はじまりは象、終わりは腹痛


99/9/20 インド3日目



 朝起きると、相棒が不調を訴えている。下痢をしている上に、寒気がして、体中痛いという。結局、相棒は今日の予定をキャンセルし、ホテルで休むこととなった。移動日でなかったのは不幸中の幸いというべき。思いの他早く、インドでの洗礼を受けることとなった。

 さて、無情にも相棒をホテルにおいて、わくわくと本日の観光へと向かう。まずはじめは、アンベール城。ジャイプールの市内から10kmほど離れたところにある、かつてのマハラジャの城である。マハラジャとはよく聞くし使うが、藩王のことである。かつてあった藩王国の王様の城である。築城は16世紀から始まったという。
 このアンベール城のふもとから、 象に乗って 山道を登り入城する。城は結構高い山の上に場所にあるのだ。
 車から降りると、物売りがわんさか寄ってくる。インドの物売りのしつこさは半端ではない。「いらない」と言ってるのに、
「なぜ、いらない」
「なぜ、買わない」
ととにかくうるさい。象に乗るのもの順番待ちがあるので、待っている間、つきまとって離れない。
 ここは、観光ポイントということもあり、観光客が多いのである。西洋人の姿も多く見られる。こういう場所には間違いなく、この手の物売りその他が大勢たむろしている。生活がかかっているのだろうから、向こうも必死である。
 さて、象には、先頭に乗る象使いの他に、2〜4人くらいずつ乗れるようになっていいる。ひょうひょう組と3人で乗った。のっし、のっし、というゆっくりとしたペースで登っていく。かなりの急坂である。乗り心地はそれほど悪くない。山道の途中に猿がたくさんいた。動物園でしかみたことがないような猿である。
 下方の池かなんかのほとりで洗濯している女性達に手を振る。豆粒みたいの大きさの人達が手を振り返してくれた。ここに限らずインド人の反応は概して悪くない。
アンベール城
 20分ほど登り、城内に入る。象使いには、ディープ氏の指示通り、チップ10ルピーを渡す。インドにチップの習慣はないというが、こういった観光地では別である。なにかにつけてチップが要求される。相場はだいたい10ルピーである。ここでは、チップではないが、カメラの持ち込みにさらに50ルピーとられた。ビデオの場合だと、さらに余計とられる。
 城内には、水が流れるようなしかけがあったり、鏡をちりばめた装飾の部屋があったりと、面白い。それに、下界の見晴らしがたいそうよい。お金を払ってカメラを持ち込む価値はあったようだ。

 下りは、ジープに相乗りする。物売りの攻撃は相変わらず激しい。しつこさは車の発車直前に一番激しくなる。あまりのしつこさに、カップルの彼氏が手を出して押さえつけたかなんかしたら、物売りのインド人がえらい剣幕で怒っていた。怒りたいのはこっちだよ、全く。

 再び、ジャイプールに戻る。途中で、 湖に浮かぶ城 を見るために、下車。写真撮り。よーく目をこらすと水牛の群。
 出発する前に、ディープ氏が子供を車に招き入れる。手品を芸に金を稼いでいる子供。コインが出たり消えたり。なかなか見事な手さばきだった。

ジャイプールの町並み
 昨日、カップルの彼氏がにぎやかなところに行きたいといっていたこともあり、ホテルに戻る前に、繁華街で自由行動となった。車の停まっている場所に30分後に集合ということになり、おのおのあちこちに歩き出す。
 ずっと、車の中からしか町並みを見てなかったので、実際に外に出て歩くのは、面白くもあり、恐くもある。第一、自分の格好というのが周囲からすればあまりにも目立ちすぎる。Tシャツ、Gパンだけでも結構目立つのに、大きなザックを背負い、大きなカメラを抱えている。自分としては、異次元に飛び込んだ感じなのだが、はたから見ると、こっちはかなり変な格好してるやつなのだと思う。
 さて、何がある?ゴミと埃だらけの街、独特のにおい、照りつける太陽、ものすごく活気のある人々、それにいろんな動物。牛はもちろんのこと、豚、犬、ヤギ。車が走ってるし、原チャリに、自転車、リキシャー。そして、馬車。ラジャスタン州は砂漠の州ということもあり、ラクダの引く車もある。とにかく、目の前を過ぎる情報量が莫大で処理しきれない。
 さっきの観光地のように、つきまとってくる人というのはあまりいなくて、ただ歩く分には問題ない。けれども、インド人の眼光鋭い視線攻撃を受けまくる。インド人は普通にこちらを見てるんだろうけど、結構こわい。ときおり、バクシーシ(喜捨)を求める物乞いもいるが、しつこくはない。
 熱病を帯びた感じで(実際、えらい暑かったのだが)、30分はあっという間に過ぎてしまった。何か面白い物があったら買おうかと思ったが、特に見つけなかった。というか、なかなか店に入れなかったという方が正しい。
ジャイプールの町並みその2

