Nikkor 35mm地獄

ニッコール35mm地獄

Last update26/05/2004

 現在ニコンの一眼レフ用単焦点35mmレンズは、マニュアルフォーカス(以下MF)のAi Nikkor 35mmF1.4SAi Nikkor 35mmF2S、オートフォーカス(以下AF)のAi AF Nikkor 35mmF2Dの合計3本がラインナップされている。 かつては35mmF2.8とかPC Nikkor 35mmF2.8などもラインナップされていたのだが、製造中止になってしまった。 現在残っているこの3本のレンズ、それぞれ特徴があり、35mmレンズを1本も持ってない自分としては、どれを買うべきか悩んでしまう。

レンズ名最大径×長さ(mm)質量(g)フィルター径(mm)価格(税抜き・円)
Ai AF Nikkor 35mmF2D64.5×43.52055241,000
Ai Nikkor 35mmF2S63×51.52805246,000
Ai Nikkor 35mmF1.4S67.5×624005286,000

Ai Nikkor 35mmF2S

 まずはスタンダードなAi Nikkor 35mmF2S。このレンズはNikkor-O 35mmF2のころからほとんど光学系に変更がなく、ロングセラーである。 適度な開放F値と手ごろな値段と総合的な描写のバランスのよさで、ニコンの35mmなら、まずこのAi Nikkor 35mmF2Sを買え、といわれているようだ。 後述のAi AF Nikkor 35mmF2Dに比べて、ボケ味がいいらしい。前玉の大きさは52mm枠いっぱいで、天体写真にも適しているらしい。 まずは第一候補だ。

Ai AF Nikkor 35mmF2D

 Ai Nikkor 35mmF2Sを新しい技術でコンパクト化し、絞り開放時の光学性能も向上させたAFレンズ。 それならば、Ai Nikkor 35mmF2SよりもこっちのAi AF Nikkor 35mmF2Dを買うべきじゃないのか、と思うのだが、どうやらボケ味が固いらしい。 ただ、CPU内蔵のAFレンズだから、最近のCPU内蔵レンズでないと露出計が作動しないボディには、こちらの方がいいだろう。 またAi Nikkor 35mmF2Sに比べてAi AF Nikkor 35mmF2Dの方がかなりコンパクトなのもメリット。 Ai AF Nikkor 35mmF2Dは長さ43.5mm、重さ205gで、Ai Nikkor 35mmF2Sは長さ51.5mm、重さ280gだ。スナップ用にはあまりかさばらない方がいい。 あとはAFレンズは鏡筒がエンジニアリングプラスチック製で、ピントリングの回転の感触もMFレンズには劣る。 なかなか一長一短なのである。
 なお、これの前の型であるAi AF Nikkor 35mmF2Sと、このAi AF Nikkor 35mmF2Dとは、若干の光学系の変更があるようだ。 カタログのレンズ配置図もアサヒカメラ2002年5月号の測定値(「ニューフェース診断室スペシャル 35ミリF2レンズ13本総合評価」)も若干異なる。

Ai Nikkor 35mmF1.4S

 Ai Nikkor 35mmF2Sがあまりコンパクトでないなら、いっそのことAi Nikkor 35mmF1.4Sという選択肢もある。 長さ62mm、重さ400gだが、フィルター径は前2者と同じ52mmだ。 いわゆる絞りの効くレンズで、絞り値によって描写が変化するレンズらしい。 絞りF2で撮影することを考えると、このF1.4を一段絞って撮影するのが一番画質がいいらしい。 ただし、絞り込むに従ってだんだんと普通のレンズになっていくらしい。F2からF5.6あたりで使うのがいいらしい。 問題があるとすれば、値段と重さだろう。ただ、値段はキヤノンの35mmF1.4が20万5千円、ニコンの28mmF1.4が23万8千円であることに比べれば、設計が古いとはいえ8万6千円はお買い得かもしれない。

【ニッコール35mm地獄】

 それで、どこがいったい「地獄」なのかというと、結局3本とも欲しくなってしまいそうなのである(笑)。 この3本が現行レンズとして残っているのは、それぞれ描写の特性が異なり、統合整理し難いからなのである。 AF35ミリはコンパクトでニコンらしいカリカリの描写。MF35ミリF1.4は、大口径で、絞り開放はふわふわ、絞っていくにしたがって緻密な描写。 MF35ミリF2はニコンらしいカリカリさとボケの両立、透明感のある色彩。 それぞれ捨てがたいのである。悩んだ末にどれか1本買ったとしても、他の2本も気になり、結局3本とも手にするのではないかという恐怖がある(笑)。 おまけに、MF35ミリF1.4の中古価格はMF35ミリF2を新品で買うのとほとんど変わらない。 い、いかん…。

【参考文献】

・アサヒカメラ1980年5月号「ニューフェース診断室 ニコンF3、Aiニッコール35ミリF1.4」:朝日新聞社
 ※「アサヒカメラニューフェース診断室ニコンの黄金時代1」(2000年 朝日新聞社)に再録
・アサヒカメラ1991年1月号
  「ニューフェース診断室 ニコンF-601・F-601M、AiAFニッコール35ミリF2S」:朝日新聞社
 ※「アサヒカメラニューフェース診断室ニコンの黄金時代2」(2000年 朝日新聞社)に再録
・アサヒカメラ2002年5月号
  「ニューフェース診断室スペシャル 35ミリF2レンズ13本総合評価」:朝日新聞社

ニコンのAi AF Nikkor 35mm F2Dのサイト
ニコンのAi Nikkor 35mm F2Sのサイト
ニコンのAi Nikkor 35mm F1.4Sのサイト


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