Nikon Fマウントはどこへいく

ニコンFマウントはどこへいく

Last update 18/12/2002

Nikon F-501

【FM3AをスポイルするGタイプレンズ】

 最近、ニコンFマウントのレンズに「Gタイプ」という絞りリングがないレンズが登場している。 最初はボディとセット販売される廉価版のズームレンズのみであったので反響は少なかった。 しかし、AF-S VR Zoom Nikkor ED 70-200mmF2.8Gという高級版の望遠ズームの絞りリングが省略されるにいたって賛否両論渦巻いている。 たしかにAF-Sレンズは超音波モーター駆動のオートフォーカスなのでMFボディでは超音波モーターが遊んでしまうし、 VRという手ぶれ補正機構も最近のAFボディでないと働かないので、MFボディだと機能が無駄になるだろう。

 ただ、ニコンFマウントのいいところは機能制限はあっても基本的な撮影に関しては古いボディと新しいレンズ又はその逆で使えるというのがメリットだった。 そして最新AFボディを使いながらも予備にマニュアル機を持っていくという使い方ができるのもニコンFマウントの利点であったのだ。

 AF-S VR Zoom Nikkor ED 70-200mmF2.8Gだと予備に現行のFM3Aを持っていっても絞りリングがないので撮影できない。 FM3AはメカニカルシャッターのMF機で特に寒冷地で威力を発揮し、電池なしでも撮影できるボディだが、最悪の事態のときにFM3Aを使うという手段が使えなくなってしまう。 せっかくこの時代にFM3Aのような一見時代遅れに見えるようなボディを新発売したのに、他方でそれをスポイルするようなレンズを発売するのは損だと思うのである。 これが「Nikon F3もNikon NewFM2も製造中止したので、これからは新しいAFボディをお使いください」というのであれば、そういう方針もあるだろう。 しかし、せっかく新規発売したボディが見劣りするような新レンズ発売はいかがなものか。

 せっかく「いまさらMF機なんて」と思っている人にも「緊急時に電池なしでも撮影できるぞ」という強迫観念でFM3Aを売りつけることができるのに、高級レンズにGタイプをラインナップしたばっかりに、 これからでるレンズは全部Gタイプではないか、という疑念を抱かせFM3Aの売れ行きに水をさすように思われるのである。 AF-S VR Zoom Nikkor ED 70-200mmF2.8Gはまだ発売日も未定だが、是非絞りリングとAi方式対応のDタイプレンズにしてほしいものだ。 どうせ高価なレンズなのだから絞りリングやAi連動をつけてもコストアップは知れていると思うのだが。 絞りリングがあることによって初心者やAFしか使わない一部のプロが困るというのであればロック機構などを工夫することによって解決して欲しい。

●(左上写真は最も複雑な連動機構をもつボディのひとつNikon F-501のマウント部分。
  右下内側に開放F値連動レバー、右内側にプログラム切り替えレバー、右にレンズタイプ識別ピン
  とレンズ着脱ロックピン、右上外側にに露出計連動レバー、上内側にCPU連動接点(7接点)、
  左内側に絞り連動レバー、左下にAFカップリング)

Ai AF Nikkor 50mmF1.4D

【一貫しないVR対応】

 さらにもっというならば、せっかくF5以降に発売されたAFボディはVR(手ぶれ補正)に対応していたのに、最廉価版のNikon UsはVR機能に対応しなかった。 これも価格競争上仕方ないのかもしれないが、またシステムが複雑になったと思う。 VRレンズを展開するつもりなら今後発売するAF機はすべてVR対応にすべきだと思う。 逆にいうとニコンUsがVR対応でないということは当面VRレンズの大展開はないということなのだろうか。 どうもすっきりしない感じなのである。

●(右上写真は代表的なAi AF DタイプレンズAiAF Nikkor 50mmF1.4Dのマウント側)

【中級機もAi非対応へ】

 ニコンAFボディは最上級機(F一桁)、上級機、中級機、入門機という4段階構成だった。これまでは中級機まではAi対応でマニュアルフォーカスレンズでも露出計が働いて撮影可能だった。 ところがNikon F80がAi非対応になりMFレンズでは露出計が作動しなくなった。 軽快なボディとシンプルな機能が売りのNikon F80なのにMFレンズが事実上使えなくなったのだ。

 わたしはこれを見てニコンはMFレンズを見限ったと思って京セラコンタックスに乗り換えようと思ったものだった。 しかし京セラはマウント変更という暴挙に出てMFレンズ群を見捨てる方向性を打ち出した*1(アダプターも用意されなかった)ので私はニコンに踏みとどまった(笑)。 そうこうしているうちにNikon F3製造中止となるもNikon FM3A発売となったので、やや安心してニコンMFレンズを新規購入するに至っている。

