Studio KenKen

古楽演奏のページ


私のやる楽器

笛を吹くのが好きです。(学生時代にオーケストラでティンパニを担当していましたが、今はしていません。)

笛といっても、横笛、縦笛とありますが、まともに人前で吹けるのは縦笛、リコーダーです。オーケストラで扱われず、教育用楽器になってしまったためか、馬鹿にされがちですが、中世からルネッサンス時代を経て、バロック時代に至るまで多彩なレパートリーを持った楽器です。
あまり信じる気になれないならば、

フランス・ブリュッヘン

を 聞いてみてください。


所有楽器

私が所有しているのは、ほんの少しです。

メック社/モダンのアルト・リコーダー
木製、a=440の笛です。一応、ロッテンブルグ・モデルといわれています。材料はグレナディラ。今思うと、あまりリコーダー向きの材料ではないかもしれない。ただ、この笛は高校時代から使っており、愛着があります。ちなみに、現代音楽はピッチと楽器の性質上、これでないと演奏できません。
メック社/スティンベルゲン(18世紀オランダ)コピー
有名なスティンベルゲン(ブリュッヘン所蔵)のコピー。a=415Hz。でも、 この個体は失敗だったようで、私とはあまり相性がよくなかった。 どなたか製作家に調整していただこうかな、と思っています。
YAMAHA(山田氏)/デンナー(18世紀ドイツ)コピー
有名なデンナーのコピー。a=415Hz。これは値段の割によかった。YAMAHAのこの楽器は、10数年前に最初のものが出ていますが、明らかに向上していました。管の着色も変わりましたが、音もずっと艶やかで豊かになりました。オイル・フィニッシュの技術が向上したのでは、と想像しています。低音のgがビビるのがやや残念。 高音が出しやすい。音はとても甘く官能的です。
とにかく、値段が最初の頃からまったく変わっていないので、 実質的には値下がりですね。ただ、オリジナルの楽器の制作年代同様に、テレマンや後期バロック向きだと思います。フランス音楽には不向き。
ZENON/モダンのバス・リコーダー
ZENONですから国産。この楓を材料とするバス笛は、音と鳴りがいいことで評判のもので、より高くて音の輪郭がはっきりしているYAMAHAをあえてさしおいて、こちらを購入しました。クルークなしの直吹で、気持ち良い吹き心地、反応も速いです(クルークを経由しないから速いのは当然ですが)。

ほか、ソプラノ・リコーダーのモダン楽器などもありますが、詳細は割愛。個人製作者のいい笛にも手を出したい気持ちはありますが、いまのところは上記の陣容でやっています。


今後への望み

現代のヴァイオリンやフルートなどの楽器は、多くの時代・地域の音楽をカバーしつつ、大きなホールで鳴らせる楽器が、よい楽器でしょう。しかし、古楽の場合は、いわば「ヨーロッパの民族音楽」を演奏するのであり、まだ「汎世界」の概念もなく、地域差の非常に大きかった時代です。協会や宮廷に所属する楽器があり、その楽器でやれることが、作曲家の音楽の構成にかなり密接でした。つまり、曲に応じた楽器が必要になる、とも言えます。

その候補を考えました。つまり、私が今後力を入れてみたい 分野の音楽と直結しています。

初期バロックのソプラノ管
c管とg管がほしいですね。初期イタリアの、まさに バロック音楽が興った頃の音楽には、音色が甘くて抜けがよく、反応が速くて音の粒立ちがよいものがあるといい。イタリアの空は、ドイツやイギリスとは まったく違いますしね。しかも、ソプラノである必要がある。 ほんとうは同様にテナーもあるといいんですが。とにかく、こういうのでメルーラやファルコリニエリ、 チーマなどをやれると楽しいだろう。
問題はピッチです。440Hzでいくか、415Hzでいくか、 466Hzでいくか…地域によって違います。これを決心しないと、注文できない…。
イギリス型の後期バロック用アルト
ドイツのデナー・モデルは、とりあえずYAMAHA製がいい音を出すので、今度はイギリスのモデルへ。できれば、ブレッサン(チューダー・ローズのブレッサン)で、a=410, 415の替え管があるとうれしい。 a=415Hz(440Hzの半音下)は、実は演奏上の便宜で、本来はa=410Hzのはず。
これは少し渋めの音だろうから、ヘンデルや、イギリスのディヴィジョン音楽などを吹くのに向いているでしょう。
ヴェルサイユ・ピッチのflauto dolce
flauto dolce とは、フランス語でリコーダーのこと。つまり、ヴェルサイユ宮殿でのa=394Hz 前後(392〜396程度)のピッチに対応した、フレンチ・リコーダーということですね。
このようにピッチが変わると、まず音のテンションが変わりますし、それ以上に楽器の設計も変わるため、 まったく違う音になります。デナーなどよりもさらに甘く、なめらかで、深みのある音になります。オトテールもいいですが、マレのトリオ・ソナタをやると、とてもいいと思います。
a=415Hzのよいvoice flute
voice fluteとは、d管のテナーですが、通常のテナーとは少し作りが違うそうです(d管で少し短いからか、反応が少し速い)。 音域がトラヴェルソと同様なので、トラヴェルソの曲を吹けるものです。ただ、楽器が違うので、まったく違う雰囲気になります。
これは、いわば妙なこと(本来のレパートリーでないものに挑戦する)に使うので、いい楽器でないと手を出す気になりにくい。逆に、ほんとうにいい楽器が必要、とも言えます。

他にも、a=415Hzのよく鳴って音の輪郭の割合はっきりしたバス・ リコーダーとか、a=415Hzの後期バロック独奏用ソプラノとか、いっそのこと初期バロックをa=466Hzでソプラノからバスまで揃えるとか、いくらでも思いつきますが、最近はむしろ笙に活動比重が偏りつつあります…。


その他

ちなみに、フルートも一時期吹いていましたが、もう諦めました。 ちゃんといい音を出すのが難しいとかありますが、私が吹きたい木製の18世紀の古いフルートは、現代のフルートよりだいぶ難しく感じます。古いフルートは歌口のスイートスポットが小さいので、ただ音を出すならば、現代のフルートのほうが出しやすい面があります。
逆に、現代楽器のフルート吹きが、古いフルートの性能の悪さを話すことがあります。しかし、双方をうまく持ち帰る方にお話を伺うと、楽器によってちゃんと一番あった吹き方と表現があり、それを自分で適切に選択する必要がある、とのこと。 つまり、現代の吹き方をそのまま転用はできない、ということ。ただし、音を出す基本は当然のことながら、まったく同じだそうですが。

また、ツィンク(16世紀〜17世紀に流行した、角笛の一種)や バロック・オーボエなども吹いてみたいと思ったりすることがありますが、むしろ雅楽の笙に手を染めているため、もう手を広げるのは難しい気もしています。

 


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