 ホテルに戻り昼食をとる。相棒は、まだ具合が悪そう。とりあえず、レストランには来るが、
「やっぱり、食べられない」
ということで部屋に引っ込んでしまった。他のメンバーはみな元気だ。
 ということで、相棒は午後の予定もキャンセル。

 午後は、シティパレス。藩王ジャイ・スィン2世が建設した宮殿。内部の装飾は見事なものである。変わったものでは、巨大な銀の水差しなどがあった。なんでも、ガンガー(ガンジス河)の水をイギリスまで運ぶために使ったものだという。大きさはギネス級。
 このシティパレス、現在は一角が博物館になっており、服装や武器や古文書などを展示している。入口を入ってすぐの場所に飾ってある、王子かなんかの絵が不思議。どの角度からみても、こちらを向いているように見える。
シティパレス(壁補修中)

 その後は、土産物屋攻撃を受ける。まあ、覚悟してたことだが。
 まずは宝石屋。ジャイプールの有名な特産品が宝石らしい。宝石を磨く行程など見せられたのはほんのちょっとで、後は、店員がしくこくついてきて、何か買わせようとする。財布の紐が堅いというか、興味ないのか、それとも貧乏なのかは知らないが、誰も買わなかった。ディープ氏、
「奥さんに何か買ったらどうですか」
無視する。余計なものは買うなと言われてたし。

 次は、織物屋。テーブルクロスやサリーなどの模様を、スタンプのようなものでつけていく行程は見てて楽しい。ただ、ここは、値段も宝石ほど高くないこともあって、敵の攻撃も厳しい。なんも買わないつもりだったが、根負けしてTシャツを1枚買った。10$なり。日本で買うのと変わらんぞ。でも、値札は14$相当だった。
 Kさん組の2人は、サリーを含むインド女性の民族衣装を買っていた。しめて1人1万円ほどだとか。ひょうひょう組の2人はサリーを着せてもらい、さらに写真を撮ってもらったが買わなかったらしい。こういうのが一番賢いやり方だと思う。

 今日の予定はこれで終わりで、夕方はホテルでのんびりとしていた。他のメンバーは近くをうろついて果物とか買ってたりしてたみたい。

 夜から、1人25$のオプションツアー。まあ、高いなあとは思いながらも、
「せっかくだから」
「みんなも行くなら」
という日本人感覚で、結局全員参加する。相棒もやや具合が悪そうだが、なんとか出かけることが出来るようになった。
 行くのは、ジャイプールから車で30分ほどの場所。なんでも、「インドの田舎の暮らしぶりがうかがえるところ」というとこで、夕食もここで食うらしい。インド版「日光江戸村」ということにしておこう。日光江戸村には行ったことないけど。

 実際、行って見たものはというと、
 ラジャスタン地方の民族舞踊。再現された民家の様子。体が柔い女の子の芸。おやじの手品。人力観覧車。その他。
 一連を見学した後、
「地方では実際にこういうものを食べてるんですよ」
という
食事 をいただく。皿は葉っぱで作られている。コップは素焼きである。使い捨てなのである。これは、「けがれる」という考え方がヒンドゥーに根強いからである。つまり、誰が使ったか分からない(もしかしたら下層のカーストが使ったかもしれない)食器は使わないということなのだ。
 さて、その味はというと、飲み物から食べ物から全てカレー味なのである。それも、かなりきつい香辛料が使われているようだ。カレー味がしないのは、チャパティとデザートだけ。デザートはデザートでやたら甘ったるいし。しかし、お腹もすいていたので、チャパティーにこれらを付け合わせて、お腹を満たした。

 案の定、帰ってからお腹が痛くなった T_T

 そうはいっても、軽い下痢程度。相棒の方がもうちょっと深刻。江戸村に行ったのが災いしたようで、また具合が悪いと言う。ろくに食事もとれてないというのがまたかわいそうだったが、そこは団体旅行の良いところ。助けてくれる人ここにあり。
 Kさんの友達がおかゆのレトルトパックを持ってきていたのだ。しかも1食、2食ではないらしい。おまけに簡易電気コンロも。ずいぶん大荷物を持ってきたなという感じがした。でも、なんといってもそこは団体旅行。自分で荷物を運ぶことはあまりないので、スーツケースが多少重かろうが平気なのである。
 ちなみに、うちらは、荷物軽量化大作戦を決行していたので、僕のザックと相棒のボストンバックが全ての荷物。僕1人でも全て抱えられる程度のもの。何もここまで目くじらをたてなくても良かったなと思ったのだが、最終日に作戦の成果が発揮されることとなる。

 とにもかくにも、おかゆと、さらには緑茶(缶)までわけてもらい、相棒は、まともな食事になんとかありつけたのであった。感謝。感謝。

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