通し番号「10」ニューヨーク(6)

「女神様と天使の歌声」


そうして何枚も女神を撮っているうちに、M、
「ねぇ、あれ見て....」
....女神を取り巻いてうごめくもの。人。とぐろ状に並んでいるらしい。
「やっぱり、むりだね」
女神様に登るのはあきらめて、ほけーっと海を見ているうちに、フェリーは対岸に着いた。引き返すのだからと乗ったままでいると“降りなさい”と言われる。往復する観光客も、一旦降りて乗りなおすのがルールらしい。

同じフェリーでの復路。また海をぼーっと見る。青いなぁ。きれいだなぁ。・・・私は女神様が好きになった。他の観光客からカメラを渡されるので“シュア”と言ってシャッターを押す。“どうも(Thanks)”とうれしそうに去る観光客。この‘サンクス=thanks’だが、私が言っても滅多に通じない。発音の出来る人はいいが、そうでない人は丁寧に‘Thank you=サンキュー’と言おう。

私は‘ローマの休日のアン王女’になったつもり(笑)で“Thank you.”と言っていた。
皆様も好きなお手本を見つけて Thank you だけは体得してから出掛けよう。
フェリーを降りて、すこし歩くと公園がある。緑がきれい。
7月なのに若葉のようなあおさ。
「ちょっと歩こうよ。」と言って公園を歩いていると、コンサートがあるらしい。
「ちょっと行ってみようよ。」と私は行ってしまう。
パイプ椅子がたくさん並べられているので、座ってしまう。すると(ビバリーヒルズ‘高校’白書のアンドレアのような)女性が近づいて来て、
“ようこそ、いらっしゃいました。今夜も催しがあります。ぜひ来てくださいね”
と紙をいっぱい渡してくれる。やさしい。
うれしくなって内輪で勝手にアンドレアと命名する。

アンドレアは司会も務める。それによるとメンバーの一人が出られなくなったらしく、女声2名男声1名、キーボード1名、他1名がステージに出る。そして歌が始まった。おそらくジュリアード音楽院の学生だろう。クラシックの天使の声。

うっとり、ぼーっと聴いて、しばらく。
実は観光できる日は今日一日しかなかったことを思い出し、席を立つ。
時間がない。かなしい。私達はアンドレアに今晩のことを尋ねて、去った。

「M、私、ぼーっとしてばかりでごめんね。」
「いいのいいの!楽しいよ!私、昨日までちゃきちゃきに駆け回ってたし、

チャイナタウンもリトルイタリーもお買い物もバッチリしたし、
ジャズクラブも行ったし、あぁ、あれだけは連れていってあげたかったなぁ」

・・・ホットドッグ屋さんだ!買って食べ歩く。
街は大変大きい。連なり続ける高層ビル。人もたくさん。ちょっとくらくらする。
「M、食事なんて、毎日こんなのばかりだったんでしょ。」
その通りとのことだが、Mが昨日まで一緒にいた友人たちは夫妻で、その夫の希望でステーキも食べたそうだ。そんな話をしているとき、牛を発見した。<続く>

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