発見〜入院まで

5月下旬
 
この頃から、時々排便時に血液が混じるようになる。出血した血液が鮮血だったため、以前治療していた内痔核が悪化したものと思い、あまり気にしていなかった。

7月5日

人間ドック受診。

7月中旬

人間ドックの結果が到着し、便潜血反応陽性で、内視鏡検査を受けるように勧める文書が同封されていた。
 
このときは、またどうせ「内痔核」であると、半ば確信していたので電話帳をながら職場から近い、比較的大きな消化器科を併設している内科を探した。

 7月23日

 職場近くにある大きな内科を受診し、内視鏡検査を依頼。検査は、今週末と決まる。

 7月27日

内視鏡検査と、注腸バリウム検査実施。
 検査後、医者に検査結果を聞くと、肛門から約10センチ付近の直腸に大きなポリープと大腸の奥の方に非常に小さいポリープが発見出来たとのこと。
 医者の話では、小さなポリープはほとんど無いような小さな物で、内視鏡で簡単に取ることが出来るが、大きい方は外科的な手術が必要とのことで検査を含めて近いうちに入院するように宣告される。
 自宅に帰って、家族に事情を報告し、最悪の場合は、職場近くの大学附属病院に入院することにする。
 
 念のための検査で、検査が終わったら、何事もなく帰宅し、自宅でビールでも飲もうと考えていたので、まさか「入院」という言葉が出で来るとは予想もしていなかった。
 外科的手術が必要という言葉も若干衝撃的だった。 ひっよとしたら「ガン」かもしれないな〜と考えたが、自分でも以外に冷静だった。
 この時点で、ポリープから大量の出血の可能性があり、同行者に迷惑がかかるおそれあるので、週末に予定していた利尻登山を泣く泣く断念。 心配をかけず、楽しい旅行となるように、行けない理由を足の捻挫ということにする。

8月 1日

検査結果判明。
 生検検査の結果、医師から「変異した細胞が見つかりました」と告げられる。
変異した細胞とは、「ガン」ということですかと?と質問すると、否定も肯定もしない。 さらに、どのくらい進んでいるのか、転移の可能性はと訪ねると、手術して組織を検査してみなければ、はっきりした事は解らないとのこと。
 さっそく、大学病院への紹介状を書いてもらい、内視鏡検査の写真、注腸バリウムのレントゲンを借りて帰宅する。
 病院から借りてきた検査結果をインターネット等で調べ、改めて家族と検証すると、間違いなく「ガン」であることを確認する。
 生検検査の専門用語を調べると、高分化〜中分化腺ガンで検査の分類では「グループ5」の間違いなくガン細胞であるとの結果であった。

 「特に悪い物では無かったです」という言葉を期待して、待合室でやや緊張しながら待っていたが、医者の言葉から出た言葉は、正反対の結果だった。
 まあ、医者が患者に間接的ではあるが病名を隠さないのだから、治癒の見込みがあるのだろうと、勝手に解釈して気持ちを切り替える。
 以前から、ガンやホスピス、尊厳死等に興味があり、色々な本を読みあさっていたおかげで、自分の置かれている状況がある程度冷静に分析出来たと思う。
 でも、いままで大きな病気をしたこともなく、入院経験もないので、ショックと言えばショックであった。

8月 2日

大学病院受診。
 検査結果を持参して外科の診察を受ける。 簡単な予診の後、消化器科グループの医師の診断を受ける。病名は知っていますね?との確認があった後、写真と黒板を使って現在解っている病状の説明が始まった。
 病名は、早期からやや進行期に移行した「大腸ガン」で、肛門から15センチ付近に直径約2センチの「T型」呼ばれる腫瘍を作っており、手術で綺麗に取ることが出来そうで、この位置なら人工肛門となる可能性も無いとのことである。
 ただし、早期大腸ガンでも、肝臓や肺に転移している可能性もあるので、充分に検査をしてみる必要があるとのこと。
 入院予約をし、手術前の検査は、新たに内科を受診して、通院しながら行うこととなった。
 手術は、3週間くらい後になるとのこと。
 早速、血液検査、肺機能検査、胸部レントゲン検査、心電図検査等入院に必要な検査を実施して帰宅。 

 今日の受診まで、インターネットを駆使して、持っている情報を基に、自分の病状を分析していたが、ほぼ予想とおりの診断内容だった。
早期に近い進行ガンでも肝臓や肺に転移している可能性があるという説明は予想していなかった。
ある程度病状がはっきりして、心配していた人工肛門も回避できると分かり、多少安心する。
 まあ、人間3人に1人はガンで死ぬんだという言葉もあり、それが多少早く自分の身に訪れたと解釈して、可能なだけはガンと戦ってみようと、新たな決意を固める。

