DIARY

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    2月28日 2007
    
順番がおかしくないか?
    今年もまた、インフルエンザのシーズンがきた。
そして、今年もまた、タミフルを飲んだ後に
異常行動の結果、不幸な転機をとった症例報告が出ている。
昨年11月に、厚労省は、
「インフルエンザでタミフルを飲んだあと異常行動があった場合と
 インフルエンザでタミフルを飲まなかった場合の異常行動で
 それが起こる頻度に差がなかった。
 したがって、マンションから飛び降りたり、トラックに突っ込んでいったのは、
 タミフルによる副作用とは言えない。」
という報告をしている。
(たしか、僕の記憶では、前者が11%台、後者が10%台だったと思う。
 これって、異常に高い確率だと思うのだが・・・。)

しかし、
異常行動の内容に踏み込んで較べてないのではないか?
タミフルを飲まなかった場合の異常行動で、
死ぬかもしれないような異常行動があったのだろうか?
どう考えても、
タミフルが一般に使用されるようになってから、
このような痛ましい事故が起こっている。
それまでのインフルエンザ脳症で、
「飛び降り」や「飛び込み」の報告はなかったはずである。
それに、
そのような事故の発生時間も考慮されていない。
タミフルを飲んで、数時間以内に起こっていることが多い。
その時間帯に限って較べてみれば、差が出るはずである。
厚労省の結論は、
「差がない。」という結論が先にあって、
比較検討したデーターとしか思えない。

 そして、そんなことよりも何よりも、
いったんこの異常が出た場合は、
不幸な転機をとる可能性が高いのだから
まず、タミフルを中止することが先決だと思うんだが、
どうしてそういう選択が出てこないのだろう?
マスコミも、一向にそのことにはふれてこない。
なにか恣意的なものが裏にあるのだろうか?
トリインフルエンザに対する備蓄で
便宜を図ってもらっている製薬メーカーに、恩義があるのだろうか?

そもそも、100歩譲って、
タミフルを使っても使わなくても異常行動に差が出ないということは
インフルエンザ脳症がタミフルで抑制できても、
より不幸なタミフルの副作用が出ているということか、
タミフルが効かなくて、
インフルエンザ脳症が同じくらい出ているということである。
あるいは、その両者が合い混ざった出来事かもしれないが・・・。
いずれにしても、
タミフルを使うことの一番大切な意味はかなり希薄だと言うことである。
(一部、インフルエンザ肺炎などには効果があるかもしれないが・・・。)

なんで、こんな大切なことに関して、
本来自然に出るべき考えが出てこないのだろう。
ふと、「僕の頭のほうがおかしいのかな?」
と心配になってしまう。
たとえ、
厚労省が(今までどおりの間違いを繰り返して)そういう判断をしなくても、
医者レベルでも、その判断は出来ると思うのだが・・・。

    いまの世の中、
おかしな事が大手を振ってまかり通っている事が
本当に多くて、とても心配である。
医学的なことは、だいたいのことはインチキが見破れるけど、
他の分野は、そんなに多くはわからない。
でも、医学の世界だけでも山ほど有るのだから、
おしてしるべしである。

風邪薬が風邪に効くといって売られているし。
医者も平気で風邪薬を出すし、
風邪薬を飲んでる医者もいっぱいいるし、
コンドロイチンやら軟骨やらが関節痛に効くといわれて売られているし、
訳のわからんビタミンが氾濫しているし、
正露丸はいつまで経っても発売禁止にならないし、
さらには、強力な下痢止めまで薬局で売られているみたいだし、
酸素が出るエアコンを一流企業が平気で発売しているし、
イラクやアフガニスタンでアメリカが戦争したことは、
誰も「ホロコーストに匹敵する犯罪だ。」とは言わないし、
世の中、狂ってる!!!


