変わっていく中京の景色

 

●京都に着くと最初に確認するもの

さて、京都に赴くとまずすること。もちろん宿へのチェックインではあるが、本屋で雑誌「京都CF」と「Meets Regional」をのぞく、なんてこともある。Meets Regionalはいまや東京でも大書店に行けば買えるけど、京都CFは必ず手に入るとは限らないから。こちらはほんとうに京都にしぼっていて、編集方針にも愛が感じられる。

雑誌を確認するなんて、そんな底の浅いって?

まぁそう言いなさんな。住んでいないものにとって、毎日の街の変遷まではわからない。関西編集の雑誌が何を感じているかは、やっぱり知りたいじゃないか。結局のところは現地へ行かなければわからない、とは重々承知の上なんだし。

Meets Regional(ミーツ・リージョナル、よくミーツと略される)は、京阪神エルマガジン社発行。出版社は、関西のぴあと呼ばれるエルマガジン(エルマガと略される)を筆頭に、関西情報誌の老舗。街情報で独特の目線を持つミーツは、京都に赴くようになってすぐに読むようになった。また、1990年代に全国区で販売されたミーツ別冊「シティマニュアル京都」は、京都初心者のよいガイドとなった(2003年版を最後に出ていない)。

最近はミーツ別冊も趣旨が変わってきた。「京都街図」で初心者向けガイドを、そしてテーマ別の京都本を出している模様。今年は「世界遺産をあそぶ京都本」に続けて、この夏に「三度目からの京都通本」が出た。

これ、最近のミーツ別冊の中では、出色です。普段のミーツに出てくるおいしい記事を特集したような感じ。京都の街は意外に変化が激しいのだが、そのあたりをふまえたお店情報や、音楽系コラムなど、いい感じで基本からディープへのガイドとなっているとみた。「雑誌に取材されると、ぺんぺん草もはえないくらい荒らされる」とよく言われる中、これだけの情報の掲載許可をとり、編集するのはたいへんだろう。うまいこと続けていってほしいです。

京都A to Zという特集の冒頭に出てくる「姉小路通」。ここは最近注目していたのだが、やっぱり取り上げられていた。まぁ目を通して見てください。

●町屋が中京から減っていく

姉小路通は、寺町京極の鳩居堂から西へ向かう通り(こちらも参照のこと)。1990年代前半までは老舗の並ぶ通りという印象だった。変化が目立ったのは、ここ1〜2年かもしれない。

ここから一本南にある三条通。ここを中心にしたブロック群(特に北側)は、まだ何かと町家造りの家や、老舗が残っている場所だった。柊屋、俵屋のような旅館も、このゾーン。京都ホテルの高層化、建都1200年祭などで街が騒然とした頃から、三条通(姉小路通の一本南にある通り)を中心に、中京の中京たる町屋がなくなって、ビルになっていった。

一方、三条通はカフェ通りとなっていく。それにつれて、ギャラリーや新しい服飾店なども入ったりする。寺町二条も、小奇麗に変わっていった。この動きが変わらぬ流れとなって、姉小路通にも波及していったのは、2002年あたりからじゃないだろうか。

まだ高い建物が多くはない寺町二条は別にして、三条通と御池通の間にある町屋の変化は、結構すごい。昨年まで町家だと思っていた場所が、翌年にはマンションに変わっていたりする。夏は空調の排熱のためか、なんとなく温度が高くなっていくように感じる。広い通りに出ないとあまり風が通らない密集地帯ではあるのだが、それぞれの家が中庭などで涼をとる仕組みがあった。それを全部つぶしてマンションにしてしまうのだから、当然か。

いわゆる観光名所だけじゃない、京都らしさを醸す、それも美観地区ではない街並みが減っていくのは、やっぱり悲しい。だけど、おそらく住めば不便もあるだろうし、人口を増やして街を活発にするには必要なことなのかもしれない。もう少し低層建築でもいいんじゃないかと思うことはあるけど。

一方で、町屋の建物を利用した、ギャラリーや骨董店、カフェなどもオープンしていく。かくして、新旧の建物が同居する街並みになっていく。30年経つと、どうなっているんだろう。

●繁華街から分散している?

そういえば、四条河原町近辺にわき出ていた人の流れが、1999年あたりから減っているように思う。2003年夏の旅日記でも、少しだけ触れた。

観光客は増加傾向。街もどんどん変わっていく。そうなると、むしろなんでもない場に人が分散しているのかもしれない、と思うことは多い。たとえば、河原町は河原町でも、御池より北のあたり。また御池通から北側。あるいは西陣方面など。そうでなくても、出町柳や百万遍のあたりには、もともと若い人々が多いし、有名音楽クラブMETROも繁華街ではない。こうした場の中に、姉小路だの六画通だのも入っているように感じることがある。

東京でも、新宿・銀座・渋谷・六本木・池袋といった大繁華街だけでなく、中目黒だの、神楽坂だの、三軒茶屋だのちょっとはずれた場所におもしろい店が出てきている。人口が集中しすぎて、ちょっとはずれた場所に個性的な店をつくる動きと、ちょっと似ている。いや、東京とは街の面積も人の流れも分布も違うから、一概に比較はできないけど、大きな街では作りにくい店を周縁につくるとすれば、ちょっと似ているかなと。

古くから市街地のあちこちに喫茶店がある街だ。東京みたいに集中願望が濃いようには見受けられない(東京のそれは強迫観念に近いようにも感じる)。そのぶん、あちこちに面白い店をつくりやすい土壌があるのかもしれない。

今年(2004年)は忙しくてまだ行けないんだけど、今度はどんな表情の街に出会えるか。旧跡などの観光名所もいいけど、実はそれ以上に街を歩くのも楽しみだったりする。


目次へ