1998.3
介護保険法成立後に見えるもの

座談会では、なぜ介護保険が必要なのかについて論じられている。これも手垢の付いた論議なので省略する。端的に、高齢社会→医療・保健・福祉の一元化(福祉施設体系の一元化)→(老人保健福祉計画の履行)介護保険の導入である。
それに伴って、高齢者をそれまで庇護される対象から自立した者として位置づけ直している。また、福祉に係る人材の育成と確保が急務になっている。確保については、子育てを終えた主婦の方や元気な高齢者の方も担い手として期待されている。
介護保険によって、自治体の福祉に関する格差をある程度是正していくことが必要である。つまり国や都道府県が重層的に支えていくことである。
このころは企業参入を認めつつも、簡単に退去されたりすると利用者の不利益は計り知れないことを危惧している。昨今では、社会福祉法人と企業の棲み分けがある程度出来ているので、あまり問題にはなっていない。

京極高宣が介護保険の導入について論文を寄稿している。
厚生労働省のちょうちん記事であるが、地方格差については、都道府県がカバーすること、ある程度第2号被保険者の未納分を国家で補填することなどを上げている。介護保険の意義については、

介護保険は、在宅ケアを中心にしているが、80年代までは、福祉人材の非専門性、バリアフリーがなかった、福祉計画での在宅ケアの財源が不足していた。が、人材でも介護福祉士、ヘルパー制度の導入などで改善されている。
ドイツの介護保険との違いは、要介護認定からはずれた要支援者への適用余地を残し、さらに従来の市町村措置費の部分を生かすという特徴がある。

介護保険下の社会福祉法人のあり方についての論文では、見直しについての提言論文であった。
社会福祉法人は寄付を前提にしていることや措置費の使途制限のため、施設設備の自己負担財源の確保や借入金の返済に苦労していること。老朽化した社会福祉施設の建て替えに向けて、法人内部において資金留保を行う仕組みが確立していないことを上げている。減価償却制度の導入なども必要である。
今後は安定収入が見込めず、職員の人件費の確保など理事の責任は重くなる。その反面、恣意的な運営により適性を欠いた理事が出るとも限らず、経営責任に対する適正評価、役員報酬なども検討することが必要である。そのための評議会の活性化が望まれるが、あまり果たされていないことも課題である。などなど細かいところまで提言している。
が、要は、適正にするにしろ、人材を確保するにしろ、経営を安定化するためには金が必要であり、規制緩和も必要であると言った論調であった。

事業型社協の介護保険導入についての論文は、現状と課題について述べている。
事業型社協については、1996.31997.4を参照のこと。
その後、権利擁護や苦情解決へ社協の役割は特化していき、その一方でヘルパー登録などで行政と地域のつながりを取り持つものとなって言っている。
さらに昨今は、地域包括支援事業の中核機能として動き出しているところである。

2007.4.4

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