5時半、アザーンで目を覚ます。礼拝の呼びかけである。今日はアトラス越えである。山は越える上に、走行距離も長いので、出発時間は8時半と早め。
この日から、「バスの席取り合戦」が始まることになる。もちろん、日陰側に座るのが本来の狙いなのだが、今日に限っては、日差しに関係ない。というのは「地球の歩き方」に
「アトラス越えは左側の席に座ろう」
などと書いてるからである。バスがやってくるかなり前から、ホテルの前でそわそわしている人達がいる。もっとも、我々もそのうちに入るのだが。というような苦労のかいがあって、左側の席を確保。実際、アトラス越えは左側の方がダイナミックな景色が展開するのであった。
走るに従って、車窓の風景がみるみる変わっていく。アトラス山脈の植生は思っていたより豊かで、草原のようなところから、樹木、灌木のはえているところ様々である。うちわサボテンがうじゃうじゃはえている場所がある。ちょいと気持ちが悪い。
標高がやや上がったところで、トイレ休憩。サボテンの写真を撮っていると、女の子が寄って来る。言葉が分からないが、
「なんかちょうだい」
ということのようだ。飴があったのであげたら、礼を言うどころか、
「もっと」
という感じで感謝するそぶりもない。写真も撮る気も失せてその場を離れる。ツアーでいっしょの(一人で参加している)おじさんが、彼女にカメラを向けると、
「ノー」
と怒り出す始末。写真を撮られるのがいやなのか、ただで撮らせるのがいやなのか。観光客の多く来る場所の子供は多かれ少なかれスレたところがある。モロッコは、アトラス山脈により、砂漠から守られているといっても良い。最高峰は、4000m以上もある大きな山脈なのである。今日、バスで越える最高点は、ティジン・ティシュカで2260m。最高地点とはいうものの展望はあんまりなく、荒涼とした乾燥地帯になっている。この後、ずっと乾燥地帯が続くことになる。
荒野を行く
ワルザザードの手前のレストランで昼食。ナイデンテの(つまり歯ごたえのない)スパゲティ。給食で出たソフトメンみたい。イタリア人もおかんむりという感じのしろもの。
アイト・ベン・ハッドゥ。古いクサルである。この先、カスバとかクサルとかたくさん見ることになるが、「要塞」とか「砦」のことである。カスバはえらい人が住んでいた屋敷みたいなもんで、クサルは、集合住宅という感じになるのだろうか。アイド・ベン・ハッドゥは、保存状態が良いということ、それにその独特な景観もあり、世界遺産となっている。現在も数家族住んでいるらしいが、大半は、不便さに耐えかねて、対岸に移ってしまったとのこと。
小川をわたり、集落の坂を登っていく。小川を渡るときに子供が集まってきて、こちらの手を引こうとする。もちろん、チップが目当てだ。途中、日干しレンガを干している場所がある。雨が降らないから、焼かずともこれで事足りるのだそうだ。しかし、去年は、異常気象で、3日続けて雨が降るような地域があったそうだ。長雨に降られたら、このレンガはひとたまりもないだろう。
実際に住んでいる人の住居の中も案内してもらい、というか、勝手に歩き回るが、中は真っ暗でよく分からない。3階建ての構造になっており、屋上にも登ってみる。天井が抜けそうで怖かった。世界遺産ともなれば、引っ越さないように、住人に補助金でも出るのだろうか?
アイト・ベン・ハッドゥ
夕方、ティフルトゥトのカスバに寄る。ここは、「アラビアのロレンス」のロケにも使われたのだそうだ。現在は、ホテル、レストランとして使われている。中を見学。屋上からの景色がなかなかである。コウノトリが巣を作っている。中でミントティをごちそうになる。
ミントティをいただく
ワルザザードは、フランス人が作ったサハラ砂漠の最前線の基地であり、現在でも、モロッコの軍関係の施設が多いらしい。作られた街という感じので整い方。
ホテルに寄る前に地元のスーパーに寄ってもらえるということで皆大喜びである。普通の店に売っているものに興味津々なのである。ほんの20分の予定が、皆いろいろ買ったので1時間近くかかってしまった。地元の人にはいい迷惑である。我々が買ったのは、おみやげ用の香辛料、タバコ、それに、水、ヨーグルト、シャンプーといった日用品など。
泊まるホテルはなかなかの感じで、2室くらいで1つの平屋の建物になっている。立派なプールもある。そういえば、今回のツアーで泊まったホテルはほとんどプールがあった。安いツアーのわりには、ホテルは良いという印象。
夕食はバイキング。