アメリカ合衆国横断旅行記

サンフランシスコ−>L.A.



サンフランシスコは美しい坂と海の町です。吸い込まれそうな深い青い空。街には、心地の良い風が吹いています。
ケーブルカーが坂を上ったり下ったり。ユニオンスクエアの周りは陽気な雰囲気に包まれています。
湿度の低い爽やかな空気に時差ボケも直ってしまいました。見る物全てが新鮮ですっかり観光客してしまいました。
フィッシャーマンズワーフでエビを食べたり、チャイナタウンで飲茶をしたり、ゴールデンゲートブリッジを渡ったりと、楽しい時間がすぎていきます。
当時は、また仕事で来て住むことになるなんて予想もしてなかったので、とっても貴重な時間でした。

ところが観光客然として隙だらけの姿がよくなかったのか、夕方になると
怖い人たちが続々と絡んでくるようになりました。早々に晩御飯を食べて、
ロサンジェルス行きのバスターミナルに向かいました。
バスターミナルへ向かっていくと、段々人がいなくなり、
倉庫やら壊れかけたビルだらけになってきました。
時折、ごろつき達が暗闇のネコのように目を光らせてこちらを見ています。
「こりゃ、人生最大のピンチだなあ」なんて思いつつ、なんとか
バスターミナルにたどり着きました。
(後で聞いたところによると、長距離バスのターミナルは西部開拓時代の
長距離馬車ターミナルの場所にあり、当時は繁栄していたものの
飛行機が主流になった今、すっかりゴーストタウンかスラムになったそうです。)

バスターミナルの入り口には、ピストルを持ったガードマンが見張っていて、
切符を持っている人だけが中に入れるようになっていました。
やっとこれで安心する事ができました。
さあ、夜行バスに乗って明日はロサンジェルス(L.A.)入りです。

L.A.には朝の3時に着きました。昨日のこともあるので、
外が明るくなるまでは、バスターミナルに籠もって身を守りました。
まぶしい朝日を浴びながら外へ出てみると涼しいサンフランシスコとは
うって変わって暑く、広い幅の道にはヤシのような南の木が街路樹として
植わっていました。L.A.はフリーウェーが縦横無尽に走っている巨大都市で、
車が無いとどうにもならないことが解ってきました。
今回は路線バスでリトルトーキョーなどを回る程度にしておこうかな。
リトルトーキョーでは、居酒屋ありの、紀伊国屋書店ありの、まさにアメリカの中の日本人街です。
ちょっと怖いことが続いたので、ここでほっと一息。さて、再びアメリカの中へ。

お昼においしそうなタコス屋があったので、ちょっと店の親父がメキシカンで怪しげだったけれど、
オーダーしました。怪しげな親父は「どのスペシャルなソースをかける?」と聞いてきます。
「どのソースがお薦めか?」と聞いてみると「全てだ!」と嬉しそうに答えます。
「じゃー、全部かけて!」とリクエストして、来たタコスを食べてみると・・・、
なんと全てのソースが激辛だったのです。おまけにそれぞれ異なる時間に辛さが襲ってきます。
あー、今思い出しても辛かった!辛いのが苦手な私には、あまりにも過酷な経験でした。

だんだん、アメリカにも慣れてきました。今度は市庁舎の屋上へ行ってみました。
高い屋上からは、L.A.の街並みが見下ろせます。それにしても道だらけ。高速道路(フリーウェー)も縦横無尽に貫いてします。
屋上には、扉の無い屋根だけのトイレがあったので、L.A.を見下ろしながらの用足しは、最高!
ユニバーサル・スタジオやビバリーヒルズは、次回のお楽しみにとっておいて、そろそろ横断を開始しようかな。

長距離バスのターミナルにたどり着くと、さすがに疲れてしまい、床に置いたカバンを枕に、しばし寝そべってしまいました。
ふと気がつくと、帽子を被った怖い兄ちゃんが耳元でなにやら囁きかけて来ます。
「何じゃ、おまえは!金はやらんぞ!」と心で叫び、
どうやってこの状況から逃れようか、と思案していると、
「大丈夫か?」と言ってきます。おぉ、結構いい奴じゃん、と思い「O.K.ファインだ。」と答えると
「これをやる」と言って、怪しげな物を出してきます。
これは、やばいと思い、またまたガードマンのいる待合室に逃げ込む羽目になりました。
油断は大敵。

待合室には、各椅子に小型TVが付いていて、コインを入れるとTVを見ることができます。テレビが好きなアメリカ人は、コインをじゃんじゃん入れてTVを見入っています。
喉も渇いたので、バドワイザーを流し込んで今日も無事だったことに乾杯!!
酔いもあっという間に廻ってきます。
さて、乗るバスを決めなくちゃ。
時刻掲示板の上の方にあった、東部へ行きそうなバスに申し込みました。
まだ、L.A.は暑い太陽がじりじりと照りつけています。