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MOBILE SUIT GUNDAM PERFECT ONE YEAR WAR【Play Station】

 ガンダムファン待望の正統派ガンダムシミュレーションゲームが、この『MOBILE SUIT GUNDAM PERFECT ONE YEAR WAR』です。パソコン版ではいくつか存在していましたが、家庭用ゲーム機において非SDガンダムのシミュレーションゲームが発売されたのは、おそらく初めてなのではないでしょうか。(3Dポリゴンの『機動戦士ガンダム』もシミュレーションと言って言えないことはないですが)

 さて、肝心のゲーム内容ですが、結論から言うと、良くも悪くもごく正統派のシミュレーションゲームになっています。とはいっても、このゲームのシステムは独特の疑似リアルタイムとも言えるシステムを採用しているため、最初は戸惑うかも知れません。

 その独特のシステムについては後に述べるとして、典型的大戦略2系シミュレーションとの相違点を先に述べておきましょう。まず、このゲームはゲームスケールが戦術級となっており、連続するマップを1つづつクリアしていくキャンペーン形式をとっているため、ユニットの生産という要素は全くありません。従って、ごくわずかな例外(ほとんど裏技)を除いて、それぞれのマップを攻略している最中に自軍のユニットが増えることはありません。また、この手のシミュレーションゲームでは常識とも言える「移動後の間接射撃は出来ない」は、このゲームではあてはまりません。このゲームでは何ヘクスかの射程距離を持つ兵器こそがむしろ主力であり、移動後にも全く問題なく間接射撃を行うことができます。これだけ書くと、なんだ『ガンダムジェネレーション』のリアル版じゃないか、と言う印象を持つかも知れません。確かにシステム的には(四角ヘクス制という点から見ても)よく似ている点もあります。しかし、実際にプレイしてみるとプレイ感覚は『ガンダムジェネレーション』とは全く異なります。

 画面がクウォータービューと言うことと、戦艦がMSの数倍の大きさのユニットになっている(!)こともあります。例えば、戦艦の甲板にガンタンクをのせ、砲台代わりに運用することも可能だったりします。これは従来のゲームにはなかった演出でしょう。しかし、プレイ感覚の違いは、このゲーム独特の「順番制移動システム」(正式な名称は特にないようなので勝手に命名しました)によるところが大きいようです。従来の典型的非リアルタイムシミュレーションでは、自軍のユニットを動かす順番は勝手にプレイヤーが自由に決めることができました。しかし、このゲームでは行動力と呼ばれるポイントが100にならないと移動・攻撃が出来ません。行動力が100になったユニットから、順番に移動・攻撃を行っていきます。移動・攻撃は連続して行うことができますが、もちろん行動力が必要であり、消費した行動力は時間(ターン)が過ぎるまで回復しません。つまり、一度に行動できるユニットは1つだけであり、この行動を行う順番には敵も味方も関係ないのです。全てを支配するのは、この行動力ということになります。

 さて。このゲーム、もちろん、と言うべきでしょうか、パイロットとMSは別個の存在になっています。そう……パイロットによってこの行動力の消費量は異なってくるのです。十分に成長したパイロットの駆るMSは、相手が文字どおり何も出来ないうちに一方的に敵を叩くことが出来るのです。ちなみに、このゲームでは、卓越したパイロットがMSの性能限界によってその能力を充分に発揮出来ない、と言うことは一切ありません。本編のように、ガンダムがアムロの反応速度についていけなくなる、ということはないのです。いや、それだけではありません。このゲームでは、十分に成長したパイロットは機体の性能というものを全く超越した強さを発揮するのです。例えばガンダムの性能は防御力60、命中率55、回避力70です。ザクは防御力30、命中率40、回避力35です。しかし、レベルと全てのステータス及び熟練度が最高値となったパイロットはこの性能値にそれぞれ防御力+200、命中率+1200、回避力+600の修正値をつけてしまいます。さすがにHP(耐久力)こそ変化しませんが、こうなると機体の性能値など全く関係ないレベルになってしまいます。究極まで成長したアムロなら、コア・ファイターでビグ・ザムを撃沈することだって夢ではないのです。(……たぶん。お暇なかたは試してみるのもよいのでは?)

