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親の会連絡会による厚生省への要望書提出

要望書提出の背景

 先日、掲示板の方で報告しましたが、難病のこどもの親の会の連絡会の方から、今後、国立小児病院に代わって小児医療の中心として再組織される予定の「生育医療センター」について、難病のこどもの親の立場から要望を盛り込んでもらうために要望書を提出しようという提案があり、ロイコジストロフィー患者の会としても賛同しました。

 要望書の内容については、全国心臓病の子どもを守る会の原案に各患者会から要望を盛り込んだ上で調整したものが下のようになっています。要望書はこのまま提出することになる予定ですが、今後も継続的にアピールしていくような内容なので、ご意見、ご質問のある方はお寄せ下さい。


平成12年5月12日

厚生省大臣 丹羽雄哉 様

成育医療センターの機能充実を求める要望書

親の会連絡会          
幹事代表 落合希子     
(全国心臓病の子供を守る会)

 私共、難病の子どもを持つ親の会では、各団体の会員の多くが国立小児病院の恩恵に浴して参りましたことに深く感謝いたしております。
 平成13年には国立小児病院が廃止され、成育医療センターとして生まれ変わり、小児から成人まで一貫した良質の医療が可能とすることに大きな期待を持っております。また、現在の国立小児病院の担っている小児科部門の機能も充実されるものと期待しております。
 患者にとってより良い医療の受けられる完成度の高い施設としていただきたく、下記のように連名にて要望させていただきます。

要 望 項 目

1.手術時に家族が休息できる待合室の確保
 これまで手術の際の家族は待合室等で子どもの手術の終わるのを待っていました。しかし、手術の間は極度に不安な状態におかれるものです。待機中の家族が専用に使える部屋またはスペースの確保をお願いいたします。

2.宿泊施設の設置
 遠隔地から入院して治療を受ける際、家族が安心して滞在し交流できる施設の整備をお願いいたします。

3.院内託児所
 入院している子どもの幼い兄弟姉妹は、病室に入ることもできず、これまで待合室や廊下で面会時間の終わるのを待っていました。しかし、長い時間幼い子どもが静かに待っていられるものではなく、また、事故が起きないかと心配して面会もままなりません。さらに、感染する病気を持ち込んでしまうことも考えられます。こうしたことから、幼い兄弟姉妹が待ち時間を過ごせる保育室並びに保育士を配置して、安心して面会できるよう整備をお願いいたします。

4.院内学級・保育の整備
 長期治療を必要とする子どものための教育・保育を保障する場の整備・充実をお願いいたします。

5.外来診療の混雑緩和
 病院の待ち時間は慢性疾患の子どもにとって強い苦痛の伴うものです。コンピュータ等の導入により混雑は緩和されるとは思いますが、予約制・紹介制、他の先端医療機関との連携もとっていただき、一層の努力をお願いいたします。また、駐車場の整備もあわせてお願いいたします。

6.外来診療の改善
 成育医療センターにはこれまで以上に各種の疾病のある子どもが来院することが予想されます。当然様々な感染症患者も増加することと思います。一方、免疫不全症等、免疫抑制状態の患者も数多く来院することと思います。これらのことから、待合室の分離やそれぞれの専用の待合室を設ける等の配慮をお願いいたします。

7.相談システムの充実
 医療ソーシャルワーカーや心理士を配置して、子どもの療育に関わるさまざまな問題を相談できる窓口を設置してください。また、在宅への移行の際には、地域医療機関や福祉関連機関との橋渡しに積極的に取り組んでいただきたくお願いいたします。

8.施設設備の拡充・確保
 在宅医療を国は推進していますが、重度の子どもを家庭で療育するには様々な困難が数多くあります。レスパイトケアの機能を成育医療センターで持っていただくことは是非必要です。

9.病院の利便性の充実
 子どもが多く利用することを考慮した、安全で便利、かつ親子に優しい配慮を施設並びにスタッフの皆さんにお願いいたします。

(1)すべてのトイレは、車イスのまま入れたり親子で入れる十分な広さを確保し、乳幼児のためのベビーキープや重ね式子ども用洋式便器などの設備をお願いいたします。また、身体の大きい子のために大きめのベッドを設置してください。

(2)施設内は、小さい患者や具合の悪い患児のために、なるべく配慮のある施設作りをお願いいたします。例えば、連絡通路や風雨よけ等天候不良の際の利用者への配慮がある施設をお願いいたします。駐車場は、歩行困難な患児のため余裕をもって確保をお願いいたします。
 入院に際して、UVカットフィルム等紫外線防御策等、特殊な設備を要する場合には柔軟に対応していただけるようお願いいたします。
 患者と家族が、病気についての知識や患者会等のサポートグループの存在を知るため、院内の図書館を家族に解放していただけるようお願いいたします。これは、医療に対する正しい知識を保護者にもっていただくけるとともに、民間療法に振り回されないためにも必要なことです。同時に、院内学級や託児所利用者のための児童書や絵本などを扱うライブラリーコーナーの設置も提案いたします。

