DIARY

2月28日 2003
   インフルエンザ
   国立感染症研究所は2月21日、2003年第6週(2月3日〜2月9日)の
感染症発生動向調査を発信した。
インフルエンザの定点当たりの患者報告数(医療機関当たりの平均患者数)は29.03で、
前週より5.99少なくなり、2週続けての減少となった。
今シーズン検出されたウイルスは、A香港型(H3N2)が大半を占め、残りはB型となっている。
とんでもハップンである。
B型インフルエンザが南花台では猛威をふるっている。
ややこしいことに,「おなかの風邪症状」で発症することもあって,
今流行っているおなかの風邪と区別が付かない。
細かく言えば,いくつか違うかもしれないことはあるが,
確定的に違うことがないので,調べるしか方法がない。
感染症研究所の報告は,タイムラグがありすぎて当てに出来ない。
検査キットを手に入れるのに,毎週卸屋さんに泣きを入れている状態である。
今週は,明日の検査キットがない。
昨日はいったばかりなのに,もう今日で無くなってしまった。
もう少しすると,「B型が流行っています。」と発表するのだろうか?
それとも,南花台だけなのだろうか?
そういえば,2年前に出現した鳥のインフルエンザがまた香港で出てきた。
 世界保健機関(WHO)は2月20日、
“鳥のインフルエンザ”として知られるA(H5N1)型インフルエンザウイルスを
香港に住む1家族二人から検出したと発表した。
ウイルスが検出されたのは33歳の父親と9歳の少年。
この9歳の少年と母親については、病状が回復しているが、
父親と8歳の少女は既に死亡している。
この家族は本年1月から2月にかけて中国福建省に出かけている。

 A(H5N1)型のインフルエンザウイルスが
ヒトで初めて見つかったのは1997年の香港で、
当時は18人から検出され、うち6人が死亡している。
それまではニワトリやアヒルなどの鳥類でしか確認されていなかった。
なお、ヒトの間で流行するAソ連型はA(H1N1)型、また、A香港型はA(H3N2)型であり、
A(H5N1)とは異なるタイプのインフルエンザウイルス。

 現在のところ、この家族以外からの検出報告はない。
また、香港当局によれば、
インフルエンザの異常な増加は過去数週間にわたり認められていないという。

めっちゃ不気味! いつか,人類は,こいつの流行にさらされて,
死亡者が多発する事態になるのだろうか?
それまでに打てる手は,有効なワクチンの開発と
何種類かの抗インフルエンザ薬の開発だろう。

2月26日 2003
   ゲゲッ! そんなことがあったの?
   最近経験した驚くべき怖い話。
ある男性が,献血をして,しばらくしてから日赤から通知をもらった。
内容は,「慢性B型肝炎があるので献血は出来ない。
近くの医療機関を受診するように。」とのことだった。
来院した時に,彼は,「もう25年くらい前に,献血に行ってB型肝炎陽性といわれた。
しかし,その後も毎年のように献血をしているが,何も言ってこない。」と言った。



そ,そんなあほな!



もしそうなら,B型肝炎のウィルス入りの血液が,
何年も輸血されていたことになる。
早速,間違いでないことの確認のために,彼の血液検査をした。
HBs抗原(B型肝炎ウィルスの細胞壁の成分。これが陽性と言うことは,
ウィルスがいるということになる。)は,ハイタイター(強陽性)だった。



めっちゃ,感染りますやん!




びっくりして,日赤血液センターに電話を入れた。
対応してくれた先生は,過去にさかのぼってデーターを調べてくれた。
「平成12年4月からHBs抗原陽性になってますね。この次の8月も陽性です。」
(ゲッ,年に2回も献血してるのかい!)
「それ以前は,陰性になっています。」との回答だった。
「だけど,25年前から陽性だったのに,その間陰性っておかしいのではないですか?」
以後,専門的やりとりなので省略。
要約すると,「わかんないけど,とにかく陰性だったら使うし,陽性だったら廃棄する。
当然,陽性になるまでの間の,彼がしてくれた献血の血液は使用した。」
のだそうな。

 何とも釈然としないので,警察病院の枡田先生に聞いてみた。
「昔は,HBs抗原でチェックしていたので,まれにそういう
(HBs抗原陰性だが,実はウィルスがいる。)症例があって,
輸血後肝炎が発生する。
今は,B型肝炎ウィルスのDNAを,
核酸増幅法という感度の極めて高い方法で調べるので,
そんなことはない。」
とのことだった。

 だけど,それって,ものすごく最近の話だよね。
他のウィルスも全部検査している訳じゃないだろうし,どこまでやっているんだろう?
エイズは?
C型肝炎ウィルスは?
成人T細胞性白血病ウィルスは?
これらだけでも全部核酸増幅法でチャックしたら,検査代だけですごいコストだ。





「自己輸血が出来たら,絶対そうすべきだ。」



と改めて強く思った。
みんながしてるから安全だというのは嘘!
一般の常識は,(医者の常識でさえ)根拠のない怖いものがたくさんある。
気をつけましょう!
  

