通し番号「11」ニューヨーク(7)

「散歩、そして一人」


フェリー乗場の公園からウォール街の方に向かって歩いていくと、途中で道が合流する、その場所に牛がいる。ブロンズなのか、大きさは高さ2m長さ5m幅2mぐらいの、挑む感じのかっこいい牛。もう恥ずかしくも何ともなく、
「M、写真とって!!」
(Mは写真を撮るのがうまい。
 牛を皆様にもお見せしたいが、スキャナがない。残念だ。)

1997年(平成9年)は丑年。これから私はスペインに行って牛を見るつもり。
今年は牛だ!という気分だから、ここで牛に出会えたのは何だかうれしい。

ウォール街を横目に見ながらワールド・トレード・センターに向かって歩く。
私はニューヨークに特別な思い入れはない。‘自由の女神’と、MOMA‘ニューヨーク現代美術館’‘エンパイヤ・ステート・ビル’(勝手に自分でえんぴつビルと愛称を付けている)にさえ行ければいい。と言うと、Mが行先を決めてくれた。私が展望好きだから。このビルがニューヨークで一番背の高いビルで、ここに登ればエンパイヤ・ステート・ビルも眺められる。

ビルに着いた。
ワールド・トレード・センター、世界貿易センター、池袋、台北、香港、いづれも迷路のようだが、わけてもニューヨークは飛び抜けて迷路度が高く広いようだ。
ぐるぐる回って、展望への入り口に辿り着いたが、また列が....どこまで続くの?
本当に一周して、最後尾らしいところに着く。ものすごく長い。
“すいません、こちらが列の最後ですか?”
“そうなんだよー”
と待つのはつらいなぁという表情で応えてくれる。どうしても、ということなら、世界中の人が行列を作る....私達はというと、並ぶのはやめてしまった。

Mは行きたいツアー(注:ガイド付の見学のこと)を一つ抱えていた。他に行きたいところは私と同じである。Mは私を一人にしておくのは悪いと思っているし、そのツアーに参加すると、他に行くところを省かなければ時間が足りなくなる。でも私は知っている。Mがそのツアーに参加しなければ後悔することを。

私達は簡単に相談をして、一旦別れて、2時間後に落ち合うことにした。
サブウェイの中で、M、
「サブウェイはたいへんっていうけど、東京で地下鉄使ってれば問題ないね

あ、もうすぐyuちゃんは乗り換え、AとDは急行だから乗らないでね」
「わかったー、じゃ、あとでね。」

私は一人、ホームに降りた。
Mの言うとおり、サブウェイなんてちょろい(楽勝)。と階段を登る。
どこへ行こうかな。2時間もあったら、いきなり待ち合わせ場所に行ってもなぁ。やはりここはあの有名な公園に行くか、ただ 街を散歩 も してみたいなぁ。
あ、電車がホームに来た、乗らなくちゃ。
と乗り込んだのだが、あれ、なんだか様子が違う。今までのメトロと違い、椅子が窓に沿った横長ではないボックス型になっている。乗っている人も、被ったシルクハットからくるくるの白髪がうっそうと伸びていたり、ガムをくちゃくちゃ噛んでいたり。それに電車の速さが違う。あ、駅を素通りした。<続く>

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