小児慢性特定疾患研究事業をめぐる状況
小児慢性特定疾患研究事業は厚生労働省が昭和49度より行っている事業で、簡単に言うと、難病の子どもの治療費の中の自己負担の部分を国が全額補助するという制度です。ところが、国の財政事情もあり、この制度のための予算を今後も安定確保することが難しい状況になっており、今後、制度の廃止、一部自己負担の導入、法制化といった方向が論議されています。
このあたりの状況は非常に複雑で、関連する小児難病の親の会(先天性代謝異常症は小児慢性特定疾患の対象になるので、ロイコジストロフィー患者の会は当事者)も、何年にもわたって論議やアピールを続けてきましたが、ここにきて時間的猶予がない段階になっています。
小児慢性特定疾患は全国一律の国の事業ということもあり、孤立しがちで、大きな負担を抱えて病気の子どもとともに生きている先天性代謝異常症の患者の家族にとって、非常に大きな意味が歴史的にあったと思います。しかし、制度の内容やその運用には多くの不自然な点、合理的でない点があるのも事実です。そのあたりについてもおいおい検討していきたいと思いますが、現時点でこの制度が存続の岐路に立っているわけですから、まず、そのあたりについて順次フォローしていきたいと思います。
第1回小児慢性特定疾患治療研究事業の今後のあり方と実施に関する検討会
小児慢性特定疾患研究対策事業に限らず、この手の国の制度は、多くの場合、行政担当者(つまり官僚)と一部の専門家(つまり医者)によって進められ、必ずしも、その対象である患者やその家族の意見を十分に反映してきたとはいえないのが実情です。このままでは、小児慢性特定疾患研究対策事業が安定維持できないということは数年前から言われてきたわけですが、その中で患者の(親の)会はその最善の方向性の模索に取り組み、厚生労働省と協議、提言を行ってきました。この際、「患者サイドの意見を反映しろ」というのが、当然ながら患者の会側の重要な主張であったわけです。
ところが去る2001年9月14日に、厚生労働省による「第1回小児慢性特定疾患治療研究事業の今後のあり方と実施に関する検討会」が抜き打ち的に開かれました。この会は、簡単に言うと、小児慢性特定疾患研究対策事業の今後を考える上で、厚生労働省の担当者が、広く一般、専門家の意見を聴取し、今後の施政の参考とすることが目的であるとされています。しかしながら、この検討会の発足は、いままで小児慢性特定疾患研究対策事業のあり方について取り組んできた患者の会には直接通知されていません。また、委員として「難病の子ども支援全国ネットワーク」の小林信秋氏が指名されているものの、患者の会の代表は指名されていません。この検討会の具体的な告知は厚生労働省ホームページで直前に発表されたのみであり、委員としての参加だけではなく、関係者としての傍聴にも(厚生労働省サイドとしては)あまり積極的でないことがうかがわれます。
私は直前にたまたまこの検討会があることに気づき傍聴したので、その内容を紹介します。
小児慢性特定疾患治療研究事業の今後のあり方と実施に関する検討会の設置について
1) 設置目的
小児慢性特定疾患の治療研究事業を行い、もってその研究を推進し、その医療の確立と普及を図り、併せて患者家族の医療費の負担軽減にも資することを目的として、医療費の自己負担部分を補助する制度である小児慢性特定疾患研究対策事業(小慢事業)がしょうわ49年度以来実施されてきたところである。
創設以来、四半世紀が経ったことから、今日的視点で本字業の目的、内容等を見直し、今後とも慢性疾患をもった子どもたちに適切な医療やサービスを安定的に提供できる事業となるよう検討するため、有識者と患者代表等のご意見を頂くことを目的として、本検討会を開催することとした。
2) 検討課題
概ね次の事項等について検討する
- 小児慢性特定疾患研究対策事業の見直しの考え方について
- 医療サービスのあり方(対象疾病、対象者)について
- 福祉サービス(在宅福祉、就学、就労)等、調査研究の内容について
- 自己負担等経済的側面について
3) 構成
本検討会は、医療、患者団体、行政、福祉、教育、報道機関等幅広い分野の関係者を委員として参集する(おおむね13名程度の委員を参集)。
氏名 |
所属 |
及川郁子 |
聖路加看護大学看護学部教授 |
大久保さつき |
東京都衛生局健康推進部母子保健課長 |
加藤忠明 |
日本こども家庭総合研究所小児保健担当部長 |
