夏の東寺

●夏の東寺は初めて

京都駅に荷物を預け、念のためにおみやげを少し買い足した。安心して近鉄に乗り、東寺へ(たった一駅であるが、暑いので乗ってしまうことにした)。

東寺は何度か来ているが、思うに冬と春ばかりで、夏には来たことがない。
駅を降りて、ビルの間から忽然と五重塔が立ち現れる。夏の西日を浴びるその姿は、力強い。今日は五重塔の日になったが、最後がここでよかった。強烈な西日に微塵も負けない姿は、そう思わせるに十分。昔、まだ新幹線から五重塔が見えた頃のことも思い出した。

東人にとって、これが京都の象徴だったのだ。

境内を廻り、立体曼荼羅のお堂と仏像をさっと見て(閉門時刻が近づいていた)、茶屋でかき氷をいただく。庭の風が、街中よりも気持ちよい。お堂で解説をしてくださった方々が、ものすごく「空海ラヴ!」で、ただただ熱い。押しつけがましくない。そこがいい。
閉門時刻まで、茶屋で開放的な境内を堪能させていただき、ツレとそんな話をしていた。

●帰路

再び近鉄で京都駅へ。

今回は一度もイノダに入っていないので、Porta地下街の支店に入る。熱く濃いコーヒーがしみわたる。

続いてJRイセタンの地下で、車中の弁当を選ぶ。ぱっと決まるようなものがない。
結局、ひさご寿司の巻物などを選ぶ。ここは河原町に店があり、一人旅の際に時々折り詰めをホテルの部屋で食べることがあった。キオスクなどで買う寿司弁当よりずっといいのを思い出したのだ。

新幹線に乗り込むと、暮れていく街を左に、静かに進み出す。あっという間に鴨川、東山が去っていき、トンネルに入ってしまう。
上賀茂・下鴨、平等院に黄檗、八坂と東寺。一箇所ずつに時間をとる、中身の詰まった旅程だったが、まだあれも見たかったなどと思ってしまう。おそらくここが「次はどこにしよう」と考え出してしまう元なんだろうな。

七月末の空は、徐々に暮れるのが早くなっていく。夜景に重なる自分を見ながら、今はこの三日のことを思い起こそうと、息を吐き出した。

 


前へ  旅日記目次へ戻る  次へ