2月25日 2003
     劣化ウラン弾
     今日は、医師会の会合があって、うちに帰ったら、11時をまわっていた。
ちょうど、テレビがイラクの湾岸戦争後の惨状を伝えていた。
「湾岸戦争後に、白血病や脳腫瘍などの悪性新生物の発症が倍以上になった。」という内容だった。
それも子供に多発していた。
劣化ウラン弾を使ったことが一番疑わしい原因と考えられているが、
アメリカは因果関係はないと突っぱねている。
ホントにむかつく国だ。
だったら、ニューヨーク近郊の農園に落としてみろ!
そして、ブッシュにそこで採れた農作物を食わせてみろ!
だいたい、「核は持つな!」とよその国に言う前に自分が廃棄しろ!
どう考えても、劣化ウラン弾は、アメリカが使うなといっている

無差別大量殺戮兵器
のひとつだろ!
小泉スネちゃま!お願いだから、戦争に荷担しないでね。
目先のことなんかにとらわれちゃだめだよ!
人類の歴史に、
「あほのブッシュと一緒になって戦争をした国」
として残っちゃうんだよ!
やるんなら、007かゴルゴ13をやとってフセインの暗殺にしてよ!
ついでに、もじゃもじゃ頭の国民服着た人もね!

2月24日 2003
    モラトーリアム
    辞書では,支払い猶予なので,今回の趣旨で使うのは,
適切な言葉ではないかもしれないが・・・。
若い世代の人が,将来の進路を決めるのに,
高校生ですでに決めないといけない。
職種によっては,中学の頃から
ある程度決めてないといけないこともある。
昔みたいに,人生短くないのだから,
もっとゆっくり決められないのだろうか?
だいたい,学生生活をしていて,
社会のほんの一部さえも,ろくにかいま見ることもないまま,
人生の進路が決められるはずもない。
もう少し待ってやれるシステムはないのだろうか?
せめて,20才くらいまで待ってもいいように思うが・・・。
それが出来ないなら,
早い内に,中学生くらいから,
いろんな職種の人と話したり,
いろんな職種に丁稚奉公したり出来るシステムは出来ないのだろうか?
僕のところなど,丁稚が来たらかわいがってやるのに・・・。
(たとえそれが,可愛い女の子でなくても・・・。)

2月22日 2003
     家事免除の日
    もう、日付は変わって23日だけど、まだ起きているから日記としては22日と言うことで。
毎週、土曜日の晩飯は、「臭いもの!」と決まっている。
人と接する仕事柄、普段はニンニクは出来るだけ控えているが、
土曜日はその反動か、やたらとニンニクが食いたくなる。
今日は、なんだか、僕が晩飯を作る事にされてしまった。
「臭いもので何を食べようか?」と考えてみると、あんまりレパートリーがない。
ペペロンチーノ系のスパゲッティ、餃子(買った方が美味いしラクチン)、焼き肉系、ラーメン(作れない)。
ぼんやり考えているうちに、ふと、以前食べたカツサンドを思い出した。
富田林のレストランで、今は営業していないプルニュエというレストランだ。
立地条件が悪く、駐車場がとても停めにくかったのでつぶれてしまったみたいだけど、
ここの、カツサンドとカツライスは絶品だった。
味を思い出しながら、デミグラスソースの味を作って、家内に手伝ってもらってトンカツを揚げた。
(家内は、これで、僕にカツの揚げ方を教え込んだので、以後もやらせようともくろんでいるみたいだ・・・。)
塩胡椒をして、おろしたニンニクをすり込んで、小麦粉をまぶして、卵にひたして、パン粉をつけて揚げるのだ。
油は、ロースカツのラードと紅花油をまぜて揚げた。
デミグラスソースは、「ハインツ、シェフソシエのビーフストロガノフ」にシャンタン、赤ワイン、レモン汁、ニンニクを加えた。
作っているうちに、カツライスのことも思い出して、ご飯に、ロースカツをデミグラスソースにくぐらせて乗せてみた。
上から、デミグラスソースをかけて食べると、あのレストランの味を思い出した。
なかなか美味かった。(自画自賛!)
カツサンドは、同じように揚げたカツをデミグラスソースをくぐらせて、
マーガリンを塗ったパンにはさんでトースト後、
キャベツ、レタス、マスタードの香りのするかいわれ大根状の野菜をはさんだ。
僕個人は、ヘレカツよりロースカツの方が美味かった。
数時間台所に立っているのは、けっこうしんどいものだと悟った。
最近は、高齢の女性に、毎日家事をするのはしんどいから、
週に一日くらいは、家事を免除してもらうように宣言することを薦めている。

