大気の屈折作用により、極軸設置の際に一定の誤差が生じてしまい、追尾精度に影響が出てくるという程度の認識しかなかった。 つまり撮影対象の赤緯や時角において、それがどのように変化するのか理解が不十分であった。 そこで具体的に計算してみることにした。
■大気差▼追尾エラーの定量的評価
大気差の角度R(z)は天頂距離zで決まり、以下の実験式でも実用的な値が平均値として表現できる。
R(z) = 58".3 tan z
R(z)の赤経方向の成分Δα、赤緯方向の成分Δδ、時角方向の成分ΔΗは次式であらわされる。
Δα = −R(z) sinη secδ Δδ = R(z) cosη ΔΗ = −Δα
式中のδは天体の赤緯、ηは天体が天頂と極に張る角である。
■大気差を補正するためのモータードライブのスピード設定値
天体の見かけの日周運動による速さは、大気差によって連続的な変動をみせる。 大気差に適当な平均値を採用すると、大気差による赤経方向の追尾誤差をきわめて小さくできる極軸の運転速度(秒/回転)の値が、 観測する天体の赤緯と時角、観測地の緯度から算出できる。
86164.09+24×{cosφ/cosδ [cosφ cosδ+sinφ sinδ cosΗ/(sinφ sinδ+cosφ cosδ cosΗ)2]−cotφ tanδ cosΗ}
恒星時運転=86164.09秒/回転 φ:観測地の緯度 δ:天体の赤緯 Η:天体の時角
Η | 追尾する天体の位置(時角) | 20h |
δ | 〃(赤緯) | 0° |
φ | 観測地の緯度 | 35° |
t | 追尾時間 | 600秒 |
(式1)「天文年鑑」の数式
(式2)「天文年鑑」と「追尾エラーの定量的評価」の数式は同内容
(式3〜6)「追尾エラーの定量的評価」の数式
※式1から算出した時角方向の追尾時間あたり誤差は、上空で式5の値と乖離が生じてくる。
なお低空では概ね近似する。