どうやって道を見つけていったのか不思議だけれど、
ドゥオモに戻れ、アーケードの両替所で1万円分のT/Cをリラに両替した。
最期の晩餐の閲覧時間はとうに過ぎていたので
レオナルド・ダ・ヴィンチ科学技術博物館へ行った。
日本語のパンフレットがあったので貰い、いろんなものを見た。でも個々の説明はすべてイタリア語なので楽しいのか何なのか分からなかった。
喫茶室へ行くと瓶に入った紅茶みたいなものがあり、走り回って疲れてもいたので、それを飲むことにした。
店のおじさんが“リモン?ピッチ?”と聞く。
リモンと言おうと思ったが瓶の中に漬かっているものが桃らしい。
“ピッチ。”とお願いすると、氷をいれて冷たくした紅茶をくれた。
桃の味がして幸せな気分になった。ここは涼しくて静かな中庭。
ミラノ中央駅に戻り、フィレンツェ行きの電車の切符を買う。
切符窓口は長蛇の列(言葉の出来ぬ私は列を更に長くしたに違いない)。
切符を買うのには決まりがあるらしく、私は希望の便よりも一時間後の切符しか買うことが出来なかった。切符係は私に切符を渡す前に何か言ったが私が疲れきっているのを感じて一度奥に戻り、切符の裏を見せてまた何か言い、切符をくれた。
フィレンツェに着くのは夜9時になってしまうことになった。
まだ宿も取っていないのにその時刻では大変なことになるかも。
売店でテレフォンカードを買いフィレンツェのユースホステルに電話したが
“フル(full=満員、ということ)”と言われた。
それから私はガイドブックのコピーを片手に、宿泊代の安い順に次々電話をかけまくった。へんなイタリア語で。そしてどうにか宿がとれた(ただし約4000円の部屋!)。
荷物を受け取りに行って、電車に乗ろうとするとホーム係員に留められた。勝手に乗り込まれちゃこまる、という感じだ。切符を見せたが彼女は解さない。
そうか、と思って私は切符の裏を見せた。
そこにはスタンプが押され“ミラノからフィレンツェへ”などと書いてあった。
電車に乗るとき必須なのはそのスタンプらしい。ホーム係員は私を案内して“この車両に乗ってね”みたいなことを言った。
車窓は楽しげだったが、疲れて私はうとうとしてしまった。
フィレンツェにはきちんと9時に着いた。
いきなり夜だ、怖い、と思っていたのに、まだ明るかった。
ホテルは駅からすぐだったが暗い路地、という感じの場所にあった。
インターホンを押して“ジャポネーゼ。”と言うと、中に入れた。
電話でのやり取りで名前をうまく聞き取ってもらえなかった結果“日本人だね”ということで部屋を確保したのだ。
部屋はシャワー付きのシングルルーム、冷房はない。窓の向こうは暗い建物。
一人になって行動するはじめての夜。夜といっても明るいし外へ出ようと思ったけれど、お金のことが不安で疲れて、だめだった。ともかくシャワー付きの部屋なのをいいことに、洗濯してロープを張って干して寝た。
涼しくて、外では楽しそうな声が響いてて、羨ましかったけれど、眠った。<続く>
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