DIARY

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    5月30日 2007
    
いいものが悪く、悪いものがいい?
    物事は、見方によっていろいろ変わるものである。
観音様の顔の裏には、般若の顔があるのである。
よく効く薬には、こわぁい副作用があることがあるし、
その「よく効く」という評価自体も、
効くという方向から見ると効くが、
効かないという方向から吟味すると大して役にたたないことがある。
身近な例では、高脂血症の薬である。
「効く」という面から見ると
心筋梗塞や脳梗塞の予防効果がある。
しかし、これは、
もともと、糖尿病や高血圧症があって
そうなるリスクの高い人に関してのデーターである。
「効かない」という面から見ると
はじめから、飲まなくてもそうならない人には、
飲む意味はない。
具体的に言えば、
女性で、高血圧症、糖尿病、虚血性心疾患の既往がなければ、
コレステロールがいくら高くても、
そうなるリスクは高くないので、飲む意味はない。
このような人では、1万人の人が飲んで
やっと一人だけそうなる患者が減る。

     今、流行りのヨーグルトなどの乳製品であるが、
これだって、身体に良くない可能性もあるのだ。
以下は、アメリカ国立環境衛生化学研究所などのグループが
今月発表した研究結果である。
男性57689人、女性73175人を対象に、
1992〜2001年にかけて
乳製品の摂取とパーキンソン病(以下PD)の発病の関連を、
前向きに調べた。
その結果、男性250人、女性138人がPDを発症した。
乳製品の摂取量に応じて、5つのグループに分けて解析が行われた。
解析の結果、乳製品の摂取とPD発症には正の相関が認められた。
乳製品の摂取量が最下位のグループに較べて、
その上の4群ではPD発症リスクは、1.4, 1.4, 1.4, 1.6 (P<0.05)であった。
また、
過去の、乳製品とPDのリスクを検討した研究をメタ解析すると
乳製品の摂取量が多い人では
PDのリスクは中等度以上、上昇することが確認された。
乳製品を非常に多く摂取する人のPDのリスクは
1.6(男性1.8、女性1.3 )であった。

     その逆の話もある。
胃潰瘍や胃癌の元凶として、忌み嫌われているピロリ菌であるが、
この感染がある子供は、
喘息などアレルギー疾患のリスクが少ない。
また、胃癌手術後の再発も少ない。という研究がある。
以前にも書いたけど、
ピロリ菌とは人類発症以来のおつきあいである。
悪いことばかりでもないようだ。

     こうしてみてみると、
ある一面だけ見て、物事を判断するのは、
慎重にした方が良さそうだ。
「あたりまえ」といえば、当たり前の話ではあるが、
日本人は特に(かく言う僕も、まったくその通りで・・・)
何でも、白か黒に分けてしまう傾向が強い様に思う。
たしかに、そうした方が、考えがまとまりやすいのだが・・・。
「少なくとも、2通りの見方をするクセをつけたい。」
と思う今日この頃である。




    5月22日 2007
    
独りよがりは、恐い
    昨日、「はしか」について書いたけど、
自分では、十分に説明できたつもりでいた。
ピノさんに質問されても、
一瞬、「説明してあったはずなのに?」 と思ってしまった。
間違っていたのは僕の方で、
「細胞性免疫が維持されている。」
と一言書いただけで済ませていた。
「だからどうなるのか」という説明がなかったわけである。

    このように、人に説明するのは、とても難しい。
うっかり、業界用語を使ってしまって、
意味不明の説明になったりしてしまうし、
さらに単語の意味することを説明する必要があるのを見落としてしまう。
というわけで、
「細胞性免疫が維持されている。」ということは、
以下のような意味がある。

予防接種後、
はしかに対する免疫グロブリンは約1ヶ月半で半分以下になってしまうが、
リンパ球の記憶は、ブースターがかからなくても、
その後も10年近くは残ると考えられる。
(10年目にはかなり低くなるので、
 10歳前後ではしかに感染する子供もでますが・・・。)
リンパ球の記憶があると、
はしかのウィルスが体内に入っても、
ウィルスが増殖するよりも早く、
リンパ球の攻撃と、速やかな抗体産生が起こるので
発病に至らないというわけである。











