干支の羊 特集

01. 仙台の堤人形(宮城県)
02. 初瀬の出雲人形(奈良県)
03. 邑久張子(岡山県)
04. 豊岡張子(群馬県)
05. 三春張子(福島県)
06. 羊玩具のいろいろ(各地)


01. 仙台の堤人形(宮城県)



平成27年の干支は未で羊。獣に関する漢字は、ほとんどが獣そのものの形から作った象形文字であるが、なかでも羊は牛や馬と同様、ひと目で象形文字と分かる。我が国に残る羊の記録は、1400年前の飛鳥時代に百済からラクダやロバなどと一緒に2頭の羊が朝廷に献上されたのが最古という。しかし、本格的に飼育が始まったのは明治になってからで、軍服の生産用に導入を試みたが最初は失敗している。北海道以外では高温多湿の日本の風土に合わなかったのが原因らしい。いずれにせよ、日本人にはあまり馴染みのない動物で、そのせいか羊の郷土玩具は数も少なく滋賀01三重08宮城16)小欄のコレクションでも十二支中最少であった表紙25。この堤人形の羊は、三廻り前の干支用に作られたもので、雲英(きら)に絵模様が映えて美しい。石膏製の型は1000回ほど使うと、細かい穴が開いて使えなくなるそうで、12年毎に型を新調するたびに新しいデザインを考えるという。高さ10p。(H26.12.4)

02. 初瀬の出雲人形(奈良県)



日本とは対照的に、羊はキリスト教圏では馴染み深い動物で、聖書に最初に出て来る動物は羊であるし、神の子羊といえばイエス・キリスト、迷える子羊は人間である。また、フィンランドやスウェーデンでは、山羊(ヤギ)が豊穣のシンボルとされ、豊穣の神トムテが山羊を連れて贈り物を届けてくれるという12月には、豊作と幸福を願って麦藁の山羊を飾る風習がある。一方、古代のイスラエルや中国では羊が代表的な犠牲(生贄)であった。生贄にされる牛を見て憐れみ「羊を牛の代わりにせよ」と命じた王に、「目にしないものにも惻隠の情を示すのが仁」と諭した孟子の話(以羊易牛)は有名である。写真の羊は立派な角と堂々とした体躯で、素朴な出雲人形にしては写実的である。干支向けの新しい型であろう。高さ10p。(H26.12.4)

03. 邑久張子(岡山県)



羊が使われるコトワザに「羊頭を掲げて狗肉を売る」がある。羊の頭を看板にしておいて、実は犬の肉を売りつける“看板に偽りあり“の意味であるが、看板と商品との対照には時代によって変遷があり、牛>馬がやがて羊>馬となり、羊>犬となったという。羊の肉は牛と同じく、常に馬や犬の肉よりも上等とされていた証拠であろう。羊の字がついた食べ物には「羊羹」がある。中国では元来、羊の肉を入れた羹(あつもの、熱い汁物)を指す。日本には鎌倉期以降、禅宗の留学僧により伝えられたが、日本では獣食の習慣がなかったため、”見立て料理“として葛粉や小豆の粉で作った生地を蒸し固め、今の蒸羊羹に近いものに工夫した。もっぱら間食用としたらしい。写真の羊は平成15年の年賀切手に取り上げられたもの。切手の解説に「伝統の吹込み技法により製作された手作りの玩具で、明るいパステルカラーが現代感覚にピッタリ」とある。高さ14p。(H26.12.4)

04. 豊岡張子(群馬県)



眠れない時には、「羊が1匹、羊が2匹・・・」と数えるとよいと言われる。英語では「羊(sheep)」と「眠れ(sleep)」の発音が似ていて、「眠れ、眠れ」と自己暗示にかけるからだとか、sheepの発音が腹式呼吸に似たリズムでリラックスするからだという。一昨年の日本睡眠学会で「羊を数えると本当に眠れるのか?」という真面目な発表があった。それによると、98人の学生たちに羊を数えて眠れたかを調査した結果、9割以上で効果がなかったという。日本語で「ヒツジ」と唱えても効き目がないのは当然だろう。一方、ゆっくりとした呼吸に心掛けると、羊を数えるよりも早く眠気を催す学生が多かったそうだ。理由はやはり腹式呼吸にあり、腹式呼吸によって交感神経が鎮まり、副交感神経が優位になって落ち着くためだという。写真は柵を跳び越える羊をヤジロベエにした新作の張子。高崎だるまの製造元が作っている。高さ9p。(H26.12.6)

05. 三春張子(福島県)



羊の玩具には土人形のほか木彫などもあるが、羊のふっくらした感じを出すのには、張子が一番ふさわしいように思う。高さ7.5p。(H26.12.7

06. 羊玩具のいろいろ(各地)



羊の玩具が少ないことは前に書いた。それでも十二支一揃いであれば、なかに必ず羊も居るわけで、そのような羊たちを紹介する。前列左から、杵島山一刀彫(佐賀県)、下川原の羊土笛(青森県)、北条土人形の羊三番叟(鳥取県)。後列左から、五箇山紙塑人形(富山県)、岩井温泉の十二支人形(鳥取県)、三春張子(福島県)、中山土鈴の花羊(秋田県)。花羊の高さ5.5p。(H26.12.6)

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