写真表現を考えて撮影することに慣れていないと、撮影時にどんなことを考えればよいのか、よく分からないでしょう。そこで、被写体を発見してからシャッターを押すまで、何を考えるのか整理してみました。整理した中身には、考えるべき内容だけでなく、考える順序も含みます。
ここで紹介するのは“私が撮影時に考えている内容”であって、普遍的なものではありません。そのため、紹介する中身が目指しているのは、私の撮影目的である「被写体を見たときに感じたものを、写真として再現する」です。それを実現するための内容だと、あらかじめ理解しておいてください。とはいえ、いろいろな写真を目指している人に役立つと思います。
ここで解説する以下の内容は、あくまで概略です。より詳しい内容は、本コーナーの別なページを参照してください。
撮影で考える点としては、露出、ピント、レンズ(焦点距離)、フレーミングなどを挙げるでしょう。しかし、こうした項目は、考えた結果として出てくる内容であって、もっとも大事な点ではありません。
より重要なのは、表現に近い要素です。一番大事なのが表現意図で、これには主役と表現方向(主役の状態)が含まれます。他に、表現意図を支える要素として、脇役、背景、構図が挙げられます。また、表現意図どおりの写真に仕上げるための細かな技も必要です。これらを整理したものが、次の一覧です。
・表現意図
・主役:表現の中心となる被写体
・表現方向:主役の状態(美しい、面白いなど)
・主役以外の要素
・脇役:写真に写る、主役と背景以外の要素
・背景:写真の雰囲気を作る、後ろ側の景色
・構図:写真の全体的な(大まかな)形
・細かな表現の技:表現意図を実現するための技
表現意図に含まれるのは、主役(何の)と表現方向(どのような状態)です。つまり「何のどのような状態」を表現するのか考えます。他の要素として、脇役と背景も考慮し、最後に構図を決めます。細かな表現の技は、主役から構図までの全要素に対して使います。
この一覧を見て、前景が含まれてないと思った人もいるでしょう。前景は、脇役の1つとして扱うか、背景の一部として使われるためです。表現を中心に考えた場合、前景に独立した特性があることは“まれ”だからです。そのため、独立した要素としては含めませんでした。
写真の主な要素に関して上手に考えるためには、ある程度の流れが必要です。とくに、考える撮影に慣れてないうちは、お勧めの流れを提示された方が、上手に考えられます。私がお勧めする流れは、以下のとおりです。
・被写体を発見する
↓ └────────┐
・表現意図を考える………(表現の技を考える)
↓ ↓
・脇役と背景を考える……(表現の技を考える)
↓ ↓
・構図を考える……………(表現の技を考える)
↓ ↓
・考えた内容を整理する ←───┘
↓
・整理した内容で撮影する
出発点となるのは、被写体の発見です。この発見とは、撮影者が何かを見付けて、被写体になりそうだと感じたことです。次に、その被写体を観察しながら、表現意図である主役と表現方向を明らかにします。続けて、脇役と背景を考えます。それらが明らかになったら、最適な構図を求めます。最後に、考えた内容を整理し、最適な組合せを選んでから、シャッターを押して撮影します。
表現で用いる技は、これらの流れと並行して検討します。表現意図から構図までを考えている間、それぞれに使える技を選んでいきます。すべての技を一緒に使えるとは限りません。大切なのは、表現意図を一番良い形で実現することです。表現意図に最適な技を選択するのも、考えた内容を整理する作業で行います。
以上の流れは、考えながら撮影することに慣れてない人のために用意したものです。考えて撮影するのに慣れてくれば、この流れに従う必要はありません。というより、慣れてくれば、流れを意識しなくてもできるようになります。被写体の特徴に合わせて、脇役や背景よりも構図を最初に考えたりとか。
ただし、絶対に守るべき点があります。表現意図の明確化です。これだけは、できるだけ早目に済ませないと、考えがなかなかまとまりません。また、不明確なまま撮影すると、意図が伝わりにく写真になりがちです。この点だけは、強く意識してください。
私の場合、1枚の写真を撮影するのに考える時間は、簡単に決まるときは1分か2分で終わります。長いときは、全体で5分以上考えています。しかし、10分もかけて良い結果が得られることはまれなので、途中であきらめることが多いです。感覚的には、5分ぐらいであきらめていると思います。たまに10分ぐらい考えていることもありますが、ごく一部の例外です。
撮影時に考える内容を理解するためには、紹介した流れがかなり重要です。もっと詳しい説明を読むとき、この流れを常に意識しましょう。それが、撮影時に考える内容の理解に役立つはずです。