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 元は河の中洲だったのだろう。四方を河に囲まれたこの町は、上から見ると殻を剥いたピーナツのような形をしている。島の左右にそれぞれ3本、計6本の橋で町の外に繋がっている。
 大雑把にくくれば、西は都市だ。その職業に関わらず、住み暮らし、また勤めに行くところである。東は、沿岸部こそ多少街の風情があるが、東に行くに従って段々農村へと繋がって行く土地である。
 その間にあるのがこの大きな河と、その上に浮かぶこの町だ。
 この町は都市と農村のどちらにも属さない。歌舞音曲、そして酒と女(求めに応じて或は男)を供する町である。
 特に権力の保護があって独占しているわけではないし、また独占できる商売ではない。それでもこの町が他地域の同業者と一線を画しているのは、その質の高さと全てを取り仕切る男の存在であろう。
 それがこの青木町の要、MZD――自称・他称「神」という存在である。

「さ、汚くしてるけど入って」
 スギはポエットを促した。スギとレオが2人が住むのは島の西側、西中之橋の近くである。正確に言うなれば「調達屋」の事務所兼住居兼倉庫、と言うことになる。
 ポエットは興味深げに部屋の中を見渡した。応接セットの後ろにパーティションが置かれ、奥に階段と、倉庫に続くらしい扉が見える。階段は2階へ伸び、部屋の扉が3つこちらを向いていた。
「ゆっくりしてていいから少し、というか2時間程待ってもらえないかな。昨日寝てないんだ」
「あの、でも急ぐんです」
 大人しくしていたポエットが、急に不安そうに2人を見上げる。スギは苦笑して彼女の頭を撫でた。
「ごめん、わかってるけど本当2時間だけね。」
「今寝ないと、働けない」
 ぼそりと言い、レオはソファに横になる。
「まぁ、乱暴なようで働き者だからね、レオは。安心していいよ」
 苦笑する目をその背に投げてから、スギは部屋の片隅にあるパソコンを指差した。
「2時間、待つの辛いかもしれないけど、あれ以外は何触ってもいいから」
「あの、スギさん」
 ポエットは階段を上りかけるスギを呼び止めた。
「何かな?」
「……わがまま言いました、ごめんなさい」
「大丈夫、こっちも商売だからね」
 じゃぁ2時間後に、とスギは笑ってポエットに手を振った。

 2時間後。
 スギは、喧しく鳴るアラームを止めて目を擦る。眠っていたいという欲求を頬ひとつ叩いて切り捨て、起き上がった。
「……超過勤務手当、MZDに払ってもらわないとね」
 2時間、というのは長いようで短い時間である。夢を見ている暇も無い程に。スギは身支度を整え直してドアを開けた。
「おや、レオ」
 ドアのすぐ横に座っていたレオは、自分の唇に指を当てて沈黙を促し、目で階下の一点を見るよう示す。
「?」
 スギが目をやれば、戸口のところにポエットが座っている。何者かと話が弾んでいるようだった。
「あれ、けろさんと、けろよん?」
 小声で聞けばレオは頷く。
 けろさんとけろよんとは、2匹の小さな蛙である。飼っているという程ではない。戸口を出た所の草むらをテリトリーにしているから、名前をつける程度に愛着があるだけのことだ。
「……話、弾んでるね」
 蛙と。スギが言うとレオは無言で頷き、言った。
「本物、か」
 スギは苦笑する。
「『神』の棲む町だよ?ここは」
 天使が出た位、何の不思議もない。
「知ってるけど、さ」
「10年住んでもまだ慣れないかい」
 レオはこの町の生まれではない。河を西へ渡った街の生まれだ。
「悪かったね」
「悪くはないさ。まぁよかったじゃないか、本物で。行こう」
「飯どうする?」
 レオの問いにスギは首を傾げて考えるそぶりを見せた。
「帰りにしようよ。姫様お待ちかねだ」
 まずは何はともあれMZDの店へ。スギは朗らかに階下のポエットに手を振る。
「お待たせ、ポエットちゃん。行こうか」


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 続き、ます。まだ。今前の回の日付見て「1年も放ったらかしかえ!」と軽くびびったところです。説明文ばっかりで申し訳ない、次からちゃんと動く、予定です。(05/08/18up)
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