(67)軽く軽く、もっと軽く


              

ブナの木の雑木林が少し登り勾配で続く。枝葉を通して見えるプロヴァンスの平野。木の
葉のざわめきが空気を暖める。「ガウォ、ガウォ」突然犬ボニーの荒々しい出迎え。「サ
・スフィー充分、充分」犬との接触も当地に来て馴染んだ。プロヴァンスの犬は、鎖に繋
がれず自由だ。その分不慣れな私には恐怖が増す。襲って来るんじゃないか、全て妄想に
過ぎなかった。「ボンジュー、クリスチアーヌ」台所の窓から手を振っている。今朝は、
フロニエ家の庭がモチーフだ。白壁にゼラニウムの赤が映える。きょう竹桃のピンクもプ
ールの水色にきれいだ。 チギョル、ルタン、ローマガン、芝生の若緑に並んで濃い。団扇
に似たブルーの木のシルエット。その下には、陽光に光り輝く葡萄畑が続く。この感動を
どう表現すればいいのか、今朝の仕事だ。小鳥のさえずりが木々を通して聞こえてくる。
「そうだあの音色のように軽く軽く、もっと軽く・・」絵筆が動き出す。

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(68)アニタの庭