夢で会いましょう・2



僕がイルカの本当の大きさを知ったのは、まったく意外なことに自分の部屋でのことだった。
その日、イルカに関する本を読んだ僕は、イルカをイメージした瞑想をやってみたのだ。瞑想の仕方は教えてもらったことがあるので、その方法をちょっとアレンジしてイルカ瞑想にしてみた。
目の前に小さなイルカの置物を置き、部屋を暗くし、その真ん中であぐらをかいて両手はヒザの上、手の平を上に向けて目を閉じ、呼吸を深くしてイルカをイメージするという、ごく簡単なものだ。
大切なのは、イルカを遊びに誘うような感覚で自分の気持ちを盛り上げていくことだ。
”ハロー、ドルフィン!さあ、一緒にあそぼう!”
って感じだ。
30分くらい、そんなふうに気持ちをハイにしていると、突如右側の床からヌーッと巨大な物体が現れた。
”イルカ?!”
床から現れた物体は、水面から飛び出す時のジャンプそっくりにそのはちきれんばかりに張りつめた巨体で宙を飛び、僕の頭上を越えて反対側の地面に消えていった。・・・とすぐ今度は左の地面からイルカが飛び出し、さらに今度は前からもイルカが飛び出し僕の頭上を高く飛び越えてゆく。地面からは無音のまま激しい水しぶきが立ちあがる。エネルギッシュだ。3〜4頭のイルカが僕のまわりでジャンプしている。2メートルほどある身体は風船をいっぱいにふくらましたときのようにピチピチに張りつめ、全身にパワーがみなぎっていた。彼らが頭上を飛び越える度、落ちてきはしまいか、尾ビレが当たりはしまいかと心配になる。リアルなのだ。その身体には黒っぽい斑模様まではっきりと見える。
僕はただ驚嘆してそのエネルギーに包まれていた。
それはこれまでの僕のイルカに対するイメージをはるかに凌駕するパワーと大きさだった。

5分くらい経っただろうか、イルカたちはどこかへ去って行った。部屋は再び静寂を取り戻し、僕は静かに彼らのエネルギーの余韻を感じていた。
そっと目を開くと、そこは何も変わることのない自分の部屋だ。僕は図鑑を取り出し、ページを繰った。するとそこには先ほど現れたイルカとまったく同じ黒い斑点を持つイルカの写真が掲載されていた。
”マダライルカ”
体長オス223センチメートル、メス207センチメートル。体重100〜110キロ。
僕は確信した。”彼らはここへやって来たんだ”
”ありがとう、ドルフィン!”
心からの喜びとパワーがあふれ出し、全身が笑いに包まれた。