DIARY

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     11月28日  2008
     
水痘ワクチンについて
     多くの人は子供の頃にみずぼうそう(水痘)に感染する。
体中に水泡が出来て、一週間くらいで、
それら水疱が黒っぽいかさぶたになって治癒する。
薬を飲むと治るのが早くなる。

     治った後も、
水痘のウィルス(ヘルペス ゾスター、またはバリセラ ゾスター)は
体の中の神経節で生き延びる。
他のヘルペスウィルスも、人に感染した後、体内にとどまる。
そして、その人の免疫能が落ちたり、体力が低下したときに
活性化してまた症状を発現させる。
これは、
宿主(感染した相手の人間)の免疫が低下したため
封印が解けて暴れ出す。
というよりも、
どうやらウィルスにも
生き残りのための戦略があって、
宿主が死んじゃうと自分たちも死んじゃうので、
宿主がだめになる前に、
宿主の異常を感知して、
宿主が弱っていると判断すると
(判断する脳があるわけではないが、何らかのシグナルで)
宿主から飛び出すために活性化するという説が有力である。
逆に言えば、
体の中のヘルペス族が暴れ出したときは、
彼らが、
「宿主の健康状態が良くないと判断した」ということになる。
これはこれで、
一つの生物学的健康バロメーターと言えると思う。

    どうして、
僕の日記は(日記だけではないか・・・・)
かくも脱線しまくるのだろう?

    ワクチンの話だった。
かくして、人の場合は
年をとって、体が弱ったときに
ヘルペスが顔を出してくるわけである。
単純疱疹は、よく唇のまわりにでる。
これは、多くの場合、日焼けが引き金になるので、
日差しが強いところに外出するときは、
日焼け止めを唇も含めて塗るのが良い。

    問題なのは、帯状疱疹である。
発症当初に、
「何かにかぶれた。」とか
「虫に刺された。」とか勘違いして、治療開始が遅れると、
痛みが取れなくなる。
水痘ウィルスは神経に巣くっていて、
発疹は神経に沿って出るのだが、
皮疹が改善しても、神経痛がずっと続く。
特に高齢者では、
痛みが取れにくい(とれないこともある)方が多い。

     そこで、登場するのが水痘ワクチンである。
元々免疫があるのだが、
免疫は刺激を受けないとだんだんと弱くなってくる。
一般の人は、水痘の免疫刺激を受ける機会が少ないので
水痘の免疫が落ちている可能性がある。

     帯状疱疹が一番発症しない職種は
小児科医や看護師など、
普段に水痘患者と接することが多い職種の人である。
時々患者に接して、免疫刺激を受けるからである。

     というわけで、70才を過ぎたら、
水痘のワクチンを受けておくことは、
損なことではないと思う。

    次に、
まだ水痘に感染していない子供の場合について。
水痘ワクチンは、
水痘ウィルスを生きたまま弱毒化したものである。
つまり、
人工的に水痘に感染させて、
水痘は発病させないで、免疫だけつけるというモノである。
このワクチンを打った場合は、おそらく、
この弱毒化されたウィルスが体内に残ると考えられる。
ということは、帯状疱疹の危険も低いと考えられる。
だから、自然感染を待つよりも、
積極的にワクチンで免疫をつけた方が良いと思う。

     このワクチンの副作用はほとんど無い。
水痘の発症があり得るとされているが、
免疫異常がない限り、発症することはまず無いと思われる。
効果(ワクチンを打って発病しない確率)に関しては、
ワクチンの添付書には95%と書いてあるが、
個人的な印象は85%くらいの印象がある。






     11月26日  2008
     
B型肝炎ワクチンについて
     B型肝炎は、血液や体液を介して感染する。
(といっても、汗や唾液では感染しない)
ということは、
日常生活で感染する機会はほとんど無い。
しかし、反面、
感染力は強いし、少々の消毒では死なない。

ウィルスを持った人が使ったカミソリを共有したり、
指にちょっとした逆むけがある状態で、
手袋をしないで汚染した血液をさわれば、感染の危険がある。
また、セックスで感染する症例にたまに出会う。
相手がウィルスを持っていた場合、
防御しないと感染リスクは高いと思われる。。

     ところで、
昔から日本にはB型肝炎は存在していた。
B型肝炎ウイルスには、A〜Hまでの遺伝子があり、
昔から日本にあったのは
慢性化しないCタイプのウイルスが大半であった。
(人種の移動に伴っていろんな感染症も移動して、
 その地域独特のモノがあることは興味深い。
 例えば、
 長崎に多いT細胞型白血病は、
 出島に来航した人々から感染が広がったと考えられている。)

Cタイプの遺伝子を持つB型肝炎に成人が感染した場合は、
ほとんどの症例で、急性肝炎の症状が出現し、
運悪く、劇症肝炎にならなければ、
そのまま抗体だけが残ってウィルスは消滅してしまう。
つまり治ってしまうのである。

    ところが、最近、
性行為で感染し、
慢性化し易い欧米型のAタイプのウイルスが増加して、
急性肝炎の3割を占めるようになった。

    慢性化してしまうと、肝癌や肝硬変の危険があるし、
肝炎を沈静化させるための薬も、
今の医療では、ずっと飲み続けないといけなくなってしまう。
人生の路線修正が必要になってしまうわけである。