    5月21日 2006
   
 「はしか(麻疹)」について
    最近、あちこちで「はしか騒動」がおこっている。
だからどうって事はないのだけれど、
ちゃんとした情報が伝えられないままに、
「気をつけろ!」だとか「ワクチンを打て!」だとかの
指示だけが一人歩きしている。
これでは、なんでだかわからないから、
みんなが不安に思ってしまう。
今回は、「はしか」だから、世の中はパニックになってないが、
これが、SARSだったり新型インフルエンザだと
世間は、パニックになっていることだろう。
こんなときこそ、ちゃんと情報を公表して
正しい対処法を公表・指示すべきなのに、
それが出来てないことに、
マスコミや行政の対応に不満を覚えてしまう。
さらに、
誰もそのことを指摘しないことも不安である。

    てなわけで、
一応、「はしか」についておおざっぱな説明をしたい。

   「はしか」は、麻疹ウィルスが感染することによっておこる。
正式な分類ではないが、麻疹ウィルスには2種類ある。
ワクチン株と野生株である。

ワクチン株は、
人工的にウィルスの病原性や感染性を弱めたウィルスである。
ワクチン株は、
ワクチンを打たないと、感染しないと考えられている。
(ワクチン株を打った人から他の人には感染しない。)
ワクチンを打つと、
ほとんどの人は発病することなく免疫だけ獲得する。
軽い「はしか症状」になる人がいるが、問題になる程度ではない。

それに対して、
野生株は、一般に感染する普通の麻疹ウィルスである。
免疫のない人が野生株に感染すると、
症状は重症になり、一部には肺炎や、
頻度は少ないが脳炎までも起こってしまう。
さらに脳炎では、後遺症が残ってしまうことさえ有る。
しかし、
少しでも免疫が有れば、
重症化することはないし、発病しないことが多い。

 次に「はしかワクチン」についてである。
前述のように、「はしかワクチン」は病原性が弱いので、
免疫原性も弱い。
「はしかワクチン」を打った人すべてに、
同じような免疫が出来るわけではない。
しっかりとした免疫を獲得する人もいれば、
わずかな免疫しか獲得出来ない人もある。
場合によっては免疫が出来ないこともあり得る。
(特殊な場合だが、例えば、輸送中にワクチンの温度が上がってしまって
 失活してしまうことも、昔はあったと思う。)
さて、ここから、
「免疫のブースター」の話が必要になってくる。
ワクチンを打って、わずかでも免疫が出来れば、
その後の社会生活のどこかで「はしか」に感染することがあれば、
発病すること無しに、はしかの免疫はブースター(増強)される。
このことで、
はしかに対する免疫は確固たるものになるのである。

ここで、今起こっている事である。
近年、
一般社会で「はしか」になる人が少なくなってしまった。
そのために、自然にブースターがかからなくなった。
「はしか」の免疫が弱くついたまま、
ブースターがかからないと、免疫は弱くなってしまう。
免疫には、細胞性免疫と、液性免疫がある。
細胞性免疫は、リンパ球の記憶である。
液性免疫とは、
T細胞というリンパ球の指示の元に
B細胞というリンパ球から産生される免疫グロブリンの事である。
感染の当初は、IgMという抗体が産生されるが、
やがて、IgMはIgGという抗体にクラススイッチがおこなわれ、
その後は、その感染に対する対応効率が良くなる。
免疫刺激が無くなると、(感染が終わると)
リンパ球はその対照に対する免疫グロブリンの産生をやめる。
免疫グロブリン(IgG)の寿命は、3〜4週間である。
つまり、液性免疫は、何年も持たない。
しかし、
細胞性免疫は、その後も10年以上は維持されていると思われる。