2月21日 2003
    おせち料理
    今月の糖尿病の人達の検査データーは,2つの傾向がある。
(糖尿病の検査で,一番重視されるのがHbA1cという指標である。
HbA1cは,ヘモグロビン(血液の赤い色素)の内の糖化されたヘモグロビンである。
大体1〜2ヶ月前の血糖の状態でその産生される量が決まる。
血糖は,そのときの食事状態などで,大きく変動するために,
その人の血糖のコントロール状態は,HbA1cの方がより確かな判断材料になる。)
2月初めに調べたHbA1cは,
ちょうど年末から正月あたりの血糖のコントロール状況を反映していることになる。
予想では,その時期悪くなると思っているのだが,
中に,良くなる人がいるのである。
お酒をあまり飲まない人で,おせち料理を食べる人である。
考えてみると,おせち料理って美味くない。
カロリーもそんな高くない。
でも,正月はそればっかし食べないといけない。
というより,それしかない。
というわけで,血糖のコントロールが良くなるわけである。
しかし,そんなおせち料理もだんだん見かけなくなってきた。
そのうち日本からなくなっていくのだろう。
もう,うちの子供達の世代は,作らないし,食べない。
僕も,好きではないけど,無くなっていく文化にはちょっぴり未練がある。
でも,やっぱり,おせちを食べるのは嫌だなぁ・・・。

2月20日 2003
    医療コーディネーター
    今日、ニュースステーションで医療コーディネーターの事をやっていた。
医者が本来すべき事をしていないから、そういう職業が存在可能なわけだ。
患者の希望をよく聞かない。難しい業界用語を使う。丁寧に説明しない。
どうも耳が痛い話だ。
しかし、医者に時間がないのも理解してもらいたい。
医者だって、患者に十分に納得してもらいたいのだ。
出来るだけ努力はしているのだ。
まず、今の医療制度では、全部の患者に十分時間をとると、経営が成り立たない。
今の医療制度は、ものには金を出すが、ソフトには金を出さない。
例えば、僕は、ただの風邪の患者には薬を出さない方針だ。
だけど、その患者に、薬が要らないことを十分に納得してもらうには、
それ相応の説明をしないと、納得して安心して帰ってもらえない。
黙って、薬を出すと、処方箋料として数百円もらえる。
逆に、薬を出さないと一円にもならない。
さんざん苦労して説明して、一円にもならないことが繰り返されると、
時々、うんざりするときがある。
良心的にやればやるほど、割に合わないのだ。
いっそ、時間制にしてもらいたいと思うが、そうはならないだろう。
今日の番組の話に戻るが、
40才の乳ガンの患者で、肺転移が見つかって女性ホルモンを抑える薬を使っている。
その状態で、子供がほしいと考えている。
コーディネーターは、子供が産めるか主治医と3人で会談する。
主治医は、女性ホルモンを抑える薬をやめたら可能だと答えていた。
その結果、、「めでたし、めでたし!」みたいにして終わった。
ちょっと、おかしいぞ!
この女性は、その薬を、近い将来やめて子供を作るのか?
乳ガンが、肺に転移していると言うことは、かなりやばいことだ。
他のどこかにも、転移している可能性がある。
かなり慎重に薬をやめないと、どこかで再発するだろう。
勿論、患者が望むなら、それもいい。
だけど、生まれてきた子は、母親無しで生きないといけない。
ダンナは、片親で、子供を育てなければいけない。
乳ガンは、ホルモン依存性の腫瘍である事が多い。
だから、女性ホルモンを抑える薬を使うということは、
女性ホルモンを抑えることで、乳ガンの進展を抑えて、乳ガンと共存している状態なのだ。
その患者は、薬をやめたら再発のリスクがかなり高い。
(正確に何%かは言えないが、どんなに少なく見積もっても80%以上だろう。)
そのことを説明を受けて、理解納得したのだろうか。
安易に、ただ患者の希望をかなえるのがベストとは限らない。
勿論、十分に説明した上で、患者が納得して示した希望なら、出来るだけ努力はすべきだろうけど。
「死なしてくれ。」と言われて、「死なしてあげたら」殺人罪なのだ。
随分一方的な報道のように思ったけど、それだけ医者の評判が悪いと言うことなんだな・・・。

2月18日 2003
    根性なし!
    イラクに人間の盾となっていく人達がいる。
爆撃が始まっても,イラクに残ると言っている人もいる。
僕なんか,偉そうに「戦争反対」と唱えても,そんな根性は今のところない。
それどころか,反戦のデモにさえ行かなかった。
(そんなデモがあることさえ知らなかったけど・・・。)
でも,きっと知っていても行かなかった。
だって,寒いし,忙しいし・・・。
それに,「今アメリカのへそを曲げると,
今度北朝鮮との間がおかしくなったときに,
アメリカにそっぽ向かれたら困るし・・・。」
なんて考えてしまう。
当然,純一郎もそんなこと考えて,態度保留にしてるのだろう。
きっとそれが得策なのだろう。
かっこ悪いけど・・・。
考えてみると,社会で偉くなってる人って,そんなタイプが多い様に思う。
上司と意見が違って,上司をぶん殴って会社やめちゃうタイプの人は,
まれにしか,偉くなれないんだ。
どっちがいいかはそれぞれの価値観だけど・・・。