    これは都合が悪い。

    というわけで、
B型肝炎のワクチンは
この先医療関係に進む人だけでなく、
若い人一般に使っておいた方が良い時代になったように思う。




     11月20日  2008
     
おめぇに言われたかねぇ!
     某国の首相が
「医者という人種には常識のない人間が多い。」
と言って、物議をかもしている。

     マスコミは、ここぞとばかりに、
その発言を取り上げて突っ込んでいるが、
そう、何でもかんでも、
言葉尻をとらえて攻撃する姿勢は
やめたらどうだろうか?
そんなことを繰り返していたら、
本当に大事なことを見失うことが多いからだ。
実際に、今の世の中はそうなっていて、
建前しか言えなくて、本当にやりにくいと思う。

確かに
責任のある人が、公に言ってはいけないことは
あることはあるけど、
ちょっとした失言を取り上げて攻撃する習慣をやめないと
建前しか言えなくなってしまう。

そんな社会は、窮屈でしょうがない。

    実際に、本当に医者という人種には
(他の人種がどうなのかは分からないが)
常識がない人が多い。
(きっと、僕もそうなんだと思う。)

だけど、それがどうした!
常識が無くて困ることもあるけど、
常識にとらわれないことが大切なこともあるのだ。
今の崩壊した医療制度をギリギリ支えているのは
「医者の常識のなさ」のおかげもあるのだ。
今の世の中で、
当直明けに仕事をこなす職種が他にあるだろうか?
いろんな重大な責任を山ほど科せられて、
朝から晩まで働いて、
給料は一流企業の同世代よりもずっと少ない。
それもこれも、目の前の患者がいるから、
放り出せないでしていることである。
常識外れの仕事をしているのであるが、
医者の誰も、常識では判断していない。

    たしかに、
ぼんぼんで、自分の言いたいことはだいたい通って
お山の大将で、わがままで・・・・。
ということが言いたいのだろうが、
それでも、多くの医者は、
患者の痛みを解って共有することに腐心し努力している。

    ひるがえって、
そういうおまえ達はどうなんだ?
国民の痛みを解ろうと努力しているようには、
とうてい見えない。

同じ生活をしろとは言わないが、
高級ホテルのバーで、
自分が一晩で使う飲み代よりも
安い税金をばらまいて
(それも、元々我々から徴収した税金であるが・・・。)
あげくに、
「お金が足りないから、税金を上げる」だって?

そんな朝三暮四の政策にだまされるような
猿扱いを国民にすることに違和感を感じないのは、
いったいどういう神経をしてるんだろう?

    そもそも、
今の日本は、
国会議員に二世議員が多すぎる。
議員の世襲制はやめさせるべきである。
苦労して自分の力で這い上がって議員になるのなら良いが、
なんの苦労もなく、親の票田を受け継いで、
「偉そうにしたり、他人を言い負かす」
そういうすべだけを身につけた議員が多すぎる。
 
    もっとも、
そういう議員に票を入れるあほの国民がいるから
もう、すくいがたいのかもしれない。

せめて、親の票田を受け継げないようにすればいいけど、
そんな法律を自分たちが作るわけないし・・・・。

    ところで、
この某国首相の発言に、
医師会が
「信じがたい」
とコメントしたみたいだけど、
まさに日本医師会の上層部は
常識がない医者達の中でも、その精鋭部隊である。

    せめて、
「信じがたい」ではなくて
「おめぇに言われたかねぇ!」
と言って欲しかったなぁ!




     11月19日  2008
     
(久々に)宮古への道(その6)
     まだフルマラソンの距離を走ったことがないので、
いつか走ろうと思うのだが、なかなか「勇気」がでない。
それでも、いつの間にか、
ハーフの距離は走ることが出来るようになった。

     そんなわけで、
来年の2月に行われる河内長野シティーマラソンには
ハーフで出場しようと決めた。

     とはいうものの、
このマラソンは、半分は登りで、半分は下りである。
平地を走るのと違って、足の負担が大きいはず・・・。
大丈夫だろうか??????

     というわけで、
先週末に、「ほぼ」同じコースで滝畑まで走ってきた。
(「ほぼ」というのは、道を間違えてしまったため)

     仕事が終わって、おそい昼ご飯を食べて
何となく出かけたくないような・・・、
出かけたいような・・・・。
と、ダラダラしていたら、
「早く行かないと、日が暮れるわよ!」と言われた。
確かに、最近は日が沈むのが早い、
五時前には暗くなってしまう。
時計は3時。
慌てて出発した。

     高向から日野に抜けて、
石川沿いにずっと上り道である。
車も(もちろん人も)ほとんど通らないし、
紅葉はきれいだし、
横を流れるせせらぎの音を聞きながら、
機嫌良くひたすら登る。