(3)外来・病院でのプライバシーの確保
 診療中の医師との会話を他者に聞かれないために、外来診察室を個室にしてください。また、入院中の患児と家族だけが占有できる空間を確保するために病棟への個室の設置、面会時や手術前等に利用できる個別の専用スペースの設置を。特に乳児が入院する時のために、授乳室などの設備の充実をお願いいたします。

10.他施設との情報交換、連携
 患者数の少ない稀少難病に関して、他施設との情報交換等、連携がスムーズに行われるよう配慮をお願いいたします。

11.医療内容への要望−−インフォームド・コンセントの完全な実施をお願いいたします
(1) 診療内容、検査結果など患者の個人情報を患者側から求められた場合は、速やかに対応していただきたいと思います。
(2) 複数の診療科にまたがって受診や治療を受ける患者と家族に対しては、グループ診療を積極的に推進し、徹底した連携体制がとれるような配慮をお願いいたします。
(3) 特に各科の連携体制が非常に重要となる遺伝相談については、遺伝カウンセラーを中心とした専門家を擁した専門外来を設置し、患者とすべての家族に対しての診断や総合的・長期的視野に立った最新の情報提供・カウセリングが行われることを望みます。

以上

◎要望団体(五十音順)
SSPE青空の会(亜急性硬化性全脳炎症)
 つぼみの会(インスリン欠損症)
あすなろ会(若年性関節リウマチ) 
日本水頭症協会
外胚葉形成不全症の会
日本二分脊椎症協会
SMA(脊髄性筋委縮症)家族の会 
日本ムコ多糖症親の会
カモミールの会(5P−症候群) 
日本レット症候群協会
人工呼吸器をつけた子の親の会 
XPひまわりの会(色素性乾皮症)
全国心臓病の子供を守る会 
Four-Leaf CIover(希少染色体異常)
全国「腎炎・ネフローゼ児」を守る会 
ポプラの会(低身長児・者友の会)
竹の子の会(プラダー・ウイリー症候群) 
ミトコンドリア病患者・家族の会
胆道閉鎖症の子供を守る会 
無痛無汗症の会「トゥモロウ」
小さないのち「インフルエンザ脳症」 
もやもや病の患者と家族の会(ウイリス動脈輪閉鎖症)
つばさの会(先天性免疫不全症患者と家族の会) 
ロイコジストロフィー患者の会
TSつばさの会(結節性硬化症)

◎連絡先/特定非営利活動法人難病のこども支援全国ネットワーク
136-0073 東京都江東区北砂1-15-8 北一ビル4F
03(3615)7710 FAX03(3615)7719
E-mail:ganbare@nanbyonet.or.jp


厚生省への要望書提出報告

 去る2000年5月12日に、親の会連絡会の代表(全国心臓病の子どもを守る会、胆道閉鎖症の子供を守る会、難病のこども支援全国ネットワーク)と一緒に厚生省の国立病院部を訪れ、要望書を提出するとともに意見を聞いてきました。以下にその内容をまとめますが、これは公式の回答ではなく、その場の談話を筆者のニュアンスでまとめたものですから文責はこちらにあります。内容に関して厚生省に問い合わせるなどのことはご遠慮下さい。また、そういうわけですから、その場で出た話の中で先天性代謝異常に関連した部分を中心にまとめています。

●状況

 国立小児病院の代わりに生育医療センターを作ることは決定済で、設計図などプランはできているが、開院は平成13年度であり、その予算はまだ国会を通っていない。従って、細かいサービス内容や人員配置はもちろん、全般にわたって「こうなります」とか「わかりました、そうしましょう」と言うことはできない。一方、設計などは既に固まっているのでハード面での大幅な仕様変更は現時点では難しい。

1.待合室の確保

 手術室のある階ともう一ヶ所に個室が用意されている。手術中の家族の待合室については6畳弱のスペースか。

2.宿泊施設の配置

 病院設備としては用意しないが、敷地の一部を売却して、マクドナルド・ハウスができることになっている。家族はそこに宿泊できる。

3.院内託児所

これは、患者の会の会員の多くから非常に強い要望が上がっており、当日も強く申し入れました。

 待機スペースは用意しているが、人員配置は責任などのことを考えると難しいだろう。むしろ、マクドナルドハウスの託児・待機スペースをそのように利用することを考えるのが現実的ではないか。もちろん、マクドナルドハウスは公的機関ではないので、われわれからそのように要求することはできない。