     昨日の日記の続き 
(は、今日の日記なんだけど・・・。)
カンピロの感染症では、下痢だけが問題にされているけど、
もう一つ怖いことが起こる可能性がある。
「Fisher症候群」と言われているのだが、
カンピロの下痢が治った後、数週間して、
「Guillain-Barre症候群」という、
神経麻痺が発症することがあるのである。
僕も1例経験した。
この方は、早い内に受診されたので、
(「ふらつき」で受診されたが、
 その前にカンピロによる下痢があったので、運良くピンと来たが、
 そのことを知らないと、処置が遅れた可能性が高かった。)
γグロブリンなどの注射で、大きな機能障害を残さないで退院できたが、
ひどいときには、
呼吸筋の麻痺まで進展して、人工呼吸器につながないといけなくなる。
よくなっても、機能障害が残ることもある。
1回の食中毒で
人生がころっと変わってしまう可能性があるのである。
だから、
僕はユッケが好きだけど、怖くて食べられない。





    2月27日 2007
    
だいぶ空いてしまった言い訳・・・
    自称「ツブクリ」(つぶれそうなクリニックの略)の我が医院なのだが、
今月は、インフルエンザやらナンやらが多くて、
日記を書くヒマも気力も無かった。

「これで、ツブクリ解消か?」と思ってみたが、
どう考えても「はやりの風邪」が流行っただけのこと。
大勢には影響ないようで、
我が家の財務大臣からは、
「医師年金を解約したわよ。」と言われてしまった。
まぁ、これで当分は食いつなげそうだし、
なんとか、なるかなぁ!
それに、怠け者の僕としては、
毎日こんなに忙しいのは、ちょっと、しんどい。


    そういえば、今日、
少し前に報告していた食中毒の疑いの人達の
検査結果を持って、
正式な食中毒報告書を書くようにと、保健所の人がやってきた。
その人達は、カンピロバクターが陽性であった。
この一年、
カンピロバクターが原因の下痢がずいぶん多くなった印象がある。
保健所の人に聞くと、「鳥肉はまず全部汚染がある。」
「関西地区では、牛の肉も、たとえ生食用と表示があっても
 ちゃんと基準に合った解体はされてないので、 とても危険。」
なのだそうだ。
和歌山の一部では、基準にあった解体がされているらしいが、
そのほとんどが、地元で消費されてしまって、
こちらには流通していないとのことであった。

というわけで、
焼き肉屋のユッケや生レバーなど生の肉は、食べてはいけない。
鳥のたたきなどは、いわずもがなである。



    2月14日 2007
    
古くからの付き合いだったのね!
    僕の細胞のミトコンドリアのDNAは、僕の母と同じものである。
さらに、僕の母の細胞のミトコンドリアのDNAは、母の母と同じものである。
つまり、
細胞のミトコンドリアのDNAは、
母方をたどっていく限りは同じものなのである。
何百年に1回くらいの突然変異で変わる以外は、
おなじDNA を母から受け継いできているわけである。
つまり、
ミトコンドリアのDNAは、遠い母方の祖先と同じということになる。
世界中のいろんな人種のミトコンドリアのDNAを較べて、
突然変異の確率を計算して、その母方を推測すると、
5万8千年前の東アフリカの「イブ」に行き着く。
どうやら、ヒトは、そこから世界に広がっていったらしい。

    この度、
日米欧のチームが、胃に感染するピロリ菌の遺伝子を解析した。  
チームは6年がかりで
世界51民族、769人の胃からピロリ菌を集め、
菌の遺伝子の違いを分析した。
その結果、
遺伝子は民族ごとに異なり、
アフリカや欧州、アジアなど地域ごとに6種類に大別されるほか、
「人類が最初に誕生したとされる東アフリカを起源に変化してきた」
と考えるのが最も合理的との結論を得た。
人類がアフリカから各地に移住し始めたのは約5万年前とされているが、
遺伝子の変化を逆算し、
最初の感染時期はさらに約8000年以上さかのぼるとみられる。
つまり、「イブ」の頃である。