8月 5日

大腸エコー検査実施。
 午後から大腸検査受診。検査のために朝から2リットルの下剤を飲む。一応飲みやすいように冷やしておいたのだが、やはり飲みづらい。
 検査は、腸に大量の空気を入れるため下腹部が張って痛い。検査の時間が長く感じられる検査であった。 終了後医師から肛門から15センチ付近の腫瘍で、この位置なら人工肛門の必要は無いでしょうと簡単な説明があった。

 先週受けた大腸検査は、それほと辛く無かったが、今回の検査は空気を大量に入れるため、お腹が張って苦しい。
ひたすら、早く終わってほしいと願いながらの辛抱であった。

8月 8日

胃カメラ検査受診。
 今週2回目の検査である。 胃カメラは以前にやったことはあるが、苦手な検査である。おう吐を繰り返しながら何とか終了。 検査の結果は、食道、胃ともに異常なく「きれい」とのこと。
 その後、内科の医師に掛け合って先日のエコー検査の結果を教えてもらう。
 検査の結果、病巣の大部分は腸の粘膜層に留まっており、この部分がmp2と分類されるが、根となっている部分が腸の筋肉組織に一部掛かっていて、その部分がmp3という進行度ということである。 最終的な診断は、肝臓、肺、リンパ節への転移の有無によって決まるので、内科的には、これ以上詳しい説明は出来ないとのことだった。

 やはり、神経が集中している口から「異物」を入れるのは苦しい。
 特に、気管を通過する時と、胃から十二指腸へ管を入れるときが、ひどく辛い。
 検査後も、食道が痛んでいるらしく、棒が入っているような異物感が抜けない。
 夕方から、体温の調整が旨く出来ず、寒気がする。 帰宅後体温を計ると、38度近く熱がある。 風邪か、検査時に注射したブスコバンの副作用か?

8月 9日

外科外来にて手術日確認。
 CTの検査が19日との通知が葉書で自宅に届いたため、手術日予定日の確認に外科再来窓口に出向く。 しばらく待たされた後、当初は8月22日に手術の予定だったが、都合で9月の第1週に延期になったとのこと。

 8月中の手術と思っていただけに、少々不安となる。 手術が遅くなったせいで、病状が進行したら.............と思ってしまう。
 何か、一日一日と、命をすり減らしているような、感覚に一時陥る。

8月12日

注腸バリウム検査実施。
 今日は、手術に必要なX線写真のうち、最初に受診した内科で撮影しなかった方向からの写真を補完するための撮影。 予約時間とおりに検査開始され、無事終了。 胃カメラの検査に比べると非常に楽な検査であった。
 今日の検査は、楽だった。 検査の医師も親切で、30分程度で終了してしまった。

 あまり早く終わったので、看護婦が来るのが遅れて、身支度が終わった後に、お尻を拭かなくては〜とやってきた。 自分でやりましたよ、と言うと恐縮されてしまった。

8月19日

CT検査実施。
 今日は、肝臓等への転移の有無を調べるCT検査である。 今回の検査は、全く食事制限が無かったので、精神的にも肉体的にも非常に楽だった。一応腕から造影剤を注射されたものの、服を着たまま検査台に上がり、言われるままに、息を吸ったり吐いたりするだけ。
 検査後、外来で検査結果を後日聞きたい旨申し込みに行くと、タイミングよく担当医師と鉢合わせ。 すぐに面談してこれまでの検査結果を聞く。つい先ほど撮影したCTの画像が光ファイバー回線で、外来のパソコンから見ることが出来るのには、大変驚いた。 精密な画像を放射線科の担当医師と検証しなければはっきりしたことは言えないが、見た目では肝臓への転移の心配は、無く、腫瘍マーカーの反応もなく、血液の感染症も全く無いとのこと。 手術は最も遅れた場合で、9月10日となるが、出来るだけ早くしてくれるとのことであった。
 
 今までの最大の心配は、肝臓、肺への転移の有無であっただけに、一応肝臓への転移が無いようだとの結果に、ひとまず安心する。
 何か、一日一日と命をすり減らしているような感覚が若干あっただけに、精神的に少しらくになった。 リンパ腺への転移は数十パーセントの確率で可能性があるので、ある程度覚悟が必要と自分でも覚悟している。

8月27日

入院日の連絡有り。
 自宅に病院から電話が来て、8月30日に入院するように電話が入る。 入院は来週と想像していただけに、不意打ちをくらった感じである。手術日は29日に決定される予定とのことで、電話にて確認することが出来るとのことであった。

 急な連絡で、急いで床屋に行ったり買い物をしたりと慌ただしい一日となった。

8月29日

手術日決定。
 電話にて、手術日を確認すると、9月4日(水)に決定されたとのこと。手術は火曜と木曜に実施されると聞いていたので、少々意外であった。
 他の科の手術が空いたのであろうか。土日は検査等が無いはずなので、入院を月曜に出来ないかと尋ねたところ、月曜でもかまわないとのことで、月曜に変更してもらう。 これで週末にゆっくりと準備が出来る。



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