4.院内学級・保育の整備

 規模・設備とも十分なものを計画している。教師の派遣などについても既に文部省と折衝済み。

5.外来診療の混雑緩和

 専門家と相談しながら最新の設備を計画しているが、予算などの関係もあり、まだ確定はしていない。旧来(国立小児病院)に比べれば良くなることは間違いない。駐車場についてはいままでの数倍規模で十分なはず。

6.外来医療の改善

 これも最新の設備を導入するために専門家と相談している。ただ、個々の診察室の設備をどのようにし、設計上のどの部屋にどのような機能を当てるかはまだ検討中の段階。診察室は個室としてプライバシーが守られるようにする。また、診察室の前に椅子をだして次の患者が待機するような従来の方法はとらない。つまり、全体の待合室から診察室へ直行するようにするので、診療内容が他の患者に聞かれる心配はない。

7.相談システムの充実

 これは当然考えている。また、在宅の際に地域の保健婦などと連携をとるといったやり方についても検討する。ただ、このあたりは、人員配置や人選ができない(予算が決まらないので)今の段階では「こうなります」とは言いにくい。

8.施設設備の拡充・確保

 検討はしているがまったく新しいシステムの導入というような具体的な案はない。しかし、生育医療センターはもともと単なる高度医療を行う地域病院としてというだけでなく、国全体のセンターとしての機能を果たすことを前提としており、他の医療機関との連携には力を入れるし、また、センターだけですべての医療を行うというよりも、地域病院ではそれが難しい患者だけを基本的に紹介制でみることになる。ただし、救急患者も受け付ける予定。

9.利便性の充実

 考慮している。駐車場などについても、従来よりスペースに余裕がある分だけ、いろいろ考えることができる。図書館の利用者への開放は考えていなかった。たしかに患者自身の情報へのアクセスは重要なので検討する。現実的には、これも人員配置の関係で専門の司書などを置くことはできないだろうから、貸し出しなどの業務を行うのは不可能だろうが、来院者が閲覧できるようなシステムについては考えてみる。また、センターは診断・治療だけでなく、大学病院など従来の高度医療施設では難しかった難病に関する情報の発信も重要な目的と考えている。プライバシーの確保については前述のように注意を払っている。

10.他施設との情報交換

 前述のようにセンターの存在理由の一つと考えている。生育医療センター自体、国の施設として地方のセンターとの連携など、従来の病院単位の医療では対応できなかった総合的、全国的な情報の蓄積、利用をめざしている。もちろん他の病院ともそのような方向での情報交換を進めるが、実際のところ、この問題に関しては研究を学会のやり方の中で行ってきた医学界の対応が鈍く、実現するには時間がかかるだろう。もちろん、だからこそナショナルセンターとしての生育医療センターを作る意義があるのだが。

質問:小児慢性特定疾患の新しいシステムなどから、各地の医療機関の協力をまたずとも国が直接難病に関する情報を得る状況ができつつあるのではないか。

 それは考えている。また、従来、国としての難病に関する情報発信はたとえばインターネットの場合外部機関に委託していたが、今後は生育医療センターが行う方向へもっていくことなども具体的に検討している。

11.インフォームド・コンセント

 生育医療センターはもともとそういう診療体制を目的としているので複数の診療科にまたがる連携体制は積極的に進める。初診では診療科を選ばず、治療方針を決定する段階で柔軟にそれに対応していくようにする予定。遺伝カウンセラーについては、どのような人を招くことができるかによって方向が変わってくるだろう。遺伝学に関する二つの医療関連学会が協力して遺伝相談の体制の整備に取り組み始めたこともあり、状況は変わりつつあると認識している。ともかく遺伝関係についてはセンターの機能として特に力を入れていきたい。

質問:特に遺伝病関係では、インフォームド・コンセントに病院によって大きな差があり、稀少難病であることから気軽に転院できない状況にある患者の家族はその病院の方針に従わざるを得ないという状況がある。生育医療センターには国の施設としてその規範を示していただきたい。また、現状ではインフォームド・コンセントに問題があるような病院に通って$$$k>l9g!"%;%+%s%I%*%T%K%*%s$d!"45u$r$U$^$($F!"%;%s%?!<$G?GCG!&<#NE$r9T$o$J$$45

 前述したようにそのような方向がセンターの重要な機能、目的であることは認識しており、最大限の努力をする。小児だけを対象にした施設というわけではなく、必要があれば成人患者も受け入れる。

●まとめ

 というわけで、生育医療センターはわれわれ先天性代謝異常症の親にとってはなかなか(ある意味では他の小児難病以上に)期待できる内容になりそうです。実際どうなるかはふたを開けてみないとわかりませんが。なお、このあとで母子保健課の方も訪問して、要望書の写しを提出しました。母子保健課の方では小児難病をサポートする行政を考える上でこの要望書と「小児難病親の会ハンドブック2000」の「親の会の共同アピール」を参考にすると言ってます。(2000/05/20)


先天性代謝異常症ネットワーク


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