円成寺楼門
Main gate of Enjo-ji Temple

近鉄奈良から東大寺、春日大社を抜けて飛鳥中学横から能登川を上り、柳生街道をここまで歩いて来た。峠の茶屋からは林道をたどって国道369号線に出た。台風の通過した翌日で蒸し暑く、汗が流れて止まらない。途中でハンカチを落として困ったが、円成寺近くの商店でタオルをいただいて助かった。
円成寺は天平勝宝8年(764年)聖武・孝謙両天皇の勅願で唐僧虚瀧(ころう)和尚の開創とのことだが、この年は孝謙帝の寵臣であった藤原仲麻呂が反乱して殺され、帝の寵愛が道鏡に移った年でもある。翌年には無用の大寺といわれた西大寺が建立され、5年後にはかの宇佐神宮の神託、6年後の宝亀1年には帝は53歳で崩御、道鏡は失脚する。東大寺大仏開眼からの18年はまさに混迷の時代だった。この寺は応仁の乱の兵火を受けた後に再興され、江戸時代まで広大な寺領を維持したが、明治に寺領殆どを没収された。
ところで、東大寺から西大寺までは西に直線距離で6キロほどだが、円成寺までは東に8キロ弱でしかなく、東大寺を中心とした孝謙帝のバランス感覚はかなりのものだと、歩きながら考えた。この寺のミッションは東大寺の東を守ることだったのかと。  次へ