人類が発症したときから、
人々はピロリ菌に感染して、胃炎に悩まされてきたということである。

こうしてみると、
なんだか、6万年越しの感染を、除菌するのも、少し気が引ける。



     2月 6日  2007
     
やっと、今か!
     高コレステロール血症の判断基準値について、
日本動脈硬化学会は、動脈硬化性疾患の予防や治療の指標から
従来の「総コレステロール」をはずし、
代わりに「悪玉コレステロール」といわれるLDLコレステロールを
判断基準とする新しい診療ガイドラインを策定した。

     もう何年も前から、分かり切っていたことである。
僕のところでは、もう何年も前から(それも4年や5年のレベルではない)
市民検診以外では総コレステロールは測定していない。
LDLコレステロールが測定できるのだから、
測っても意味がないからである。
しかし、世間一般では、総コレステロールを測定して、
その値を元に、
「高コレステロール血症があるから治療が必要だ」とか
ナンだとか議論されるものだから、
僕だけが特別の変わり者のように肩身の狭い思いをしてきた。

     総コレステロール値は、おおざっぱに言えば、
「悪玉コレステロール」+「善玉コレステロール」+「中性脂肪の5分の一」
である。
逆に言えば、総コレステロール値が高くても
善玉コレステロールが高い事が原因であることもしばしばあるのである。
そのようなヒトが、
コレステロール低下薬を飲まされていることにしばしば遭遇してきた。

僕にとっては、動脈硬化学会は、
どうでもいい学会であったし、
今回の決定で何か変わることもないが、
まぁ、すこしは医療がやりやすくなることだろう。
しかし、たったこれだけのことを変えるのに、
何年も費やさないといけないのはどうしてなんだろう?

さらに、言及したいことは
「LDLコレステロール」のことを
「悪玉コレステロール」と呼ぶ事に対する違和感である。
どうしても抵抗がある。
LDLコレステロールは、
体の細胞一個一個の細胞壁の重要な構成成分であるし、
ホルモンの大切な材料である。
これがなければ、ヒトは生きていけないし
低下すれば様々な病気のリスクが高まる。
本当に失礼な話である。

「LDLコレステロールが140mg/dl以上は、高脂血症で治療が必要」
なんて、まだ言っているのだから、
これが改まるのは、まだ10年先の話なんだろうか?
日本人は、
LDLコレステロールが140〜160mg/dlのヒトが一番死亡率が低い。
まして、
女性で、高血圧症・糖尿病・虚血性心疾患の既往や家族歴がない場合は、
LDLコレステロールがどんなに高くても治療する必要性はない。
このことは、心筋梗塞の多い欧米でも証明されていることである。

確かに、医者にとっては、
こんな学会のお墨付きの錦の御旗が有れば、
そういって患者を脅かして、
通院させて薬を出して、お金儲けが出来るから
ありがたい話であるし、製薬企業も潤う。

学会の偉い先生方は、
製薬企業からお金をもらって、いろんな研究を行う。
研究にはお金がかかるが、
そんなお金は、自前では都合つけられないし、
政府は助成金なんて雀の涙しか出さないから、
しょうがないのだが・・・。
そんなわけで、
その偉い先生方が、
製薬企業にとって不利な論文を書くのは、
ちょっと書きづらいに違いない!のである。
(これは、高脂血症だけではなく高血圧症でも言えることである。)
そんなわけで、
学会で、異論を唱えるヒトは、いてもわずかだし、
いれば異端児扱いである。

かくして、本当の医学とは少しはずれた事がまかり通るのである。
そして、多くの医者は、
(知っている医者は、少しばかりの良心の呵責の元に、)
(知らない医者は、大きな顔をして、)
コレステロールを下げることになる。

必要以上の医療費削減のつけは、医療崩壊だけではないのである。

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