『Firecracker』→2 歓楽街の裏町。夜は賑やかだが昼は二日酔いを抱えたように白っとぼけて薄っぺらい。そこを2人並んであるく。 「さて、とこれを届け終わったらお茶にしよっか」 ふあ、とスギが盛大にあくびをした。 「僕はどっちか言ったら帰って寝たい」 首をこきりと回してレオが呟く。ゆうべは夜っぴて注文の品の調達と配達に走りまわっていたのだ。それが稼業とは言え、眠い事は眠い。 「まったく、いくらこの町だって結構苦労するんだけどね……M145を5発発射筒もつけて一晩で、なんてさ」 スギは重そうな包みを持つ手を替えた。中身は携行型ミサイルの弾頭3発。発射筒と残る2発の弾頭はレオの肩に乗っている。 「でも手に入らない訳じゃないから断わる訳にいかないし」 レオは空を見上げた。今日も空は狭いながらも高く蒼い。商売・調達屋。お使いの代行からミサイルまで何でも調達し、どこへでも配達する。それが2人の稼業だった。 このミサイルがどう使われるか迄は2人の知った事ではない。先日「銃と弾、何でもいいから大至急」という仕事の電話はBGMに銃声と破裂音が響いていたし、この辺りではそれも日常茶飯の事だ。 「さ、帰ろうか」 配達を終わらせて、スギは大きく伸びをした。レオはぐるりと肩を回す。町の片隅の小さな倉庫が2人のねぐらだ。そちらへ歩きかけた足は、しかし呼び止められて止まった。 「おや、お2人さん。丁度良かった探してたんだ」 甘ったるいハスキーボイスに豊かで長い金髪。この美女が男である事に一瞬で気付くものはそう多くない。 「やぁ、ハニー姐さん何の御用かな?」 スギがすかさず営業モードの笑顔を作る。商談はスギの分担だ。 「あぁ、あのさ……」 ハニーは視線を自分の右後方にやった。そこに、ハニーにぴったりつくようにして女の子が立っている。年の頃は10才になるかならないか、というところか。目が合うとはにかむように笑って、一礼した。ツインテールの豊かな金髪がふわりと揺れる。 「あれ?何、ハニーさんの妹?」 「やァだ、妹はあのはねっかえりで十分さ、拾い物だよ。で、この子を届けてやっておくれな。神様んとこへ行きたいんだってさ」 「神様?」 スギは怪訝そうにハニーを見返した。 「そうさ、MZDンとこ」 この界隈に『神』と名乗る男がひとりいる。それがMZDだ。神、という自称が本当か冗談かはともかく、この界隈の名物であり、顔役である。 「でもMZDんとこならハニーさんが連れてきゃタダですよ?」 「トンチキなことお言いでないよ調達屋。知らないのかいMZDはここんとこ数日行方不明だよ?」 スギはレオを振り返り、レオは首を横に振った。珍しく店を閉めていた事は知っている。が。 「僕らてっきりハニーさんとこにでも居続けしてんのかと……」 スギが言うとハニーは首をすくめた。 「あたしンとこにも妹んとこにもいないしNKのバーにも3番街のミュージックホールにもお見限りらしいよ。変だろ?」 その言葉が本当なら、MZDはこの町のどこにもいない、ということに等しかった。それは普段の事ではない。 というよりむしろ異常事態だ。この界隈の誰よりも古くここに居て、(何故か、昔から容姿が全然変わらないというのが彼最大の謎だ)いつもこの町のどこかにいるのがMZDという存在だからである。 「こっちも探す程暇はないし、かと言ってこの子をひとりにしとく訳にもねぇ。頼むよ。払いはMZDがするだろうさ」 「もし『知ったこっちゃねェや』って言われたら?」 「そんときゃ仕方がない、アタシが払おうか。……行き掛り上、ね。」 ハニーが他人の払いまで払うと言うのは珍しいことだ。当たり障りがないような表現でスギがそれを指摘するとハニーは苦笑した。 「ま、『神様』の親戚である事には違いないだろうよ?ほら」 ハニーは優雅な身振りで体を捻ると、自分の背後に隠れる少女を示した。正確には少女の、その背にあるものを。 「……わぉ」 レオが思わず口笛を吹いた。少女の背には純白の、翼。頭の上にも、ほのかにリング状に光るものが見える。羽根も、輪も、人工的なアクセサリーでないことは何となく分った。何となく、としか言い様のない感覚。大昔のSF映画に出ていたものがそのまま3次元で目の前にあるような、絵に描いたような天の御使いの姿。 「ね?『天使』が『神』んとこ行くんなら手伝った方が後生がよさそうじゃないかぇ?」 スギは小さく笑って相棒を振り返った。レオが仕方ない、というように肩を竦める。 「OK、引き受けよ。じゃ、仕事はこの子の保護とMZDの捜索、引き渡しだね?とりあえず期限は無しで」 「成功報酬でMZDと掛け合いな。あんまりかかるようなら実費の助け位はあたしもするからさ」 「また随分入れ込んだね?」 スギが聞くと、ハニーは煙管に煙草を詰め、一息吹かす。 「可愛いものは好きなんだよ。おかしいかい?だから坊や達も失礼しちゃいけないよ」 勿論、とスギとレオは声を合わせた。ハニーを怒らせると後が怖い。引き受けると決まったら、まずは知るべきことがある。スギは少女の前へしゃがんで目線を合わせた。 「さ、行こうか。……名前は?ちなみに僕はスギ、あっちがレオだ」 「ポエット」 はにかんで少女は笑い、よろしくお願いしますと頭を下げた。 −−−−−−−−−
続き、ます。どれ位の長さになるんだろう……。好きなものをごった煮にしてアクションを書きたいなぁと思っていたらこのように。クーロンズゲートとアウトロースターと特攻野郎Aチームとステップファザーステップを、秘伝の割合で足して水で割って5倍希釈な感じです。 とりあえず男所帯に降ってくるのは美少女でなければならないお約束。何はともあれ続き書かないと。(04/07/7up) →2 BACK |