2月17日 2003
   JIP(医薬ビジランスセンター)
   耳慣れないかもしれないが,浜六郎さんといえば,
朝日新聞に少し前まで,毎週土曜に「薬の診察室」というコラムを執筆されていたので
ご存じの方も多いのではなかろうか。
その浜さんが,立ち上げた,NPO法人がJIP(医薬品ビジランスセンター)である。
ビジランスとは監視するという意味である。
「製薬会社は,厚生省のOBの天下り先であり,
厚生省は,きちんと製薬会社に良心的な監査や指導をしているとは限らない。
そこで,製薬会社に利害関係のない民間機関の監視が必要だ。」
と言うことで立ち上げられたのだと理解している。
実際,エイズの時の非加熱製剤,SMONの原因になったキノホルム,
サリドマイド,慢性C型肝炎,他にも,
マスコミに取り上げられて有名になっていないものを含めると星の数ほどある。
とても厚生省はあてには出来ない。
つまり,厚生省が安全であると言っても,信じられないのである。
認可されておきながら,副作用が明らかになって認可後に発売中止になった薬が
毎年いくつか出てくる。
今回は,そんなくすりの内で「イレッサ」という薬が問題になっている。
新聞にもその副作用が大々的に報じられてご存じの人も多いと思う。
イレッサは,非小細胞性肺ガンの薬で,特に,
腺癌は放射線も化学療法も効きにくいと言われていたが,
そういう症例に使って劇的に効果がある(治るわけではない)症例があることから
日本では,他国に先駆けて異例のスピード審査で承認発売された。
しかし,実際に使用されると,その副作用で死ぬ患者が続発している。
JIPでは,早くからこのことを問題にしてきており,
「使用を一時中止すべきである」とずっと主張してきている。
僕自身その趣旨も,方針も大賛成である。
しかし,実は,数ヶ月前に,ある病院で2枚のレントゲン写真を見せられた。
一枚は,両側の肺に一面に無数の転移性の肺ガンが散らばっていて,
おそらく呼吸困難があり,奇跡が起こらない限り,
余命1ヶ月そこそこだろうと思われた。
もう一枚は,きれいな肺の写真である。
写真についている患者の名前は,同じ。
つまり,イレッサ使用前と使用後である。
もちろん,いつまでも効いているわけではないが,
数ヶ月,家族といい状態で過ごせるだろう。
そんな患者にとっては,本当にありがたい薬だったはずである。
このことを,浜さんにはがきで伝えた。
忙しいので,きっと無視されるのだろうと思いながら・・・。
すると今日,FAXがきた。
詳しく聞きたいとの事なので,電話で話を聞いてもらった。
JIP(浜さん)のすごいところがここにある。
無視して話を進めても,(全くの正論だから)問題ないのである。
かえって,僕のような意見を入れていたら,話はややこしくなるばかりである。
僕に気を遣ってくれたのではなくて,
奇跡が起こらない限り余命いくばくもない患者が,
救われることもごくわずかだが(10〜20%),
(薬を使えば,1週間で死んでしまうこともあるかもしれないが)
あることも考えに入れてくれたのだと思う。
そこまで懐が深いというか,
「患者のことを考えれば,そうせざるおえない。」
という考えがしみこんでいることに感心した。
JIPは,非営利法人なので,たいへんに財政が苦しい。
雑誌を販売して購読料が収入源だが,一切広告がない。
(製薬企業の広告を載せれば,中立でいられなくなるから,載せない。)
雑誌は,本当に良心的で,そんじょそこいらの医学誌とは
比べものにならないくらい役に立つ。
もちろん,一般の人向けにわかりやすく記載してある。
ただし,一般の医学書とは違う事が書いてあることもしばしばである。
(もちろんこっちが正しい。10年先の常識が書いてある。)
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2月15日 2003
   ウィルスの脅威(西ナイルウィルス編)
   1999年からアメリカで発生している西ナイルウィルス感染症は,
2001年まで,二桁(昨年は42例)の発症だったのに,
昨年は3873例(死亡246例)と100倍近くに急増した。
アメリカになかったウィルス感染症が,アメリカ大陸に定着したのである。

  西ナイルウィルスは,ウガンダの西ナイル地方で,
1937年に発熱患者から初めて分離された。
アフリカ諸国,欧州,中近東,西アジアに分布し,アメリカ大陸には存在しないとされていた。
しかし,99年8月ニューヨーク市周辺で7例の死亡を含む62例の集団感染が報告された。
西ナイルウィルスは,黄熱やテング熱,日本脳炎ウィルスと同じフラビウィルスに属する。
イエカ種のほか,シマカ,ヤブカなどの吸血によって感染し,
アジアでは,コガタアカイエカ,アカイエカが主要な媒介蚊である。
西ナイルウィルスの感染サイクルは,鳥と蚊によって維持され,
人やその他の哺乳動物は終末宿主とされている。
蚊が媒介する事や,中枢神経系の症状を呈する事は日本脳炎と同じであるが,
鳥(野生も飼育も)が宿主でウィルス増殖動物として重要な役割を果たすことが,
日本脳炎と違う。
   
