よぉし!今度のデートは「湾岸」で決めるぞ。Nと何度も下見をしに行った、お台場で盛り上がろう。Nと男二人では入れなかった、あのイタリアン・レストランで食事をしよう。シャンペンで乾杯は、初めてのデートではまだかな?この辺のタイミングは、ファースト・デートだけは数をこなしているTに聞いてみよう。でも、あいつ、なんでいつも2回目のデートが出来ないのかな?次々と魔法のように女の子と知り合いになってるのに・・・
デートの場所を「お台場」に決めた孝一は、暇そうなYを誘って、直前「お台場」下見を実行した。レストラン・ビーチ・ショッピング・観覧車をテーマに、「晴れバージョン」「雨バージョン」「曇りバージョン」の展開をすべてシミュレーションした。音楽に詳しいSからCDを沢山借りて、オリジナルテープもばっちり出来上がった。
いよいよ、「かおる」とのデートの日がきた。
天は、孝一に味方したのか、今日は見事な快晴だ。「かおる」と約束した駅前広場に孝一はクルマを滑り込ました。「かおる」は孝一に気がつくと、にこっとして駆け寄ってきた。「やあ」孝一が声をかけたとき、「かおる」の髪が風になびいて、ほのかな香りが孝一の鼻をついた。一瞬、孝一は頭の中が白くなるを感じ、心地よさに酔っていたが、「あれ、この感じ、ちょっと前にも経験したような・・」
「今日は、よろしくお願いします。」と「かおる」は少しはにかみながら挨拶をした。「じゃあ、早速行こうか。」車中で孝一は得意のしゃべりで盛り上げまくった。幸い、「かおる」は人の話を聞くのが苦にならないタイプのようで、孝一のしゃべりを楽しそうに聞いていた。
お台場のイタリアン・レストランでの食事は、孝一にとって、今までのすべての食事が無意味に思えるほど、最高だった。Tの入れ知恵によるシャンペンを飲みながら、シャンペンの泡のように孝一の心もはじけた。
日が暮れて、観覧車に乗るころには、すっかり二人は仲良くなっていた。観覧車の中で「かおる」は、にこにこしながら、「孝一くんといると、なんだか楽しい。」と東京の夜景を見ながら、つぶやいた。孝一は、「観覧車で決めろ」というNのアドバイスを思い出しつつ、なぜか、得意のギャグを連発してしまった。「かおる」は思わずギャグに受けてしまった後、少し寂しそうな表情をしたのを、孝一は気がつかなかった。
お台場から夜の首都高・湾岸を飛ばして、まぶしい夜景の中をご機嫌な二人は、「かおる」と待ち合わせをした駅まで帰ってきた。
「今度はおうちに迎えに来てね」と「かおる」は孝一にいって、帰っていった。孝一は、予想をはるかに越えたデートの大成功に、酔いしれながら、時速150kmでバイパスを飛ばして、家路についた。