DIARY

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     3月28日 2006
    
 署名のお願い
     たまに日記を書いたら、
「都合のいい署名のお願い」かい!
と怒らないでちょうだい。
    
    過日、知り合いが「おなかが痛い」ということで、
診察の結果、内科ではなく婦人科の病気のようなので
近くの大きな婦人科もある病院に紹介した。
その病院のそばの、別の大きな病院は最近産科をやめてしまって
その病院の産婦人科は、忙しくてパニック状態であったようだ。
彼女は、けんもほろろに、
「婦人科領域の病気ではない。」と言われて、
「何しに来たの?」と言わんばかりにあしらわれた。
しかし、MRIでやはり卵巣に子宮内膜症が見つかった。
ところが、
その結果の説明は、彼女に有無を言わせない態度で
「手術ならこうこう」
「薬ならこうこう」と
一方的にまくし立てられて、
彼女の気持ちや希望には一切耳をかさない態度に、
彼女は怒って帰ってきてしまった。

   その先生は、
僕の息子の出産の時にお世話になった先生で、
とても優しくて、いい治療をする先生だと思っていた。
いや、少なくとも17年前はそうだった。

   何がその先生を変えたのだろう?

   福島県で、前置胎盤剥離のため大出血が起こって
不幸にして亡くなられると言う出来事があった。
帝王切開をした婦人科の医者が逮捕されて裁判にかけられている。
以前にも日記に書いたが、
この事件は本当に運の悪い事が重なって起こったことである。
けっしてこの医者の技量が低いとか、判断が悪いとか言う問題ではない。
「運が悪い」で死んではたまらないけど、
1万人に一人起こるか起こらないかの事を心配して、
常に万全の体制を取れるのならそれでいいが、現実はそうではない。
医者が何人もいて、輸血も十分に確保できる状態を
常に確保できる様にするには、
それなりの行政のバックアップがなければ出来るわけがない。
裁判にかけられるべきは、この医者ではなくて、
そのような体制しかとれない状況を作って、「金がない」と言って
医療制度をどんどん悪くしている国会議員である。
 
    この事件以降、
産科の医者はボランティアをやめたのである。
つけをまわされた残りの産科の医者は、
おそろしく忙しくなって、身も心もすり減らしている状態である。

    これは、氷山の一角で、小児科もそうだが、
内科だって、救急を診る病院はどんどん減っていっている。
病院が減っているのではなくて、
当直を拒む医者が増えているからである。
後、数年のうちに、事態はもっと悪くなるだろう。
今までは、多くの医者は「おかしい」と思いつつも、
それでも、「患者が困るから」と我慢していた。
目の前に困っている患者がいれば、
少々の事は我慢してやって来ていたが、
挙げ句に逮捕されて裁判にかけられては、たまったものではない。
それも、「大きな落ち度がないのに」である。
この先も、医者は
バカらしくて、次々にボランティアをやめていくだろう。

    そして、
さらに事態を悪くする法案が出来つつある。

    そこで、
          □■ 署名のお願い ■□
以下はコピーです。

 
厚生労働省が「診療行為に関連した死亡の死因究明等のあり方に関する課題と
検討の方向性」に対して、パブリックコメントを募集しています。

 現場からの医療改革推進協議会(http://expres.umin.jp/mission/genba.html )
は、ご賛同いただける皆様の署名とともに、これに対する意見を提出することを
予定しています。

 この意見にご賛同いただけましたら、署名をお送り下さいますよう、お願い申
し上げます。

■「現場からの医療改革推進協議会」の意見■
http://expres.umin.jp/genba/comment.html

■署名方法■
 下記のいずれかの方法で、4月13日(金)までに、末尾の署名送信票をお送
り下さい。医療関係者以外の方の署名も歓迎です。
●e-mail kami@ims.u-tokyo.ac.jp
●Fax 03-6409-2069
●郵便 〒108-8639 東京都港区白金台4-6-1
東京大学医科学研究所
探索医療ヒューマンネットワークシステム部門 内
現場からの医療改革推進協議会 事務局 宛

 一人でも多くの声を制度設計の場に届けたいと考えています。
 ご協力の程、よろしくお願い致します。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

上 昌広 (かみ まさひろ)、医師
現場からの医療改革推進協議会 事務局長
東京大学医科学研究所
探索医療ヒューマンネットワークシステム部門 助教授
e-mail: kami@ims.u-tokyo.ac.jp
Tel: 03-6409-2068 (直通)、Fax: 03-6409-2069

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

■署名送信票■

「現場からの医療改革推進協議会」事務局行き
〒108-8639 東京都港区白金台4-6-1
Fax: 03-6409-2069
e-mail: kami@ims.u-tokyo.ac.jp

 「診療行為に関連した死亡の死因究明等のあり方に関する課題と検討の方向性」
に関する「現場からの医療改革推進協議会」の意見に賛同いたします。


お名前:
ご職業:
御社・団体名:
Email:
ご意見等:



宜しくお願いします。

もちろん僕は、もう済ませている。





      3月23日 2006
      
タミフル
      タミフルの薬害は、以前から言っていた。
まさにそのままの展開になってきている。
だからといって、
そうなったことを自慢したい気分にはとてもなれない。

      何回やっても、懲りることなく
同じ薬害を起こしてしまう厚労省と製薬企業には、
今さら期待はしていない。
きっとこの先も同じ事を繰り返すに違いない。

      彼等に同じ事を繰り返させないようにするには、
外部監査が必要なのだと思う。
それこそ、総理大臣の一言が必要なのだが・・・。
もっとも、そう言う経緯で出来た監査機関は、
厚労省と製薬企業の息が
たっぷりとかかった人間で構成されたりするかもしれないから
実績のある民間のNPO(例えば、JIPとかTIP)が一番良いと思うけど・・・。