  1999年8月にニューヨーク周辺で何が起こったのだろう。
1999年にニューヨーク市でカラスやスズメの大量死が突然に起こった。
それからしばらくして,
1999年8月にニューヨーク市のある病院に2例の原因不明の脳炎患者が入院した。
その病院に勤務する内科医は,
同じ地区に同時に脳炎患者が発生したことに疑問を抱き,
市保健部に,その他の病院での脳炎発生の有無を問い合わせた。
市当局が調査を開始したところ,
8月27日にさらに2例,29日までに8例の
原因不明のウィルス性脳炎患者が発生していることが判明した。
患者発生は,同市のクイーンズ地区に集中しており,
8例全例が58〜87歳の高齢者であり,
1日の多くの時間を庭や公園など野外で過ごしていた。
9月3日にはCDCで患者血清から,フラビウィルスに対する抗体が検出された。
アメリカに常在するセントルイスウィルス脳炎の疑いがもたれたため,
全市で蚊の駆除対策が実施された。
しかし,CDCでの詳細な抗体検査と患者,鳥,蚊のウィルス分離の結果,
西ナイルウィルスであることが判明した。
市当局の殺虫剤噴霧やマスコミを動員した広報活動などの媒介蚊対策,
そして,秋の到来で9月末に流行は終息した。
99年の最終的な健康被害は,62例,死亡は7例であった。
輸入されるペットの鳥類,人や動物,渡り鳥,バイオテロリズムなど
考えられたが,結論は出ていない。いずれも可能性があるからだ。
遺伝子解析の結果は,1997年〜2000年に
イスラエルで流行したものと類似の株であることが判明した。

ニューヨーク市のクイーンズ地区は,アルボウィルス(蚊媒介性ウィルス)
の流行とは無縁に思える閑静な住宅街である。
地理的には,JFケネディ国際空港,ラガーディア空港が近くにあり,
航空機でウィルスが上陸した可能性は大である。

 アメリカで中心的な媒介蚊であったアカイエカ類は,
日本では都会にも,田舎にも多く発生する。
ウィルス増幅動物である鳥も身近に多く生息している。





西ナイルウィルスの生息環境は日本中どこも整っているのである。



  ヒトへの感染の80%は不顕性感染であり,
脳炎を併発して重篤になるのは,感染者の1%以下である。
脳炎は高齢者に多く,致死率は5〜14%と高率である。
ヒトからヒトへの感染は通常無いが,
輸血,母乳を介する場合はあり得る。
潜伏期間は3−15日(通常2−6日)。
39℃以上の突然の発熱で発症し,頭痛,筋肉痛,食欲不振,倦怠感など
多彩な症状を呈する。発熱は2峰性を示すことがあり,
発熱の中期から後期にかけて約半数の症例で,
胸部,背中,上肢に発疹が認められ,リンパ節腫脹がある。
西ナイル脳炎は,高齢者に多く,
激しい頭痛,方向感覚の欠如,麻痺,
意識障害(「私は誰?ここはどこ?」から「寝たまま起きない」まで障害の程度で症状は違う。),
痙攣などの症状が出る。

鳥はほとんど不顕性感染と考えられていたが,
ニューヨーク周辺では,
ヒトの流行に先立って数千羽の鳥(特にカラスやスズメ)の突然死が
発生したことが判明している。

日本でも,もし,ウィルスが侵入した場合,
まず,カラスやスズメの大量死が起こる可能性が高く,
カラスやスズメの調査観察が必要である。
(誰かしてるのだろうか?きっとしていないと思う。
もし,鳥の大量死があったら,教えて下さい。)

  アメリカなど流行地から帰国後2週間以内の発熱,脳炎は,
(そして,その地で,蚊に刺されたことがある場合は特に)
西ナイルウィルス感染を念頭に置かないといけない。
ややこしい時代になったものだ。
 


2月14日 2003
   バレンタインデー
  今日は聞きかじりの知識を。
 西暦269年、兵士の自由結婚禁止政策に反対したバレンタイン司教が、
時のローマ皇帝の迫害により処刑された。
それから、この日がバレンタイン司教の記念日として
キリスト教の行事に加えられ、恋人たちの愛の誓いの日になった。
女性が男性にチョコレートを贈る習慣は日本独自のもので、
1958(昭和33)年にメリーチョコレートカムパニーが行った新宿・伊勢丹での
チョコレートセールが始まりと言われ、
現在ではチョコレートの年間消費量の4分の1がこの日に消費される。
「日本チョコレート・ココア協会」のホームページでは聖バレンタインデーをこう紹介している。



「たった1枚のチョコレートが、とても大切な役割を果たす日、
それが2月14日の聖バレンタインデーです。」
 


       
 ・・・お見事!
(日本チョコレート・ココア協会Webサイト http://www.chocolate-cocoa.com/)
  今年も,義理チョコと,義務チョコ・・・をありがたくいただく。

