和歌山県の玩具
01. 米搗車(和歌山市)
02. 瓦人形(和歌山市)
03. 粉河の流し雛(紀の川市)

04. 御坊天神(御坊市)
05. 御坊の練り物 (御坊市)
06. 熊野那智大社の八咫烏(那智勝浦町)
07. 紀州人形(白浜町)

01. 米搗車(和歌山市)



和歌山県は紀伊半島の西半分を占めており、紀北、紀中、紀南(南紀)に大きく分けられる。紀北の中心、和歌山市は紀州徳川家の歴史ある城下町なので、張子や土人形など様々な玩具があったが、戦前までにほとんど姿を消した。幸い愛好家によっていくつかが復元され、この米搗(つき)車もそのうちの一つである。「米」という字模様が全体に描かれ、車輪が廻ると車軸に付けられたカムによって3本の杵が板を叩く。土地では“コメカチグルマ”と呼んでいる。江戸時代からあり、明治期には禄を失った士族の手内職で作られたという。同工の玩具は各地に見られたが、現在ではほかに徳島市の「藍搗きお蔵」があるのみである。高さ10p。(H26.2.22)

02. 瓦人形(和歌山市)



和歌山城下の瓦職が生業の傍ら内職として作り始めた信仰玩具。猿は市内若宮八幡宮境内の日吉神社などへ安産の祈願に奉納し、牛は秋月の深草神社や津秦天満宮などへ子供の瘡(くさ、腫れ物)を治す祈願に奉納する。どちらの場合も、すでに奉納されている一体を借り受け、祈願成就の後(安産ならば三十三夜の後)に御礼の一体を添え、倍にして返納する習わしである。牛は草を喰うので、瘡を草に掛けて、瓦牛で腫れ物を撫でながら「くさ喰え、くさ喰え」と唱える。撫で牛の信仰は主に西日本で見られる07。小さい瓦猿の高さ10p。(H26.2.22)

03. 粉河の流し雛(紀の川市)



粉河寺は西国三十三所第三番札所。駅から続く門前町を過ぎ、大門をくぐって境内に足を踏み入れると、両脇には多くの御堂が並び、一番奥に壮大な本堂が現れる。茶店で食べた手作り“柿の葉寿司”の味も忘れられない。ここの流し雛は色紙に大豆大の首を付け、男女を組み合わせたごく単純な紙雛。各家々で手作りするものだが、粉河寺から授与されたこともあった。病気災難などの身の汚れをこれに移し、形代表紙3507として経木の舟や木の葉に乗せ、紀ノ川から引いた水路に流す。紙雛は紀ノ川に合流し、やがては加太の浦の淡島神社13に流れ着くと願いが叶うと云う。現在では環境問題に配慮し、流された紙雛は数百メートル下流で回収しているそうなので、残念ながら加太の浦にはたどり着かない。左の雛の高さ11p。(H26.2.22)

04. 御坊天神(御坊市)



紀中(日高)地方では節句や誕生祝に男児には天神人形を、女児には雛人形を贈る風習がある。この御坊天神は練り物製で、デザインや色使いなどなかなか気品があり、数ある天神人形のなかでも秀逸なものである。高さ22p。(H26.2.22)

05. 御坊の練り物 (御坊市)




御坊人形は大阪張子に倣って明治期に創始された。御所人形にも似た上品な姿形をしていて、作りも丁寧である。作品には張子と練り物があり、首振り虎やユニークな夫婦達磨など大型のものは張子で作られる。写真は節句飾りに供される練り物の添え人形で、鯛持ち(左)と三番叟(右)。ほかにも虎加藤10、鯛車水族館03、鯛狆、鯛戎、俵持ち、鯉抱きなどがある。鯛持ちの高さ8p。(H26.2.22)

06. 熊野那智大社の八咫烏(那智勝浦町)




南紀の玩具としては、古くより鯨漁の盛んだった太地や那智勝浦の船玩具と鯨玩具04水族館21が有名だが、今回は烏の話。「烏が鳴くと人が死ぬ」とか「烏の夜鳴きは凶事の兆し」とかいわれ、漆黒の烏には不吉な話が付きまとう。しかし、東征のために大和に向かう途中、紀州熊野の山中で道に迷った神武天皇の道案内をつとめたのは八咫(やた)烏であったし、中国では太陽には三本足の烏が居るという伝説から、烏が不老不死の象徴とみなされ、長寿の妙薬に烏が使われている。写真は熊野那智大社の絵馬に描かれた八咫烏(高さ8p)。三本足なのは中国の伝説と後になって混同したものらしい。因みに、八咫烏は日本サッカー協会のエンブレムにも使われている。ほかに烏の縁起物としては、京都の新(いま)熊野神社から土製の八咫烏、東京府中の大國魂神社からは厄除けや害虫駆除などに霊験あらたかな烏団扇が授与されている京都10東京05(H26.2.22)

07. 紀州人形(白浜町)




源氏絵巻の特徴である書き眉、引き目をした可愛い漆塗の人形。添えられた栞には「壇ノ浦に滅んだ平家の多くは九州を目指して落ち延びたが、なかには紀州に向かったものも居り、奥方と共に白砂青松の白浜を安住の地とした藤原朝臣弘光もそのうちの一人であった。美しく仲睦まじい夫婦の姿は漁民の羨望の的となり、何時しかその姿は人形に作られるようになった」とある。平家の落人なのに、袖に紀州徳川家の葵の紋所が描かれているのはご愛嬌。南紀・白浜温泉で求めたものだが、大内人形01によく似ているので、あるいは山口県産かもしれない。高さ3p。(H26.2.22)

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