大佐の家の近くで制作していて何人か思い出に残る人々に会った。マダム・フラナガンも
その一人だ。ワシントンからヴァカンスでプロヴァンスにやって来た。例の光のトンネル
に酔って制作中、その光の奥に現われた。「ハロー」アメリカ人は陽気だ。「ラブリー」
プロヴァンスがとても気に入っていた。水彩画を数枚見せてくれたが、外見とは裏腹に絵
が縮こまっている。「ナイス」感動を絵に表わす行為自体がすばらしいと褒めた。自分で
もその辺のことは、わかっているらしく「コムシー・コムサこんなもんさ」素直に喜んで
いた。「お墓の先に住んでいるの、遊びに来ない」次に会った時は、ミスターフラナガン
も一緒だった。ロイドメガネをかけたインテリな風貌は、ヤンキーと言うよりイギリス紳
士を思わせた。「キャシーの絵もすばらしいよ」夫婦の会話も思いやりに満ちていた。夫
妻がプロヴァンスを立つ前夜、幸子とお別れの挨拶に行ったが生憎留守、入口のドアの下
に小石でGOOD−BYのメッセージを残す。