 ニコンは「互換性」と「耐久性」というブランドイメージをもっと大事にして欲しいと思う。 さもなくば、せっかくデジタル一眼レフ発売時にもFマウントを堅持した意味が薄れてしまうと思う。 ちなみに、中級デジタル一眼レフNikon D100もAi非対応である。 デジタルカメラの場合結果をその場で確認できるので非対応でも何とかなりやすいのだが、やはりAi対応にして欲しかったと思う。

【まとめ】

 ただ単にマウントの形状を変更していないだけという「マウント不変」は中途半端だと思う。 やるならすぱっとマウント変更、やらないのなら互換性を持たせて欲しいと思う。 AFレンズにGタイプが増えるとFM3A用にMFレンズ群を維持せざるを得ない。 逆に新規レンズがどんどんGタイプ化するということはFM3Aも先が長くないのか。 ニコンFマウントはどこへいくのかちょっと先が読めない感じである。 ニコン自身も決断しかねているのかもしれない。
 *1 京セラは2002年10月25日RXIIの発売を発表した。一時、RTSIIIとAriaだけになっていたのでヤシカコンタックスMFシリーズの存続が危ぶまれた。 しかし、マウント変更の事実は変わらず、先行きが心配なのは変わっていない。(2002年10月31日加筆)


【参考:簡単なFマウントニッコールレンズの分類】

 ニッコールレンズは種類が多くてわかりにくいので簡単な分類をしておく(*2)。
  • 従来方式(主にAi以前の方式で、通称「カニの爪」で絞り値(絶対値)をボディに伝達)
  • Aiレンズ(1977年に絞りリングの一部を切り欠いて絞り値(相対値)をボディに伝達。
    絞り連動レバーの作動がリニアでなく、最小絞り側に行くにつれて移動量が少なくなっていた。)
  • Ai Sレンズ(1980年ごろに絞り連動レバーの作動をリニア化。その他に開放絞り値や焦点距離が135mm以上かどうか、 Sタイプであることを機械的にボディに伝達していた。)
  • Ai AF S レンズ(1986年にF-501発売にあわせて現行方式のAFレンズを発表。 Ai Sタイプに加えて、CPUを内蔵して電気的に各種情報をボディに伝達可能かつボディ側からオートフォーカス駆動可)
  • Ai Pレンズ(Ai Sタイプに加えて、CPUを内蔵して電気的に各種情報をボディに伝達可能なMFレンズ。)
  • Ai AF-I Sレンズ(Ai AF Sに加えてレンズ内モーターでオートフォーカス駆動)
  • Ai AF-S Sレンズ(Ai AF Sに加えてレンズ内モーター(超音波モーター)でオートフォーカス駆動)
  • Ai AF Dレンズ(Ai AF Sに加えてさらに距離情報を電気的に伝達)
  • AF Gレンズ(AF Dレンズから絞りリングを撤去。ボディ側からのみ絞り制御可能。Ai方式の機械式伝達機構はもたない。)

 複雑なのは、これら記号が同列のものではなく、また組み合わせもありうることだ。 PタイプはSタイプでAi方式でもあるが、DタイプはSタイプでAi方式のものがほとんどであるが例外がある。 GタイプはSタイプではないしAi方式でもない。 Pタイプは必ずMFレンズだが、DタイプはほとんどがAFレンズで例外的にMFレンズがある。 AF-S GやAF-S Dといったレンズもありうる。
 なお、AFレンズにはNikon F3AF用という特殊な2本のレンズがあり、F3AF、F4、F-501の3種のボディのみAFが可能。 シリーズEというレンズはAi Sタイプである。 ニコンのレンズのカタログに別の視点からの分類表が載っている(*3)。 詳細はそちらをご覧ください。
 *2 ニコンは2002年12月12日「DX Nikkor」というデジタルカメラD1シリーズ/D100専用レンズを発表した。 23.7×15.6mmサイズの撮像素子(CCD)では広角側が辛い(18mmレンズでもこれらのデジカメでは27mm相当の画角になってしまう)のでそれを補うために専用レンズを開発したようだ。 35mmフィルムカメラで使えるように超広角レンズを設計すると、技術的にも大変でコストが高くつくから、画面の狭いCCDに特化したレンズで凌ごうというわけだ。 マウント形状だけ同じで使えないボディー・レンズが多数ある複雑なシステムになってきたなあ。 一般ユーザにはどのカメラにどのレンズが使えるか把握困難と思う。
 そういえば「IX Nikkor」というAPS一眼レフカメラ専用レンズもあったことを思い出した。 なんだか継ぎ足し継ぎ足しのニコンだなぁ(笑)。 このエッセイも継ぎ足しになってきたからいずれ項を改めて書くことにします。
(2002年12月13日加筆)

 *3 2002年12月16日からレンズカタログとほぼ同じ内容の「Fマウントレンズ体系図」が ニコンイメージングのフィルムカメラサポートのサイトに掲載されるようになった。
(2002年12月18日加筆)

(2002年8月15日 記、2002年10月31日・2002年12月13日・2002年12月18日加筆)

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