神谷齋 ☆ |
国立療養所三重病院 |
鴨下重彦 ★ |
賛育会病院長 |
小林信秋 |
難病の子ども支援全国ネットワーク専務理事 |
高松鶴吉 |
九州保険福祉大学保健科学部教授 |
永井邦子 |
和歌山県小児保健福祉相談センター長 |
南砂 |
読売新聞社編集局解説部次長 |
柳澤正義 |
国立大蔵病院長 |
山城雄一郎 |
順天堂大学医学部小児科教授 |
山本昌邦 |
横浜国立大学教育人間科学部教授 |
雪下國雄 |
日本医師会常任理事 |
※なお、検討会冒頭で、鴨下氏が座長に選出され、神谷氏が副座長に指名された
4) 検討スケジュール
平成13年度中を目途に、小児慢性特定疾患研究対策事業のあり方について、検討を行う
小児慢性疾患を考えるフォーラム
厚生労働省の検討会のスタートを受けて、難病の子ども支援全国ネットワーク主催のフォーラムが開催されます。申し込みは難病の子ども支援全国ネットワークもしくは、高橋まで。
【緊急開催/政策提言 小児慢性疾患を考えるフォーラム】
小児慢性疾患のあり方を考える検討会がスタートすることになっています。私達は親の立場から、子ども達のためのより良い医療、福祉、教育そして社会を考えてきました。子ども達は病気をもちながらも地域の中で皆さんと懸命に生きています。医療費を補助するだけでない、病気の子ども達を社会のシステムの中に組み入れて、みんなで支えあう、そんな新しい小児慢性疾患の制度・仕組みをどのように考えるのか、親たちのみでなく、関係する様々な立場の皆さんと議論するためにこのフォーラムを企画しました。
日 時:平成13年10月27日(土) 13:00〜16:00
場 所:日本出版クラブ会館
新宿区袋町6 03-3267-6111 地下鉄大江戸線牛込神楽坂より徒歩3分
主 催:特定非営利活動法人難病のこども支援全国ネットワーク 親の会連絡会
参加費:無料(定員150名/定員に達し次第締め切らせていただきます)
開催の趣旨説明:小林信秋(難病のこども支援全国ネットワーク専務理事)
親の会の提言発表:山下泰司(日本水頭症協会代表)
パネルディスカッション:
パネラー
竹内公一(胆道閉鎖症の子供を守る会副代表)
長谷川雅子(XPひまわりの会/色素性乾皮症)
堀越晶子(つくしの会/軟骨無形成症)
山城雄一郎(順天堂大学小児科教授、難病の子供支援全国ネットワーク会長)
武田鉄郎(国立特殊教育総合研究所病弱教育研究部主任研究官)
谷口隆(厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課長)
座長
鴨下重彦(賛育会総合病院院長)
第2回小児慢性特定疾患研究対策事業の今後のあり方と実施に関する検討会
難病のこども支援全国ネットワークから、第2回の検討会の傍聴の募集要領が送られてきました。厚生労働省のホームページには、まだ掲載されていないようです。
<第1回> ※ママ
1.日時 平成13年10月10日(水) 14:00-17:00
2.場所 千代田区霞が関1-2-2 厚生労働相専用第21会議室(第5合同庁舎17階)
3.議事 (1)資料説明 (2)自由討議 (3)その他
4.傍聴者 若干名
5.募集要項
- 傍聴の申し込みは、検討会の開催の都度に実施します。
- 第2回検討会の傍聴申し込みの締め切り日は10月6日です。
- 葉書、ファクシミリ又は電子メールにてお申し込みください。※別紙参照、電話申し込み不可
- また、希望者多数の場合は抽選となり、傍聴できない場合もあります。(後略)
=別紙=
(1)葉書で申し込みの場合
(2)ファクシミリ又はE-Mailで申し込みの場合
↑細かい注意があるので、傍聴希望の形は高橋まで連絡してもらえば原文をファックスします。また、数日中に厚生労働省のホームページに掲載されると思います。
私は行くつもりですけど、他に傍聴希望の人がいたら連絡お願いします。「名前、住所、電話」がわかれば、「ロイコジストロフィー患者の会」名義でまとめて申し込むことができます。
(2001/10/01)
第1回検討会の議事録
厚生省のホームページに掲載されました
http://www.mhlw.go.jp/shingi/0109/txt/s0914-1.txt
(2001/10/31)
第3回は11/2です。
03/10/28
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