  具体的に言えば、予防接種後、
はしかに対する免疫グロブリンは約1ヶ月半で半分以下になってしまうが、
リンパ球の記憶は、ブースターがかからなくても、
その後も10年近くは残ると考えられる。
(10年目にはかなり低くなるので、中には10歳前後で
 はしかに感染する子供もでるが・・・。)
リンパ球の記憶があると、
はしかのウィルスが体内に入っても、
ウィルスが増殖するよりも早く、
リンパ球による攻撃と、速やかな抗体産生が起こるので
発病に至らないというわけである。

つまり、今回の出来事は、
はしかのワクチンを打った後に、
ブースターがかからないままに、
10年以上経って(たしか、高校生の間で流行したときいている。)
偶然、野生株に接して発病し、
その野生株が彼等の間で流行したものと思われる。
しかし、
おそらく彼等の細胞性免疫はゼロにはなっていないだろうから
重症化することはないのではないかと、思っている。
(実際はどうなのかは、知らないのだけど・・・。)

     というようなわけで、
今後の対応である。
若い人達が、
「はしかのワクチン」を打つように言われているが、
1.小学校入学までは、急がなくてもいいのではないか?
2.でも打っておいた方が確かだと思う。
3.その場合、どうせ打つなら、
  女性の場合は特に
  「麻疹(はしか)・風疹混合ワクチン」の方がいいと思う。
  なぜなら、風疹も同じ事が言えるからである。
  どうして、「女性の場合は特に」かと言えば、
  風疹は、妊娠の初期に
  (特に3ヶ月以内:これは妊娠だとはじめてわかる時   期。)
感染すると、胎児に風疹症候群といって奇形が出来る可能性が高いからである。
そんな事態は、極力避けたいから、
しっかりと風疹の免疫をつけておいて欲しいのである。

   ちなみに、
医者から臨床症状だけで風疹と診断されても、
その30%は誤診である。
これは、医者が悪いわけではなくて
臨床症状から診断できる限界である。
血液検査をしないと正確な判断は出来ないが、
風疹で、いちいち採血して検査をしないのが普通である。
そんなことをしたら、きっと、
「あの医者は何でも採血して検査する。大げさだ。」
とレッテルを貼られてしまうからである。
それに、一般的な状況では、
それが風疹でもそうでなくても、
妊娠可能な時期までに、
確実に風疹のワクチンを打てばそれで事足りる問題であるからである。

そんなわけで、
「風疹にかかった。」と医者に言われても
風疹かどうかはわからないから、
ワクチンを打つべきである。
本当に風疹にかかった人がワクチンを打っても
発病することなくブースターがかかるだけのことだから。

   ただし、
妊娠可能な女性は、
風疹(MR2種混合も)ワクチンを受ける際には
前述の理由で、
必ず接種1ヶ月前から確実な避妊をして、
接種後も2ヶ月は避妊をする必要がある。







    5月9日 2006
    
お茶を飲みましょう!
    べつに、おねぇちゃんに声をかけているわけではない。
「お茶を飲むと、脳梗塞のリスクが下がるみたい」だからである。
「緑茶を1日5杯以上飲むと
 脳梗塞(こうそく)の死亡リスクが
 男性は42%、女性は62%低下する。」という研究結果を
栗山進一東北大准教授(公衆衛生学)らが発表した。 
栗山准教授らは1994年から
宮城県内の40ー79歳の男女約4万500人を追跡調査した。
その結果、
脳や心臓など循環器系の病気の死亡リスクは、
緑茶を飲む量が多いほど低下した。
1日に1杯未満の人に比べ、
5杯以上飲む人は、男性は22%、女性は31%低下した。
脳血管障害では男性は35%、女性は42%低下し、
特に脳梗塞はリスクが低かった(上記)。 
一方、
がんによる死亡のリスクとは関連はなかった。
紅茶やウーロン茶を飲む量と
これらの病気の死亡リスクに関連はなかった。

ちなみに、この場合の緑茶とは、
日本独特の、番茶・煎茶・抹茶などの事を指し、
お茶の葉を緑のまま使ったお茶のことと理解した方がいいようだ。

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より
茶葉収穫後に加熱処理を加え、
茶葉自身に含まれる酵素による酸化発酵を極力抑えた物を不発酵茶と言う。
現在では日本固有のものと言える。(一部省略)


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