■ 漢方薬がヒントとなって誕生した七味唐辛子「やげん堀」
甘いものの後は、辛いもの。というわけで、最後にやってきたのが、七味唐辛子の「やげん堀」。こちらも仲見世をちょっと脇に入ったところにあり、他の店に負けず劣らずの大変な老舗。今から三百余年前、寛永2(1625)年に初代が漢方薬からヒントを得て、七味唐辛子を売り出したのが始まりだと言います。
ところで、皆さん、この「七味唐辛子」をなんと読みますか。今では「しちみとうがらし」が一般的ですよね。しかし江戸の当時は「なないろとうがらし」と呼ばれていたのだそうです。現代では「唐辛子はダイエットに良い!! 」などという理由から、My唐辛子ボトルを持ち歩いて、なんでもかんでも唐辛子をかけてしまうという味覚障害的女子高生の日常が報道されたりしていますが、江戸の時代もなかなかどうして、七味唐辛子はそこそこ消費されていたようです。今でも「かけそば」や「温かいうどん」には欠かせないものですが、江戸の当時は「ざるそば」のつけ汁にも唐辛子を入れたほど。また、江戸の町では買い物に行かなくてもなんでも揃う「歩き売り」が商いの主流で、当然ながら「七味唐辛子売り」という職業も存在していました。面白いのが、この商人の格好。イラストを見ていただくとわかりますが、とんでもなくでかい唐辛子の張りぼてを担いで「とん、とん、とんがらし〜♪」と妙な歌まで歌って売り歩いたのだとか。
中でも江戸っ子に大人気だったのが、こちらのお店。七味唐辛子のことを「やげん堀」と呼んだほど、七味の代名詞になっていたのです。そしてそのご自慢の一品は黒ごま、ミカンの皮、芥子の実、麻の実、山椒の実、そして唐辛子の生と焼き粉、が絶妙にブレンドされています。今でこそ、材料の細粉や焙煎は工場の機械で行っていますが、火入れと呼ばれる油分や湿気をとばす最重要工程においては、熟練職人の経験と勘による微妙な温度調整が必要だと言います。
その技のたまもので、確かにこちらの七味唐辛子、風味が違います。店舗では好みに応じてブレンドもしてくれます。どうしたらよいのかわからぬ初心者には「大辛」「中辛」「小辛」の配合商品がありますので、こちらを買い求めると便利でしょう。ちなみに、私は「中辛」を買ってきました。パッケージを開けた瞬間にぱあっと山椒の香りが広がって、香り豊か。なめてみると辛いのですが、後から甘みが口の中にほんのり残ります。暑い時期には汗を流して暑気払い。毎日の食事に昔ながらの七味唐辛子を利かせてみてはいかがでしょうか。
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 「唐辛子売り」
どうですか? このでっかい張りぼて!! これで「とん、とん、とんがらし〜♪」なんて歌っているのですから、楽しすぎ。さすがお江戸といった感じです。

パッケージを開けた瞬間の山椒と唐辛子の香りがたまりません。麻の実は存在感のある薬味ですが、そこがまた魅力的。辛い中にも甘さが残るので、広くいろんな料理に活用できます。
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