     医師会も、本当に情けない。
まぁ、自民党の外部団体みたいなもんだから期待できないけど・・・。
せめて、こうなる前に、
「タミフルは使いません。」宣言
でもしてりゃかっこいいのに・・・。
かくいう僕も、医師会にそう言えって進言しなかった責任はあるけど・・・。
でも、いい訳だけど、
そんな進言をしても、袋だたきにあうだけで、
聞き入れられるわけはないのだけど・・・。
もっとも、そういう事の繰り返しで、
聞き入れられる土壌が出来るのだろうけど、
そんなにがんばるほど、医師会を愛してないからしょうがない。

    でも、「タミフル使いません」って言う医者が
なんでこんなに少なかったのだろうか?
情けない話である。

     情けないついでに・・・、

昨日、製薬会社の担当の人が顔色を変えて来院した。
「先生、申し訳ありません。リレンザが底を突きました。」
その担当の人に責任があるわけでもないし、
しょうがない話である。

しかし、こういう報道がなされると、
すぐにリレンザを買い占める医療機関がいるわけである。
どこの病院か知らないが、
きっと、昨日まではタミフルを買い占めていたのだろう。
本当に情けない!
そんな奴らも、表向きは「立派な先生」なのである。
見た目では、絶対にわからない。
きっと、今から1週間後にも
リレンザをとぎれなく出しているところが
そうなのだと思う。
これは、僕には、確認しようがないことだけど・・・。




      3月 6日 2006
      
新型インフルエンザ
      4日に内科学会の講演会があって、
新型インフルエンザに関する情報が入ったので、
少しお披露目しようと思う。

今世界的な脅威となっている新型インフルエンザの筆頭は
H5N1というタイプのものである。
これが意味するものは、以下のようなことである。




  上図がインフルエンザウィルスの簡単な構造である。
ウィルス表面には、
「ヘムアグルチニン」という、細胞にくっつくいて感染する部分と
「ノイラミニダーゼ」という、くっついた細胞で増殖した後、
他の細胞に感染するために、
感染細胞から離脱するために使われる部分がある。
(今使われている、
 タミフルやリレンザといった抗インフルエンザ薬は、
 このノイラミニダーゼを阻害して、
 感染細胞からインフルエンザウィルスが離脱できないようにして
 新たに別の細胞に感染できない様にすることで
 効果を上げる薬である。)


ヘムアグルチニンに15種類
ノイラミニダーゼに9種類の型があり、
理論的には 15x9=135 種類のウィルスの型が存在可能である。
今世間で流行っているのは。H3N2である。


人類に脅威をもたらして、
世界的に蔓延するようなインフルエンザが
文献に記載されたのは、スペイン風邪(H1N1)からである。

発端は、(大正7年)1918年3月頃、
第一次世界大戦の最中にあったアメリカ軍の兵営と考えられている。
発生するとすぐに、戦場で蔓延した。
人間同士の交流の密接さ、衛生状態の悪さ、栄養状態の悪さ
これら感染蔓延の好条件下で、
激しい流行と被害を引き起こした。
戦場は格好の繁殖地だったわけである。

4月にはフランス全土を覆い、まもなくスペインへと拡がる。
6月には、欧州大陸から英国へと渡り猛威を振るった。

その後、
インフルエンザウィルスのタイプは、
アジア風邪(H2N2)、を経て、
今、流行っているホンコン風邪(H3N2)となっている状況である。
      



今人類が新型インフルエンザに対しておかれている状況は、
「フェーズ4」と判断されている。
(ピンぼけ写真ですいません!
 会場が暗くて、200mmの望遠でフラッシュをたかないで
 三脚無しでとったら、手ぶれ防止機能があっても
 なかなか・・・・。) (言い訳です!)



現時点での対策は、
以下の図のようなことになる。
黄色の部分がフェーズ4である。





インフルエンザウィルスの宿主は、人以外にもたくさんいる。
今のところ、人類にはH1,H2,H3が感染しているが、
将来、ウィルスが変異して、
さらに広がる可能性は、まだまだあるわけである。




渡り鳥が媒体となってインフルエンザウィルスを世界中に広げる可能性は、
かなり確からしくなってきている。
シベリアの北部は世界中の渡り鳥が、
共通に接触する場所であり、
ここで渡り鳥同士の感染が起こっていると考えられている。



だけど、
渡り鳥に罪があるわけじゃないし、
彼等も多くがインフルエンザで命を落としているのだと思う。
シベリアは寒いし・・・。




だけど、
僕は不思議でしょうがない。
本当に新型インフルエンザって脅威なんだろうか?
専門家(僕は、ちょっとだけ専門家で、僕なんかよりはるかに専門家)の先生達は、
「新型インフルエンザは、人類が経験していないインフルエンザだから、
 人類には免疫が無く、感染すると重症化する。」と言う。

確かに、免疫がないのだから重症化するかもしれないけど、
「そんなにいっぱい死ぬの?」

その理屈で言えば、
生まれて初めてインフルエンザにかかる小児は、
たくさん死ぬはずだけど、
実際はほとんど死なない。

死亡率が高いのは、環境や栄養状態も悪かった昔だったからでは?
それに、
ウィルスが人に対して感染性を高めたときに、
果たして強病原性を維持したままでいるだろうか?

H5N1のインフルエンザの死亡例は、全部肺炎である。
片側の肺炎は、救命されているが、
両側肺炎の場合には死亡率が高い。
H5N1のインフルエンザで肺炎が起こるのは、
肺の末梢の肺胞に、
このウィルスのリセプターがあるからなのだそうだ。
タミフルは効果がないことが確認されている。
リレンザは、
吸入できれば効果がある可能性があるが
僕は、報告例をまだ確認していない。

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