「トシオ、ホテルに日本人がいるらしいよ」マイクがアトリエに駆け込んでくる。「足に
まめを作って動けないらしい」セグレで日本人を見るのは頻繁じゃないのですぐ話題にな
る。「へえ、どうしたんだろう」「始めまして、鈴木です」ベッドの上で上体を起こした
私と同年配の男性。約20キロ離れたオランジュの街から歩いてやって来た。成る程足に
包帯を巻いている。「ついプロヴァンスの景色に見取れて」約20キロを徒歩で来るのは
尋常ではない。楽をしたければバス、タクシーがあるのに。又、おもしろい人に出会った
。「ホテルでは、滞在費も大変でしょ、家に来ませんか」写真家鈴木氏との付き合いがこ
こから始まった。モチーフへのこだわり、自分探し、プロヴァンス、共通点が話す毎に出
て来て意気投合。20世紀パリを撮ったロバート・キャパ、ムジェ、フランスの写真家の
話しはエコー・ドゥ・パリの画家達と重ね合わせて興味深かつた。それから20年近い付
き合いになる。