Home ] Up ] 新着 ] ガイド・検索 ] トピックス ] 疾患情報 ] 病院・家族 ] 資料 ] 掲示板 ] リンク ]
 

新生児マススクリーニング - 先天性代謝異常症検査

まえがき

 このサイトは比較的古くから先天性代謝異常症一般について扱っていることもあり、ときどき掲示板に「子どもが先天性代謝異常症らしいがいったいどうしたらいいのか」というご家族の問い合わせがあります。そのほとんどは、新生児マススクリーニングで再検査を受けることになったが、その意味がよくわからないので情報を探しているというケースです。正直言って、ほとんどの病院で、新生児マススクリーニングに関する十分な説明が患者( ご家族)に対してなされているとは思えません。そのため、少数ながら再検査になる(しかし、ほとんどの場合まったく問題ない)ご家族に無用の動揺を与えているという印象を受けています。

 新生児マススクリーニングとはなんなのか。そこで再検査を宣告されるということはどういうことなのか。万一、最終的に先天性代謝異常症と診断されたらそれからどうなるのか。これらについては、北海道立衛生研究所のサイトが専門家の立場から詳しく説明していますが、ここでは患者の立場から私の知り得た範囲の状況をお伝えします。

 

先天性代謝異常症とは

 生物は体内でいろんな物質を合成したり分解することによって生命活動をささえています。これが「代謝」です。この化学変化を行うのは具体的には酵素などのタンパク質です。遺伝的異常 などによってそれらが必要量に達しないため、正常な代謝ができないのが代謝異常症です。代謝異常症になると、体内に有害な物質がたまったり、逆に生きていくのに必要な物質を作り出せなくなったりします。

 先天性代謝異常症は、いずれの疾患も疾患ごとの患者数は少なく、多いものでも国内に数百名程度で、少ないものでは数名というものも珍しくありません。しかし、疾患の数は非常に多く、数百種類以上あるといわれています。また、生化学やDNA研究などが進んではじめて実態が見えてきた分野なので、その多くがここ30年あまりの間に発見されており、また、今後さらに多くの疾患が発見されると考えられます。

 

新生児マススクリーニングとは

 

【対象疾患】フェニルケトン尿症、メイプルシロップ尿症、ガラクトース血症、先天性副腎過形成症、ホモシスチン尿症、先天性甲状腺機能低下症

 

 現在日本では、生まれてきたすべての赤ちゃんに対して(厳密に言うと任意ですが)、新生児マススクリーニング(先天性代謝異常症検査)を行っています。マススクリーニングというのは、病気の症状が出た人、つまり患者を対象にして医療を開始するのではなく、すべての赤ちゃんがその病気であるかどうかをチェックするということを意味しています。なぜそんなことをするかというと、現在の医学では、先天性代謝異常症を完治させることは基本的にできず、症状を抑えることしかできないからです。そして、症状が出てからそれに対応したのでは手遅れの場合が多く、対応が早いほど、症状を抑えることができるからです。

 言い換えると、新生児マススクリーニングの対象となっている6種類の疾患は、いずれも新生児の段階で患者であることがわかれば、有効な対処法があるという特殊な代謝異常であると言えます。逆に言えば、数百ある先天性代謝異常症の多くは仮に新生児の段階で患者であるとわかっても、有効な対処の方法がありません(もちろん、早くからわかっている方がいろいろな面で有利だと個人的には思ってますが)。

 お子さんが先天性代謝異常かもしれないと言われたらショックなのはわかりますが、マススクリーニングの対象疾患に関して言えば、早い時点でわかってラッキーだったというのも一面の事実であると思います。

 なお、新生児マススクリーニングで診断される患者のすべてが、必ずしも厳密な意味で「先天性代謝異常症」の患者だとは言えないと思います。たとえば、遺伝的な問題とは別の原因で、同じような症状を示す患者も診断されることがあります。しかし、この段階ではそのあたりの細かいことはあまり考えなくていいと思います。

 