2月13日 2003
   
   日本の文化は、恥の文化と言われる。
僕はこの文化を誇りに思っていた。
しかし、最近、様子が変わってきているように感じる。
今日も、ある駐車場で、身体障害者用の駐車スペースに、若いやつが車を停めていた。
そいつが発進したと思ったら、すぐ後に50代のおっさんが車を停めた。
おっさんが車から出てきたので、「そこは身障者用のスペースですよ。」
と声をかけると、「よろしいやん。」と答えた。
「あんたが恥ずかしくないなら、ご自由に。」と答えたが、
さすがに、そいつは同じエレベーターには乗ってこなかった。
最近、身障者用の駐車スペースに平気で車を停めるやつがいっぱいいる。
確かに、一番停めやすくて、便利な場所が確保されているのだが、
多くの人は、どうしても停められないのではなかろうか?
少なくとも、日本では、そんな文化が育ってほしい。
考えてみると、車から平気でたばこの吸い殻を投げ捨てるバカを、頻回に目撃する。
しかも火がついたままのタバコを。もってのほかである。
おまえの車には灰皿がないのか?
道はゴミ箱ではないぞ!
そんな親を見て育った子供は、同じように、平気で道にゴミを投げ捨てて、
大人になれば、タバコを道に捨てるのだろう。
河内長野でも、早く条例を作って罰金刑を科してもらいたい。
犬の糞も同じだ。
まず、ペットを売るときに「散歩の時の犬の糞は持ち帰る様」に厳重に教育してからでないと
売ってはいけないようにすべきだ。
そして引き綱をつけないで散歩させてはいけないということも、徹底させるべきだ。
「うちの犬はおとなしいから」だって?
ばかやろう!おとなしいかどうかではない。犬を恐いと思う人もいるのだ。
街で犬を散歩させるのには、最低のルールがあるのだ。
引き綱なしで散歩させたいのなら、誰もいない所に連れて行ってからしろ!
そんなやつに限って、手ぶらだ。それとも、糞は手につかんでポケットに入れるのか?
これも、条例で取り締まるべきだ。
現行犯だけでなく、糞の後始末の道具を持たないで散歩していれば、それだけで罰金刑にすればいい。
バカどもには、刑罰を科して、それが犯罪だと認識させない限り、理解できないのだから。
せめて、町中の人がそんな輩を見とがめるようになればいいのだが・・・。

2月12日 2003
   子を持つ親はおカネ(鉄)持ち
   今回は,人間の話ではない。
惑星を持つ恒星の話である。
僕たちの住んでいる地球は,太陽という恒星の周りを回る惑星である。
僕たちの住んでる地球以外にも,
生命の存在する可能性のある星が存在するはずである。
それを探すには,とりもなおさず,惑星の発見から始まる。
恒星はとっても明るい。(自ら光を放って燃焼しているのだから)
それに比べて,その周りを回る惑星は,自ら光を放たないのでとっても暗い。
どのくらい暗いかと言えば,
太陽に最も近い恒星までの距離が,約40兆キロメートル(4.4光年)。
仮に,この距離から太陽系を眺めたとしたら,
太陽は,夜空に輝くもっとも明るい恒星の一つとして見えるはずである。
そのかたわらに,太陽の1億分の1以下の明るさで木星が回っている。
地球は,もっと暗く,しかも,太陽のより近くをまわっている。
つまり,見えない!
いまだに,太陽以外の恒星の周りを回っている惑星を,
人類が,直接観測したことはないのである。
では,見つけられないのか?
と言うと,そうではない。
星と星の間には,引力があるので,このために,
恒星は惑星に引っ張られて,中心から揺さぶられるのである。
引っ張られたり,押されたりしているのを地球から観測すると,
明るくなったり暗くなったりするのである。
いわゆる,ドップラー効果である。
(あのおぞましいオービスシステムなどもこの原理を使っている。)
(そういえば,年末の写真がまだ送りつけられてこないけど・・・。心配!)
現在,約100個の恒星の周りに惑星が存在することが確認されている。
 こうして,惑星の存在が確認されると,今度は
「直接見てみたい。そして,そこに生命が存在するのか調べてみたい。」
と思うのは当然である。
そこで登場するのが「分光観測」という手法である。
この手法を用いると,恒星表面の元素の組成を調べることが出来る。
その結果,惑星の存在が確認されている恒星は,
そうでない恒星に比べて,重い元素(代表は鉄)の量が多いことが判った。
太陽もしかりである。
どうしてそうなのかは,まだ定説がないが,
1.重い元素の含有量が多いほど惑星が形成されやすい。
2.元々,恒星の化学組成は同じだったが,惑星の形成後に,重い元素を持つ惑星が
  落ち込んで蒸発した。
  と言う2つの説が考えられている。
今のところ,前者の説が有力と考えられている。
太陽系は,今から46億年前に誕生した。
それまでに,天の川銀河の中で,数十億年かけて蓄えられた重い元素を含んで・・・。
宇宙の物質進化は,単に,地球の生命の材料ばかりではなく,
惑星という生物進化のための環境を整えて来たように思う。

