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E-1のJPEG画像とRAW現像画像の違い

3つのJPEG画像で特徴を比較

 E-1で撮影してJPEG画像を得るには、最初からJPEG保存で撮影する方法と、RAW保存で撮影してから現像する方法があります。また、RAW現像するソフトとして、E-1に付属するOLYMPUS Viewer、別売オプションのOLYMPUS Studio、Photoshop CSに付属するRAW現像プラグインがあります。

 RAW現像ソフトで私が使っているのは、OLYMPUS ViewerとPhotoshop CSの2つです。この2つと、E-1が撮影時に生成するJPEG画像を加え、それぞれの特徴を比べてみました。

 画像として比べるのは、主に解像感(どれだけ細部まで再現できているか)、色合い(彩度や色の深みなど、写真としての色の良さ)です。他にも、何か特徴が見付かれば取り上げます。

 正しく比較するためには、撮影条件などを同じに揃える必要があります。そのため、次のような方法を採用しました。撮影時には、SHQ(最高画質のJPEG)とRAWを同時に記録します。その後、OLYMPUS ViewerとPhotoshop CSを使い、RAWファイルを現像してJPEG画像を生成します。現像時のパラメーターは、撮影時とできる限り同じにします。ホワイトバランスなどを自動で撮影すると現像時に併せにくいため、手動で日中(値は5300)に設定しました。こうして得られた3つのJPEGファイル(撮影時のSHQ、OLYMPUS Viewerで現像、Photoshop CSで現像)を比べることで、各画像の特徴が明らかになります。

 それぞれのバージョンも大切なので、明らかにしておきましょう。E-1本体のファームウェアは、この時点で最新の1.1です。OLYMPUS Viewerも最新の1.1で、Mac OS X対応版です。

 もう1つのPhotoshop CSに付属していたRAW現像プラグインは、E-1のRAWファイルを開けますが、正式にはE-1をサポートしていません。しかし、新しいプラグイン(バージョン2.1)が登場し、E-1を正式にサポートしました。ここでは、この新バージョンを用いています。PhotoshopもMac OS X版(バージョンは8.0.1)です。

解像感は、Photoshop CSによる現像が明らかに良い

 E-1で撮影した画像に関して、解像感がイマイチという評価をよく目にします。これは本当なのでしょうか。もし本当だとしたら、何が原因なのでしょうか。CCDが劣っているのでしょうか。RAWデータからフルカラー画像を生成するアルゴリズムが悪いのでしょうか。ここら辺のことを、明らかにしましょう。

 今までのE-1の撮影経験から、解像感のイマイチさが表れやすい条件は分かっています。それが出やすい被写体として、冬の枯れた木を選びました。細かな枝の部分で特徴が出やすいため、細かな枝の多い木を選んであります。写真全体としては、こんな感じになります。

 比べる箇所は、細かな枝ならどこでも構わないのですが、写真右下の部分を選んでみました。ピクセル等倍でトリミングしたものと、その2倍の拡大表示は、次のとおりです。

E-1のSHQ
OLYMPUS Viewer
Photoshop CS

 これらを比べると、2つの違いが明らかになります。1つ目の違いは、枝の部分のギザギザ感(段々になっている感じ)です。Photoshop CSにはギザギザが見えませんが、E-1のSHQとOLYMPUS Viewerはギザギザ感が確認できます。この2つでも、ギザギザの出方が同じではありません。この画像を見る限り、E-1のSHQの方が、OLYMPUS Viewerよりもギザギザ感が小さくなってます。しかし、もっと別な画像でも調べたところ、E-1のSHQの方がギザギザ感が大きく出る被写体もあります。おそらく平均すると同じくらいでしょう(以上はISO 100での特徴で、ISO 800以上の高感度で使用すると、OLYMPUS Viewerの方が、ギザギザ感というのでなく解像感が優れて見えます。ISO 800以上はほとんど使わないので、あまり詳しく調べてませんが)。

 もう1つの違いは、生成する画像の範囲です。同じピクセル数の写真なのに、Photoshop CSだけが異なる範囲が写っています。縦方向で7ピクセル、横方向で8ピクセルずれていました。もとのRAWファイルは同じなので、RAWからの画像生成の処理が違うだけなのですが。ということは、RAWファイルには両者の画像範囲を含んだデータ、つまり2560×1920ピクセル以上の画像範囲のデータが入っていることになります。

 1つだけ言えることは、E-1のRAWファイルからでも、ギザギザ感のないJPEG画像が生成可能だという点です。つまり、E-1のJPEGファイルの解像感の低さは、RAW形式からフルカラー画像を生成するアルゴリズムに原因があるわけです。それを変更すれば、CCDが本来持っている解像感を得られるでしょう。

 一般的に、解像感の低い画質には2種類あります。今回のようにギザギザ感を含んだ画質と、全体的にぼやけた画質です。両者がどの程度なのかは、カメラの機種ごとに異なります。高額な機種ほど良い画質だと思いがちですが、実際には金額と関係ないようです。様々な機種のサンプル画像を調べたことがあり、ボディのみで数十万円するデジタル一眼レフでも、E-1より明らかに悪いギザギザ感を確認できています。それも、複数の機種でです(しかも、銀塩カメラで超有名なメーカーの高額機種も含まれます)。

 こうした解像感ですが、気になるかどうかは被写体によって異なります。実際には、気にならない被写体の方が多いので、それほど大きな問題にならないのでしょう。また、一部の人しか気にしないのも、問題が大きくならない原因の1つでしょう。気になる人は、購入前にサンプル画像で確認した方が安全です。

