いいカメラを下げたおじさんがいたのでシャッターを押してもらったが、
屋根の上の十字架の先が写真に収まっていなかった。
街と教会の途中にあったベンチに座って果物を食べた。
手が果糖でべたつく頃にはアリが登ってきていたし、満腹したので、全部は食べずに、街に戻ることにした。
おじいさんが一人うろうろと歩いていたので
“マティスの教会?”と聞くと“そうだ”というので道を教えてあげた。
街には人用の飲み水蛇口があったので、ペットボトルに水を入れて、それを飲みながらバスが来るのを待っていた。
男の子が“水ちょうだい”と寄ってきたのであげると、飲み口を丸ごと咥えて飲むので、ちょっと嫌だな、と思った。すると“私にも”という感じで男の人が来て、どうぞ”と言うとほとんど飲み尽くしてしまった。
彼らは親子だった。
バスに乗ると、席はたくさん空いているのに“いいか”と、親は子を前の席に追いやって、私の隣に座り、“君はきれいだ”というようなことを言い出す。
面倒なので とぼけていたが、相手はなかなか退かず、一緒にドライブしようと言う。フランス語分からない、という振りをしていると男は道端に止まっている車を指差し“トワ(一緒に)”と言った。
私は“トワ?(3)”と言い返した。
彼はちょっと怨んだような表情をしてすぐ、子を呼び、何もない場所でバスを降りた。
ニースに一人戻って、ほっとした。
ペットボトルの中に残った水を、美味しい水なのに!と思いながら捨てて、飲み口を水道で洗う。海沿いに公園の噴水を見たりしながらユースのそばのビーチまで戻った。夕方の海の水は、Hの言うように汚れていた。
岩に座ってグレープフルーツを食べてぼーっとしていたら、ちょっと眠ってしまった。
今日も夜行に乗って明日はルルドへ行く。
ユースに戻り荷物を取って、バス停で駅に行くバスを待った。もう一回Hに会えたらいいのに、と思ったが会えなかった。
駅行きではないバスに乗ってしまい、運転手に言うと、お金を取らずに降ろしてくれた。駅までかなり近い所に運んでもらったので、駅まで歩いていった。
電車が来る前に何か食べようと、ユーレイルパスに日にちを書き込んでから、食べ物屋を探しに駅の外に出た。楽しそうにビールを飲んでいる人達。 “君、君、ちょっと待って”<続く>
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