2月10日 2003
   死に方
   先日の日曜に,父の顔を見に,田舎に帰った。
久しぶりに見る父は,ずいぶん年をとって,脚を引きずりながら歩いていた。
変なもので,父と相対している時は,僕は医者ではなく,ただの息子だった。
「脚の症状がどうだから,どこそこの障害が考えられて,云々・・・。」
などと言った思考回路が働かない。
ただ,「こりゃあ,えらいこっちゃ。おやじもこのままだと不自由だろうなぁ。」
と言った普通の考えしか浮かばなかった。
後で布団に入ってから,やっと,
「あれは腰椎レベルの神経障害じゃないか!」
と思い当たった。
翌日父に,(父は大の病院嫌い。)「検査だけでも受けへんか?」
と聞いたら,
「病院に行って,ごちゃごちゃ手続きしないで,さっと受けて,さっと帰れるんやったら」
と言う条件付きで了解を得た。
早速,兄に電話をして段取りを決めて,父に話すと,やっぱり行かないと言う。
それで,この話はおしまい。
これ以上説得をしても,聞いてくれる父じゃないことは,息子達はよく知っている。
戦争で生き残って,母が死んで,
父はべつに長く生きたいとは思っていないのだ。
そのことは,僕たちも十分に承知しているが,
僕たちからすれば,一日でも元気で生きていてほしいと願ってしまう。
せめて,死ぬ寸前までは,不自由な思いや,痛い思いはしてもらいたくない。
だから,神経の圧迫が万が一癌でも,父が手術が嫌だと言えば,手術はあきらめる。
だけど,簡単な手術でとれてしまうヘルニアなら治したいと思ってしまう。
それもこれも,父の一言ですべてちょんである。

 ひるがえって,
僕は,いつも,普段の診療でこんな風にして患者に接していられるだろうか?
なるべく本人の意志を第一と考えているが,今回は,僕が息子だから,そして
何もかも考えて,兄弟全員が,それを受け入れられるからそうできただけだ。
もし,人様の父親なら,
本人との話し合いは,何とか問題ないだろうが,
家族は,そうはいかない。
「先生が無理にでも,手術を勧めてくれたら,こんな事にならないですんだのに!」
などと言われやしないか,心配になってしまう。
(今のところ,そんなことは経験していないが・・・。)
そして家族も,いろいろと思い悩むだろうし,家族の中でも意見はいろいろだろう。
決めがたいことだけど,決めないと,時はお構いなしに過ぎてしまう。
普段から死に方は,家族共々考えておいた方が良いのかもしれない。


2月 8日 2003
   反省
   先日息子に、「おまえは、人の善意の申し出や提案を、むげに断る傾向がある。」
「もっと、相手の気持ちになって、断るにしても、気を遣って断るように!」 と注意したら、
「お父さんも、そうだ!」 といわれた。言われてみて愕然とした。
言われてみれば、その通りかもしれない。
確かに、子供は、親の鏡なのだと悟った。
これからは、気をつけないといけない。
必要ないことや、自分とは関係がないと思っていることを、
人から提示されると、確かにむげに断ったりして、相手を傷つけていたように思う。
無意識でしてきたことだが、反省しなければ・・・。
しかし、この年まで、そのことに気付かない自分の愚かしさも、ひ
どいものだ。

2月 6日 2003
    年をとったら,どこに住む?
    友人の友人が,早期退職してマレーシアのペナンに住んでいるそうだ。
400万円を向こうの中央銀行に預けると,定住権が得られるらしい。
(今は,500万円だったと思う。) 
夫婦で,月々35万くらいの定期収入があることも条件だったと思う。
もちろん不動産の購入も出来る。
人件費も安く,ガードマン付きの豪華マンションに住んで,
月に15万ほどでリッチな生活が出来て,週に2回ゴルフも出来るそうだ。
早めに(まだ,体が自由に動く内に)仕事を切り上げて,
10年をそういうところで暮らすのも悪くないように思う。
しかし,年金の支給は,65歳から
(下手すると僕らの頃は(きっと団塊の世代から)70歳に引き上げられそうな予感もあるが)
だから,仕事をしないで一定の定期収入を得ることは難しいようにも思う。
でも,もし叶うならどこに住もうか?
オオストラリア?最近は定住権が取りにくくなったとも聞いているが・・・。
マレーシア?  モルディブにも,シパダンにも行きやすくて,物価も安くていいかも。
世界中回っている新聞記者の人は,フィレンツェ!と言っていた。
きっとまた,団塊の世代の人が開拓してくれるはず・・・?

