手に浮上し、そのまま先頭に立ってレースを終えれば、初の王座が確定的となる井筒が、梁・吉川から徐々に遅れはじめたのだ。辻村が脱落した2周後、吉川から1秒遅れとなっていた井筒を北川がとらえる。21周目には加賀山もそれに続き、井筒はそのまま後退して単独の5位となる。
前方ではスズキとヤマハを代表する梁、吉川が真っ向からぶつかりあう激戦を展開していた。主導権を握っていたのはストレートのスピードに若干のアドバンテージがある梁だが、吉川もまったく引く気配を見せない。そしてラスト2周を切ったころから、本格的な攻勢に転じた吉川は、最終ラップで勝負ようとしたが、イエローフラッグが出されていたため、狙いのバックストレートエンドで梁をかわすことができなかった。残されたポイントはシケインのみ。その進入でアウトから並びかけた吉川は、最初の切り返しでイン側の有利なポジションを確保する。梁と吉川は接触したが、わずかな差でスズキのエースが競り勝ち、そのまま今期3度目の勝利を手にすることとなり、チャンピオンへの可能性を残した。
「黄旗が出ていたのはラッキーだった。今日は最初から最後まで、全力で走らなければならず、本当に厳しいレースだった」と、梁はまったく息を抜くことのできなかったレースを振り返っている。
1秒後方では北川が加賀山を抑えて表彰台に立った。5位でゴールした井筒と優勝した梁とのポイント差は28点。残る2戦の展開しだいでは、十分に逆転が可能な状況となっている。伊藤、芹沢、玉田、渡辺が6〜9位。武田雄一がトップ10の最後をしめくくった。
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