(72)季節の香り


              

エヴァマリーン通称エヴァの店は、村の始めにある。入口横、いちぢくの木が、殺風景な
石作りのアクセントになっている。おみやげ・アイス・飲み物・絵葉書種々雑多、もの珍
   しさでつい入りたくなる。「サリュー」太っちょチェリーがこちらを見ている。私と同世
   代、夫婦で店番をする。店先では香を焚き、早獲りの果物が手のひらサイズの篭で売って
   いる。アブリコ・さくらんぼ・ぶどう、実家が農場で、早い、新鮮が、売り。ぶどうをつ
まみながらブラブラ観光、人の心理をよく観察している。コマーシャルは、変化の少ない
プロヴァンスでも盛ん、売らんがため色々工夫を凝らす。ワインのラベルも最近は、原色
でハデ目、昔の落ち着きはない。押花入りのロウソク、名前を作れるサイコロ型のネック
レス、インテリアを兼ねた木製のパズル、毎回新種が仕入れてあっておもしろい。「税務
署の指導で書いてるのさ」販売した品数を逐次メモ。忙しいが、季節の香りがエヴァの店
から漂う。

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(73)歌え、歌えプロヴァンス