一本道と思っていたが、
何カ所か分かれ道もあった。
それでも、ちゃんと道しるべがあって
意外と簡単に滝畑まで行き着くことができた。
イメージでは、ものすごく遠くだったけど、
案外そうでもなかった。
(しかし、実際は道を間違えて
 かなり大回りをしてダムの南側の夕月橋の脇に出てきた。
 本当はダムの北側に出るはずだった。)

    走っている最中に、
人っ子一人いない山の中なのに、
すぐ後ろから声援された。
びっくりして見たら、
外人の夫婦?がサイクリング(トレーニングかな?)で
追いついてきたのだった。
「日本人でも来ないところに!」と驚いたけど、
「外国には、サイクリングの文化が根付いているから
 こんなこともあるのかなぁ。」
なんて、訳の分からない感慨にふけっているうちに到着した。

    滝畑ダムを夕月橋から半周して、
帰路についた。
帰りは下りで楽だろうと思っていたが、
確かに、スピードは出るし、息も楽だけど、
案外膝の負担は大きくて、膝を痛めるんじゃないかと
こわごわの下りであった。

    機嫌良く、下っているうちに、ふと気がつくと、
だんだん暗くなってきた。
最初は何も考えてなかったが、
よくよく考えてみたら、街灯なんて一本もない。
日が暮れたら、ほぼ間違いなく漆黒の暗闇になりそうである。
(これは、3時に出発した時点で気づくべきことである。)
もし、そうなったら、何とも格好の悪い話である。
(ちなみに、携帯は圏外だった。)

     ここからは、
膝の心配よりは、
闇の心配の方が優先して
がんばって走った。
何とか、日が暮れるまでには、南花台に到着したが、
まだ、走行距離は18kmしかない。
仕方がないので、南花台の外周を走って、
無事に21.1kmを走り終えたら日は暮れていた。
意外と足は元気だったので、少し自信も出てきた。


今度は、フルマラソンの距離に挑戦しないと・・・。
でも、どこを走ろうか?
南花台をぐるぐる回るのもなぁ・・・。




     11月17日  2008

     LDL−コレステロール

     最近テレビのコマーシャルで、
奥さんが旦那に
「LDL−コレステロールが高いのだから、
 お医者さんに行って診てもらわないとだめよ。」
と言うのを
旦那が適当にあしらって、
出かけようと玄関のドアを開けると
そこには、
以前心筋梗塞になったテレビの某アナウンサーが立っていて、
「そうです。ちゃんと医者に行って治療を受けないと
 大変なことになりますよ!」
という製薬会社のコマーシャルが流れている。

     このCMを見るたびに、うんざりしてしまう。
だいたい、
「なんでも医者にふるな。」
と言いたい。

    そういえば、
アロンアルファの説明書には
「過って指をくっつけてしまったら、
医者に行って処置をしてもらうように」とか、
殺虫剤の説明書にも
「間違って人にかけて異常が出たら
医者に受診するように」などと書いてある。

    確かにそうするしかないのだが、
こちらに何も情報提供も無く、なんの断りもなく
勝手にふるのは、失礼だと思うのだが・・・。

だって、実際にそんな患者が来たら、
何が適切な治療なのかは、見当がつかない。
教科書にも書いていない。
中毒センターに問い合わせるか、
メーカーに電話をしないとわからない。

    話がそれてしまった。
実際に、アロンアルファで指をくっつけてしまった患者は、
まだ来たことがないが、
「LDL−コレステロールが高い」と指摘されて
来院する患者さんは多い。

LDL−コレステロールが高くても、
元気で長生きな人はいっぱいいる。

    一般の人(医者も多くはそう思っているようだが・・・)は、
「血液中にコレステロールがたくさんあるということは、
 血液がドロドロで、
 血管にそのコレステロールがヘドロのようにこびりついて
 血管がボロボロになっていく。」
というイメージで考えられているようだ。

    しかし、
心筋梗塞に関しての最近の研究では、

    若年者では、
まず喫煙が一番の(そして必須の)危険因子で、
LDL−コレステロールが高いことと肥満も関与する。

    ところが、高齢者ではそうではない。
LDL−コレステロールが高いことはあまり関与していない。
高齢者の心筋梗塞の特徴は
やせていて、HDL−コレステロールが低くて、高血圧症、糖尿病がある。

    何故そうなるのかは、
今のところはっきりと証明されたモノはないが、
どうやら、LDL−コレステロールそのものが悪玉ではなく
(これは、僕は以前から何度も言っている様に
 LDL−コレステロールは細胞壁の構成成分であったり
 いろんなホルモンの材料であって、
 命に欠かせないものだからである。)
そのLDL−コレステロールが酸化したモノが悪さをするらしい。
だから、
酸化さえしなければLDL−コレステロールが高くても
問題はないのだが、(むしろ高めの方が良い。)
酸化しないようにする方法は今のところわからないから
とりあえず
その酸化の材料であるLDL−コレステロールを下げておくという
ことになっているのである。
(実際は、そこまで深く掘り下げられてないかな?)
    
    しかし、
下げたことのリスク(脳梗塞の増加や癌の増加)は、
一般には語られていない。

    少なくとも、
女性、高齢者、非喫煙者、心筋梗塞の家族歴のない人では、
LDL−コレステロールを薬で下げる必要は無いと思う。

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