再検査につい

 マススクリーニングの「スクリーニング」は、粉を同じ大きさに統一するための「ふるい」を意味しています。その検査は、まず全体の中から少しでも疑いのある人たちを選び出し、その人たちにもう少し厳密な検査をしてさらに少数の疑わしい人を選び出し……という形で、何段階かの絞り込みを行うことによって最終的に診断していきます。そのため、最初の検査で「疑いあり」とされた人のほとんどは、どこかの段階で「シロ」となり、最後に診断されるのはごく少数です。たとえば、前述の北海道立衛生研究所のサイトの統計情報を見ると、毎年500〜700人が再検査になっていますが、最終的に6種類の疾患うちいずれかに診断されるのは20〜30人です。再検査になった段階では、まだ「先天性代謝異常症の可能性がある」という可能性の段階にすぎないので、そのことを忘れないでください。実際、このサイトの掲示板に「再検査になったけど」と問い合わせしてきた方で、最終的に診断されたと報告してきた方はまだいません。

 再検査についてもう一つ感じるのは、病院側からの情報が少ないことです。「先天性代謝異常症の疑いがあるので再検査する」といえば、赤ちゃんの家族が死ぬほど心配になっても不思議はないと思うのですが、いろんな人の話を聞く限り「だいじょうぶですよ(なにがだいじょうぶなのかわからん?)」程度のことを言うだけで、具体的な説明をしていないケースが多いようです。また、再検査になった段階で、本当は6種類の対象疾患の中でどの疾患の疑いがあるのかといったことはわかるはずですが、それが伝えられることはないようです。昔なら、それでも医者任せではっきりするまで何も考えないという親が多かったでしょうが、最近だとインターネットで検索する人も多いので、そこで得られる情報と病院の対応のギャップが非常に大きいようです。このページもそれを埋めるために作っているわけですが、経験的に言えるのは疑問に思うことがあったらインターネットで調べるだけでなく、病院にどんどんぶつけて専門家に説明させるべき、ということです。

 お世話になっている病院を問いつめるようなことは心理的にしにくいのはわかりますが、ことはお子さんの一大事です。それに、万一ほんとうに先天性代謝異常症だったとすると、その後病院と緊密に連絡をとって情報をどんどん引き出す必要がまちがいなく出てきますから、この段階で遠慮しても意味ないです。また、病院側(専門家)がいちばん嫌がるのが、素人がインターネットで中途半端な知識を得て、それに基づいた素人判断をすることです。インターネットはものすごく役に立つ情報源ですが、ある程度の基礎知識がなければ、それが正しい情報化どうかを判断できません。どのような情報も、最終的に専門家に確認をとるための下勉強と考えるべきだと思います。

 

患者団体について

 先天性代謝異常症のような稀少で重篤な疾患の場合、同じ病気の子どもをもつ家族から得る情報というのは非常に役にたちます。特に、マススクリーニングの対象疾患だと食餌療法など家族の日常的なノウハウが役に立つことも多いと思われるのでなるべく同じ病気のご家族と連絡をとることをおすすめします。といっても、新生児マススクリーニングの対象疾患のすべてに患者の会があるわけではなく、患者の会がないのに患者同士で連絡をとるのはかなりの困難がつきまといます。主治医の理解を得ることも重要ですが、保健所や福祉関係の団体の方が現実的な情報をもっている場合があります。

 

○フェニルケトン尿症親の会(PKU親の会) のホームページ 

 e-mail japan9@japan-pku.net

 

○副腎過形成の子供と家族の ホームページ お月さまのえくぼ」
 

 残念ながら、これ以外のスクリーニング対象疾患については、患者のネットワークの存在を知りません。もし、そのようなものがあるのをご存じの方がいらっしゃいましたら、連絡していただけると助かります。


2003/01/23


※このWebサイトはあくまで患者の家族が個人的に作成したものです。医学情報の扱いにはご注意ください。
 MLD HomePage/ロイコジストロフィー・ネットワーク mld@jura.jp