続・エルナード

+++ afterward of ELNARD +++


闇の王が封印されて五千年の時が経ち、もはやその名を知る者はレミールの大教会の中でも僅かになっていた。
そこに突然現れた、小さな烈しい光。
それはみるみる赤子の形をとり、神官の一人の腕の中に収まった。
赤子は神から使わされた者として、《光り輝く者》シーダと名付けられ大切に育てられることになった…。



更に十七年が過ぎた頃、シーダは「神の子」の称号に相応しい体術と魔術を修得し、聖人として世界中からの崇拝を一身に集めていた。
世界は再び、邪悪なる魔物で溢れていた。
シーダは月の半分は辺境へ赴き、頻出する魔物を退治することを自らに課した。
―――そして、運命の日が訪れる。



ブランセルの洞窟。霊的な守護力の高いこの場所ですら今や魔物が跋扈(ばっこ)している。このままでは世界はどうなってしまうのか。如何ともし難い己の力の小ささに自然、顔が曇る。
「シーダ様」
同行している魔法使い、ラナに呼ばれて思考を戻す。
「ああ、どうかしましたか?」
「これは…何でしょう」
ラナの視線の先をたどると暗闇の中、幽(かす)かに燐光を発する大きな繭が瓦礫の中に埋(うず)まるように横たわっていた。
「…魔族が使う繭のようですね」
「魔族?」
「長い時を渡るのに使うんです。…そろそろ出てくる時期が近づいているようですね、かなり繭が薄くなっています。それにしても今までよく無傷で…」
様子を見るようにシーダは繭に近づき、軽く表面をなでた。
その手が、止まる。
「…シーダ様?」
「……」
ゆっくりと、シーダはその手を引き戻した。突然彼の内に湧き上がった、胸騒ぎと表現するにはあまりにも複雑なその感情を押し殺して。
その行動をどう理解したのか、ラナが口を開いた。
「今のうちに燃やしてしまいましょうか?」
「…燃やす?どうしてですか?」
「だって…怖いじゃないですか。魔族なんでしょう?」
ラナの意外な言葉に一度は首を傾げたシーダだったが、無理もないと表情を和らげた。
「魔族、と言っても邪悪な存在(もの)では無いですよ。あなた達エルフや人間という言葉と同じように一つの種族を表しているだけですから。」
まだ納得のいっていないような彼女に安心させるように笑いかける。
「それに、折角長い間繭に籠もっていたのに外にも出られずに殺されてしまうのは可哀想でしょう?」
「…シーダ様がそう仰られるのなら…」
渋々といった風で頷いたラナにもう一度笑みを返して、シーダは繭に背を向けた。
「行きましょうか。まだ奥に魔物の気配が潜んでいます。」



翌日。ラナの前では抑えていたあの感情の理由も分からぬまま、シーダは再び繭の前に立っていた。誰にも告げずに洞窟へ入ってしまった罪悪感など感じることもできないくらい、彼を衝き動かす何かが働いていた。
「……」
不思議だ…。
そっと、繭をなでる。
今までこれほどに魅きつけられた事など無かったというのに。
何が私を魅きつけるのだろう…
「!」
繭から伝わってきた振動に思考が中断される。孵化が始まったようだ。
シーダは数歩下がって様子を見ることにした。
じれったいほどの時間をかけて繭に亀裂が入る。薄く乾いた繭の表面が細かく崩れた。程なく粘膜に包まれた魔族の姿がシーダの目に触れる。
「……」
魔族は何かつぶやいたようだった。シーダには全く気が付いていない。そのまま力尽きたように頽(くずお)れる。
―――懐かしい。
立ち尽くしたシーダの中を占めているのは胸を締めつけるような懐かしさ。
理由など知りようも無い。自分でも気付かぬまま、双眸から涙が頬を伝った。
びくり、と大きく魔族が体を震わせてシーダは我に返った。長期の繭籠もりのため、極度に体力が落ちているようだ。このままにしておいては死んでしまう。
…そんなことにはさせない。シーダは唇を引き結び、魔族の腕を取って肩に回した。

ラナとシーダ

ラナちゃんとシーダさん。(クリックするとちょっと大きくなります。)
シーダはゲーム画面から金髪のストレートだと思われたのでこんな感じになりました。
ラナは完全にオリジナルです。

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さてさて。いかがなもんでしょうね。前回のようなレールがないものでちょっと難産でした(^.^;)。量が増えてしまうのと書く方の時間もかかってしまうため、省ける情景描写はかなり省いております。申し訳ありません(--;)。ネット公開はスピード勝負って事で一つ。
今回の見所はやっぱり最後のブロックでしょう!(笑)繭をなでる、という動作も結構ポイントだと思ってます(爆)。
(00/07/24 up)