(79)絵の批評


              

「あの長身の婦人は誰ですか」「ギャルダ・アンダーソン」「随分辛口ですね」マドマゼ
    ル・ドゲの家で絵の批評会。フランス人ルシアン・グガニエ、カナダ人ヘラルド・クルン
    ダー、日本のトシオ・ムナカタ3人の画家が集まる。庭先のベンチに3人の絵が並ぶ。「
  あの絵は、何なの、あれがプロヴァンス、理解できないわ」ヘラルドの絵は、単純な色形
  でプロヴァンスの印象を表現した抽象画。ギャルダ・アンダーソンの矛先がヘラルドの絵
  に向かう。「僕にはこう感じるのさ、カナダと違ってプロヴァンスは、こじんまりした印
  象です」ギャルダの激高とは対に落ち着いた表情のヘラルド。「もう少しましなプロヴァ
  ンスは、ないの」具象画にしか絵の価値を認めないらしい。随分身勝手な見方だ。一方そ
  れを堂々と主張する姿勢にあこがれる。1975年春、ギャルダとの初めての出会い。そ
  れから20年近く、このおしゃれで個性的なオランダ夫人との付き合いが続く。

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(80)捕虜生活