2月 4日 2003
      リスク管理
      スペースシャトル,コロンビアが空中分解して飛び散っていく様子を
世界中の人が,悲しい思いで見たことだろう。
人類の夢が,7人の宇宙飛行士とともに砕け散っていくようで,
やりきれない思いだった。
僕も,子供の頃は宇宙飛行士になりたかった。
しかし,具体的にどうしたらなれるのか,見当もつかない仕事だし,
目がど近眼だし,とか考えている内に,相対性理論などを聞きかじって,
「光速で宇宙飛行して帰ってきたら,自分の知っている人はとっくに死んでしまって
浦島太郎状態になってしまう。」などが判って,あきらめた。

  しかし,もし,耐熱タイルがはがれたことが原因だとしたら,
NASAは,何とお粗末なリスク管理をしているのだろう。
「過去に,はがれても,大丈夫だったから大丈夫。」
そんな理論が,平気でまかり通ってしまうなんて,
それも,世界の最先端技術が結集されている現場で・・・。
「さいころを2回ふって1が出ないから,次も1は出ないだろう。」
と言ってるのと同じだという事が判らないのだろうか?
いや,それよりもひどい。
今回はがれたのは,一番熱くなりやすい翼の裏側の耐熱タイルなのだから,
よく考えれば,どんな結果が待ち受けているのか明白なはずだ。
打ち上げられて,大気圏を飛び出す前までなら,中断できたそうだけど・・・。
コロンビアは,大気圏を飛び出した時に,
すでにこうなることは運命づけられていたことになる。
何とも悲しい話だ。
こんな事は,ちゃんとリスク管理のマニアルを作っておくべきだったのだ。
とっさに判断して,GO サインを出した担当者一人が
責められる問題ではないと思う。

2月 3日  2003
     ビタミンB6とB12と葉酸の話
     高ホモシステイン血症は動脈硬化性疾患の危険因子のひとつである。
その相対危険度は、高コレステロール血症、喫煙と同程度とされる。
そのわりには、日本における高ホモシステイン血症への注目度は低い。

 基礎的研究にてホモシステインは、
内皮細胞障害、血管平滑筋増殖、血小板凝集亢進、凝固機能異常などを
引き起こすことがわかってきている。
臨床的にも高ホモシステイン血症は動脈硬化の結果ではなく、原因であるとされた(1)。

 ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸はホモシステインが
メチオニンに代謝される際に必要なビタミンである。
これらの摂取により血液中ホモシステイン濃度が低下する。
つまり、これらのビタミンを摂取することで
動脈硬化性疾患を予防することができるかもしれない。

 ホモシステインに関連した最近の話題から幾つか拾ってみた。
1)食事からの葉酸摂取量の多い人(300μg/日以上)は
 摂取量の少ない人(136μg/日以下)に比べて
 脳卒中発症率が20%、心血管疾患発症率が13%少ない(2)。
2)ホモシステインが高い(>15mol/l)と突然死をきたしやすい(オッズ比3.8)(3)。
3)ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸投与により、
 経皮的冠動脈インターベンション後(心臓カテーテルで,心臓の冠動脈を拡げる治療。)
 の再狭窄率、再治療率が低くなる(相対危険度0.62)(4,5)。
4)血液中ホモシステイン濃度が高いほど血圧が高い(6)。

 上記の結果は、血液中ホモシステイン濃度を低下させることに
臨床的な意味があることを示唆するが、
まだビタミンB6、ビタミンB12、葉酸服用が動脈硬化性疾患の予防に
本当に有効かどうかについては結論が出ていない。
海外では高ホモシステイン血症への介入試験が進行中であるというから、
近いうちに結論が出ることだろう。

 私たちはどうしても製薬会社の開発する新薬に目がいってしまう。
製薬会社は大規模な臨床研究に資金を提供し、
その結果をいろいろなメディアを通じて大々的に宣伝する。
それに対し、ビタミン類を使った介入試験はあまり目立たない。
製薬会社の提供する情報ばかりに頼っていると、
ビタミンなど身近な医薬品やサプリメントに関する情報も不足するし、
それらの効果に対し懐疑的にもなりやすい。
しかし、ビタミン服用が動脈硬化性疾患の予防に効果があるということとなれば、
これほど安全で安価な治療法はないだろう。

 ここで紹介した論文はすべて海外のものである。
血液中ホモシステイン濃度は食生活にも左右されることから、
海外での研究結果をそのまま日本人に当てはめることはできない。
製薬会社に頼らない、研究者主導の臨床研究の出番ではなかろうか。

ビタミンB6(ピリドキシン):成人一日の摂取目安量 2mg
     2mgとるには,鮭267g(3切れ) or いわし200g(中4匹) or バナナ500g(4本)
ビタミンB12(コバラミン):成人一日の摂取目安量 2μg     
     2μgとるには,牛レバー3g  or 鶏レバー6g or カキ(貝)16g(約2個)
葉酸:成人一日の摂取目安量 0.2mg
     0.2mgとるには,ほうれん草200g(約4株) or インゲン豆150g
               or サツマイモ650g(3個)

■参考文献■
(1) BMJ 325:1202-1208, 2002
(2) Stroke 33:1183-9, 2002
(3) Arterioscler Thromb Vasc Biol 22:1936-1941, 2002
(4) N Engl J Med 345:1593-1600, 2001
(5) JAMA 288:973-979, 2002
(6) Am J Epidemiol 156:1105-1113, 2002


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