生成する色は、オリンパス側がリバーサルの印象

 続いて、生成する色を比べてみました。特別な設定をしない状態で生成された色です。E-1本体の彩度はCS2という中間値で、 OLYMPUS Viewerも同じ条件で現像しました。Photoshop CSの現像では、「初期設定(機種別)」を選びました。ホワイトバランスが「撮影時の設定」で、色温度が「4800」となっているのが気になります。E-1の撮影時は、晴天に相当する「5300」だからです。しかし、Photoshop CSの現像時の設定を「5300」に変更すると、さらに色合いが違ってきます。そのため、初期設定である「4800」のまま現像しました。

 全体の雰囲気を比らべられるように、そのまま縮小してあります。色空間はどれもsRGBで、ICCプロファイルを付けて保存しました。

E-1のSHQ
OLYMPUS Viewer
Photoshop CS

 E-1のSHQとOLYMPUS Viewerは、ほぼ同じ色合いです。Photoshop CSだけが違っていて、色に深みがない印象です。枝の色が薄く、少し眠い感じの写真になってます。単純に表現するなら、Photoshop CSがネガカラーで、残りの2つがリバーサルカラーでしょうか。こうした傾向は、この1点の写真だけではありません。どのカットでも、似たような傾向に仕上がります。自分の好みとしては、リバーサルカラーの方が好きです。

 ただし、レタッチを前提とするなら、Photoshop CSの方が適しています。色が飽和しにくいからです。実際、Photoshop CSのRAW現像プラグインは、それを目指していて、カメラごとの個性を消す形でデフォルト設定を用意しているようです。

 だとしても、リバーサルカラーの色合いで困るケースは少ないでしょう。もしレタッチで困ったときは、RAWファイルから生成する条件を変え、レタッチしやすい画像を生成し直せばよいわけですから。

 なお、Photoshop CSのRAW現像プラグインには、数多くのオプション設定があります。それを使うと、彩度を含む色合いを好みに調整できます。さらには、露出のミスをある程度まで補正できたり、ダイナミックレンジをめいっぱい使うようにレベル補正したりできます。これらの処理を、JPEGで保存する前に行うので、各色256階調を有効に使えるわけです。

理想は、Photoshop CSの解像感とE-1の色合いの合体

 ここまで比較してみて、理想となるJPEG画像の生成条件が見えてきました。解像感に関しては、Photoshop CSの現像結果と同じレベルまで向上させ、色合いに関しては今と同じにする。それが最良の条件ではないでしょうか。

 この条件を満たしたJPEG画像が生成できると、露出ミスといった特別な場合を除き、SHQのJPEG画像で間に合うことになります。間に合わないときだけ、RAWファイルを利用すればいいのです。

 当然、RAWファイルを使わず、JPEGだけで撮影している人にとっては、もっとメリットがあるでしょう。現状の解像感のイマイチさが改善できれば、500万画素で十分な状況がかなり広がります。もちろん、生成されたJPEG画像の印象も少し変わり、本当にシャープな写真が得られます。アンシャープマスクで輪郭を強調した、ニセ物のシャープさとは異なる、本当のシャープな画像が。

 このような改善が、ファームウェアの変更で可能なら、ぜひとも実現してほしいです。それが不可能な場合でも、OLYMPUS Viewerの生成処理を変更し、解像感の高いアルゴリズムを採用すれば、色が良くて解像感の高いJPEG画像を、誰もが得られるようになります。最低でも、OLYMPUS Viewerの改善は期待したいところです。

それぞれの特徴を知って利用しよう

 以上のように、E-1撮影時のSHQ、OLYMPUS ViewerのRAW現像、Photoshop CSのRAW現像プラグインの3つで、生成されるJPEG画像の特徴を調べてみました。主な特徴と違いが、明らかになったと思います。

 すべての面で最高というものがない状況なので、それぞれの特徴を知って使い分けるのが現実的な方法でしょう。たとえば、次のような使い方が考えられます。

 撮影時には、SHQ-JPEGとRAWで同時保存し、通常はSHQ-JPEGを使います。その画質で解像感が低いと感じたときには、Photoshop CSでRAW現像し、解像感の高いJPEGファイルを生成します。色合いが劣るので、彩度などの細かな設定も必要でしょう。また、露出が失敗したときなども、RAWファイルからJPEGを生成します。解像感の高さが必要でないなら、OLYMPUS ViewerのRAW現像を用いて、リバーサルカラーっぽい色合いを生成します。もちろん、露出のミスを改善できるように、露出補正を加えて。Photoshop CSでRAW現像でも、設定は面倒ですが、似たような色合いが作れるでしょう。

 特徴が改善されるまでは、こんな感じで使うしかないと思います。RAWファイルさえ保存してあれば、たいていの状況に対応できます。ただし、RAWファイルであっても、露出オーバーへの耐性は低いので、露出だけは慎重に決めましょう。露出に自信がない被写体のときは、オートブラケットを利用する手もあります。

おまけ:Photoshop CSでのラーメンノイズは解消したみたい

 Photoshop CSに付属するRAW現像プラグインは、彩度の高い箇所で変な模様のノイズが生成されます。ラーメンのどんぶりで有名な模様と同じなので、ラーメンノイズと呼ぶ人が多いようです。

 新バージョンのRAW現像プラグインでは、これが解消されているようです。以前にラーメンノイズが発生した条件で現像してみたところ、ラーメンノイズは発生しませんでした。完全に解消したかどうかは不明ですが、明らかに良くなっていることだけは確かです。今のところ、まだラーメンノイズには遭遇していません。おそらく大丈夫でしょう。

 これが解消されたことで、RAW現像プラグインを安心して使えるようになりました。いやぁ、本当に良かったです。

(作成:2004年2月21日)
(更新:2004年5月10日:JPEG画像のギザギザ感を補足)
(更新:2004年9月9日:RAW現像の画像範囲の間違いを修正)
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