 MSの話が出たので、ついでにここで登場兵器について少し述べておきましょう。はっきり言って、このゲームのユニットの種類は相当なレベルと言えます。なにせ、サラミスの大気圏突入用カプセルやファン・ファン(!)まで登場すると言うのですから、想像がつくでしょう。私の知っている限りでは本編(MSVやOAV等の外伝は除く)に登場した全てのMSとMAが収録されています。ただし、艦船やその他の兵器はさすがに完璧ではないですが……。まあドロスがないだのコロンブスがないだのいうのは贅沢でしょう。

しかし、マッド・アングラーがない、というのはちょっと寂しすぎるような気がします。本編で本格的な対潜水艦戦闘がなかったのは事実ですが、できればファンとしてはマッド・アングラーから発艦するズゴックが見てみたかったものです……。もっとも、これは、原作の戦闘シーン再現が主目的というゲームの性格上致し方ないことなのかも知れません。しかし、それならミサイルエレカとザクの戦闘も……え、これも贅沢ですか? まぁ、常識的に言えば普通の人間が、61式だのSSミラー(!)だのまでデータ化されているこのゲームのユニットの品揃えに文句を言うことはないでしょう。なお、TV版を元にしたオリジナルモードには登場しないコアブースターはパラレルモードで登場します。ちなみに、第1話のザクとミサイルエレカとの話に補足しておくと、最初のサイド7のコロニー内の戦闘ではガンキャノンAパーツ(!)だの、ガンタンクAパーツ(!)だのまで、しっかり登場します。Aパーツ、Bパーツといえば、本編に忠実なストーリー展開をするオリジナルモードではGファイターはちゃんと合体変型します。このあたりはけっこう嬉しい配慮です。

 ゲームモードの話が出たので少し補足しておきましょう。このゲームでは本編に忠実なストーリー展開をするオリジナルモード、ガンダム3機、ガンキャノン3機、ガンタンク3機からなるフル編成の部隊を率い、激戦を戦い抜いていくパラレルモード、ビグザムを駆るララァ・スン(!)を用いてジャブロー攻略戦をすることもできるコンプリートモードの3つが用意されており、それぞれを楽しむことができます。イベントを多数見たい人にはオリジナルモード、セイラさんがガンダムのメインパイロットだったら? という、イフの世界を楽しんでみたいという人にはパラレルモード、対戦して対戦して対戦して! 部隊をもっと強く強く成長させていきたいと思う人にはコンプリートモードがお勧めでしょう。

 そう、このゲーム、ちゃんと対戦モードも用意されているのです。いくつものマップを攻略して鍛えぬいた自軍の部隊をメモリーカードに納めて友人宅で対戦する、ということも可能です。敵にまわして初めてわかる、ガンダムとアムロの組み合わせの恐ろしさ……とくと味わってみて下さい。(笑)

 さて、演出面もこのゲームはなかなかのものがあります。このゲーム最大のウリは、なんといってもポリゴンによる戦闘シーンデモでしょう。ガンキャノンがガンダムシールドを構える様はなかなかのものがあります。(苦笑) 各キャラクターは戦闘時に(一言程度ですが)喋ってくれますし、ちいさな顔グラフィックもちゃんと出ます。オリジナルモードにおけるイベントデモも、かなりのものです。

 しかし、このゲームにも欠点はあります。最大の欠点はテンポが悪い、ということでしょう。まず、このゲームのウリである戦闘シーンデモは確かにかっこいいのですが、ロード時間が長いため、ゲームのテンポをいささか悪くしています。(もっとも、デモはカットできるようになっていますが)

 また、ゲームのターンが長めというのも欠点の一つです。特に、パラレルモードでは、勝利条件が敵部隊全滅か前ターン終了まで生き延びること、ということが多くなっています。従って、シャア大佐を殺したくない、という場合には、圧倒的な戦力を持ちながらシャアの駆るMSから逃げ回るという情けない羽目になってしまいます。せめて、勝利条件が敵部隊の2/3を撃破するかあるいは生き延びることであれば……。

 そんなわけで、万人にすすめられるゲームではないのは残念ですが、逆にSD系では満足出来ない硬派なシミュレーションを期待する方には、このゲームは絶対のお勧めです。「あの名シーンを再現したい!」という方にも、「もしガンダムが3機あれば……」というIFを期待する方にも、さらには対戦に燃える人にもきっと満足してもらえるでしょう。しかし、戦略的観点から見たガンダム世界のシミュレーションを望む人や、派手さを望む人には残念ながらこのゲームは向いていません。

 あくまで正統派の、硬派な戦術級ガンダムシミュレーションゲーム、これが『MOBILE SUIT GUNDAM PERFECT ONE YEAR WAR』です。どしてこんな軟派なゲームばっかりなんだ! というあなた、一度挑戦してみてはいかがですか? え、破損部位の判定がない? ……2に期待しましょう。(ぉぃ)


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