「日本人の方ですか」「はい、外にムナカタのポスターがあったので、入って来ました」
2000年夏セグレ村で荒巻夫妻と初めて会った。油彩の個展をアトリエ・ドゥ・セグレ
で開催中。「どちらから」「シリコンバレー」「えっ、アメリカの」「はい」30代の仲
のいいカップル。荒巻氏はちょっと太り気味、奥さんは細身、態度や風貌に特有の日本人
らしさがないので興味を持って質問。奥さんが、プロヴァンス大好き人間で、今回の旅行
の企画も全部一人でやったとのこと。「私以外にも、プロヴァンスに熱い人間がいるんだ
」親密感を覚える。「どうですか、300年前の部屋で一緒に夕食をしませんか」突然の
申し出に顔を見合わせる二人。「いや、大した物はないんですよ。でも食物、部屋、空気
めずらしいかなと思って」天井には、むき出しの黒い梁が幾列にも並ぶ。暖炉・椅子テー
ブル・家具・照明、気取らないプロヴァンスの空気がある友人宅の居間を拝借。「さあ、
召し上がれ」