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電子極軸望遠鏡による極軸設置


現在は光学式のものは使っておらず、電子極軸望遠鏡を使っている。 ガイド鏡と兼用してもよいが、常時極軸に向けておきたいので、PoleMasterを使用している。

赤道儀はSWAT-310を使用しているが、当初はPoleMasterの付属ソフトウェアで極軸設置を行っていた。 しかし操作性・精度に難があり、現在ではSharpCapで設置している。 当該機種は最高速が16倍速なので、電子極軸望遠鏡で極軸を出す際に、(回転軸を検出させる仕様のソフトウェアの場合) クランプを開閉して手動で軸を回転させる必要がある。 このとき軸の誤差が大きかったり不規則であると、設置精度が当てにならなくなる。 そこで軸及びクランプの精度を検証してみることにした。

Polar Alignment Troubleshootingの 「I get the wrong results - SharpCap says my Polar Alignment is great after adjustment, but it isn't!」に記載されている RA軸の問題の確認方法を参考にした。要は極軸設置後に再実行して初期位置に戻し、 結果を観察した際に大きな誤差があるようなら、軸に問題があるということ。

[参考]
QHYCCD
SharpCap

※SharpCap
最新バージョンは有償(1年間のライセンス)となっている。 デジカメ使用で極軸設置のみ行いたいのなら、フリーの2.9でよいかもしれない。 (2035年までの極の座標データがあるが、それまで対応しているのだろうか?) もっとも2021年3月時点ではダウンロードできなくなっているようであるが……


【検証1】- クランプの開閉誤差と赤経軸の精度

室内試験

クランプ開閉前後で所定の画像を撮影してズレを確認した。 計算が面倒な場合は、Exifに画角が記載されている場合もある。 計測はImageJで行った。 誤差はクランプの軸に対して、ラジアル方向に約3秒角スラスト方向に約30秒角発生した。

ここでは結果の正確性を求めるのではなく、ズレ量の大小の目安をつけるのが目的。 そのため機材設置もさほど厳密に行ったわけではない。 同一位置でクランプを開閉したのだが、その際に指先で雲台ステージと固定部を保持して、 赤道儀本体に負荷をかけないようにした。

実写試験

SharpCapで90度回転させて極軸を設置した後、-90度回して初期位置に戻し、その誤差を見ることにより、 軸・クランプの精度を把握することが可能と考えた。 そこで各動作ステップで、SharpCapの画面をキャプチャーして、確認してみることにした。 このとき使用したSharpCapは旧バージョンであり、現行のものとは少し動作が違っている。 きちんと記録していなかったが、おそらく2.9だったと思う。
下図のはクランプを示す。 0から4の順に操作をしており、数字の後に*の付いたステップをキャプチャーしている。

[図1] - 動作フロー
image

0は初期位置。
1は初期位置から90度回転させ極軸設置。
2は1を-90度回転させ初期位置に戻す。
3は再度90度回転させる。
4は3を-90度回転させ初期位置に戻す。

[画像1] - キャプチャー1*
image (画像をクリックで拡大)

[画像2] - キャプチャー2*
image (画像をクリックで拡大)

[画像3] - キャプチャー4*
image (画像をクリックで拡大)

画像4,5は1から2のステップの際に、リスタートボタンをクリックしたものである。

[画像4] - キャプチャー1*と同位置
image (画像をクリックで拡大)

[画像5] - キャプチャー2*と同位置
image (画像をクリックで拡大)

まとめ

SWAT-310のクランプや軸精度は極軸設置の際、大きく支障をきたさない程度のものであることを確認した。 これは私の所有する個体の結果であるので、SWAT全般で同じような傾向を示すものかどうかはわからない。 製造時にこのあたりも配慮されているのなら、問題は無いのだろうと思われる。
なお極軸設置時後に何度もクランプの開閉を行うと、それなりに誤差が大きくなるので注意が必要である。 またクランプの開閉を雑に行わないこと、赤道儀本体に負荷をかけるような開閉方法は厳禁。

【検証2】- 光軸の偏芯

更にPoleMasterの光軸の偏芯が、極軸の精度にどのような影響を与えるかも検証してみた。 光学式の極軸望遠鏡であれば、視野中心(通常スケールの交点)に動かない目標物を導入し、 赤経軸を回転させて光軸ズレを確認するわけであるが、同様の方法をとることにした。 夜間でもあるので目標は北極星にした。 厳密にいうと動かないわけではないが、確認する間の移動量は僅かであるので問題無いものと判断した。

▼まず赤緯体をGLに対して水平にセットし、SharpCapのオーバーレイを表示させ、架台を操作して写野中心に 北極星を導入する。 テレスコープ位置は東西どちらでもかまわない。 このときの状態が画像6になる。

[画像6]
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▼次に赤緯体を180度回転させ、北極星が写野中心から外れていないか確認する。 画像7を見ると非常に大きなズレが発生している。 SharpCapのウインドウでは「RA Axis」と表示されているが、これは赤道儀の赤経軸ではなくPoleMasterの光軸である。

[画像7]
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▼ここでは表示されている「RA Axis」を基準に極軸を調整し、PHD2のPDA(Polar Drift Alignment)で検証してみる。 結果は以下の通りで、5分角の誤差が発生している。

[画像8]
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[画像9]
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▼今度は「RA Axis」ではなく、光軸の偏芯を補正した位置に調整し、PHD2のPDAで検証してみる。 誤差は1分角となった。

[画像10]
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[画像11]
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まとめ

【付記】

※PoleMasterの重心測定について
「星像の重心を計算で求めているので、クリックする場所は厳密でなくてもよい」という旨がFAQに書かれているが要注意。

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初出:2019-03-31 改訂:2021-04-14
(C) YamD